〈アルシア〉SS 放課後教室より

ばりぃいいいいん!!!!!!!!!!

「きゃぁあああああ「すずぅ!!!!」んむッッッッッッ?!??!?!?!?!?!?!?!?!」
耳をつんざくような爆音に耳をつんざくような悲鳴で応えていると、瞬間に誰か……まあ敢えて言葉にはしないけど。それに覆い被さられ、机に突っ伏す。

…………それから五秒。やっと退いてくれたお兄ちゃんを分けもわからず見上げる。
すれば、「大丈夫っ?」と心配そうな表情を浮かべる彼の前髪に、きら、と光る何か。
「だ、大丈夫だけど……ねえお兄ちゃん、頭に何か付いてる」
「んえ、どこどこ……」
「これ」
屈んだ彼の包帯にくっついていたそれを、ひょい、とつまみとった。指の先が少しちくちくする……これ、ガラスの破片?
「なんでこんなところにガラスの破片なんて……」
まじまじと見つめながら呟いた私を見るなり、顔を真っ青にしてそれを取り返すお兄ちゃん。
「言ってくれたらお兄ちゃん自分で取ったのに!」
「いや、そんなに大袈裟にしなくたって……」
「めっ!すず、ガラスの破片なんて触ったらお手手怪我するよ?!こんなことだけでお絵かきできなくなっちゃ嫌でしょ?だから、こういうのはお兄ちゃんが……」
「っわ、わかった!わかったから……それより、なんでこんなところに破片なんてつけてくるのよお兄ちゃん!」
一気にまくしたててくる兄を体ごと両手で押し返し、話題を無理矢理転換する。が、彼は何故か話がぴんと来ないようで首を傾げている。
「?なんでって、なんで?すず」
「え?……え、逆になんでよ」
「だって、すずも見てたよ?なんなら叫んでたし……ほら、ここのガラス」
ぴっ、と萌え袖で隠れた人差し指が窓際を指すので、それに釣られて視線をやる。
……なんか、今日はやけに窓の外がクリアに……。
いや、違う。直に見てるだけだこれ。
「……こ、ここのガラスが割れてる、ばりばりに…………」
「うん、ばりばりだね?」
「ばりばり……って、そうじゃないの!何?!何があってこうなるの?!そんなに治安悪かったっけここのエリア?!政府仕事してよ!!!」
「そうだねえ、お仕事してほしいねえ……」
のほほんとした調子であやすように答えるだけの兄にしびれを切らし、自ら窓の近くまで寄って、外を覗き込む。
めについたのは、何やら派手なピンク色の頭……確か、高等部の人だっけ?名前は知らないけど。
その人が、なんかあわあわしてて……あっ、あの黒髪の人に追い掛けられてる。あの人は覚えてる、いつも服装チェックで色んなところに走り回ってるから。
あんな真面目な人に追いかけられてるってことは……さては、あの人がここの窓を……?
「いや、でもあの中庭に居てどうやってここの窓を……」
「すずー、みてみて〜」
「もー、なあにお兄ちゃん!今考えごとして……」
言い切る前に差し出されたのは、服越しに両手に載せられた綺麗な野球ボール。破片が散らされていて、光が当たってきらきらしているのが少し綺麗だ。
お兄ちゃんは、相変わらず無邪気に笑っている。
「部屋の端っこに落ちてた〜!」
「はあ……?」
普通の教室に、ボール……?もしかしてこれが打ち込まれてガラスが、とか……。
……いや、でもここにそんな野球趣味の人なんて居たっけ「凶禍さん!!今月何度目ですか、反省文用の紙だって無限じゃないんですよ!!!!!!バットも没収です!!!!!!」「あーーんっ、ほんまに反省してますぅうううやからそれだけはぁああああ!!!!」
……。

「犯人あの人じゃんかッッッ!!!!!!!!」