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美的センスのない私が、一生に一度でも傑作を作りたくて美大卒の知人に頼ってみた話


あー、天才になりたい。



どうも、石川県のコピーライター、吉田です。
今年36歳になりました。

まったく同じ生年月日の有名人に厚切りジェイソンがいます。

IT企業の役員でありながらNHKで冠番組をいくつも持ち、最近じゃ投資の本もベストセラー。もはや同じ日に生まれたこと以外に何の共通点もございません。完敗。ああいう人を天才と呼ぶんですね。
私はテレビの前で彼の番組「Why!?プログラミング」を観ているだけ。もう人生の差がWhy、本業のコピーだって鳴かず飛ばずで今年も暑すぎるだけの夏が来る・・・



とまぁ人生を通じて無才能コンプレックスをこじらせている私ですが、今年は絵を描いてみようと思うんです。


だってほら、世間はブルーピリオドの影響で美術が大流行り。


私ももうちょっと美的才能があるってことアピールできれば、バッチバチにイケてるコピー書けなくたって合わせ技で仕事の幅も広がっちゃったり?ここらでいっちょ、傑作とか出してみちゃう?


・・・あー、でもなぁ。一人で描いても傑作とか出来なさそうなんだよなぁ。

姪に「パンダ描いて」って言われて描いたのがこれだし。


「泥棒みたい」って言われた。


こんな私が今すぐに傑作を生み出すには、人の力を借りなくちゃいけないと思うんですよ。
私の中に眠っているに違いない才能が36年も開花しなかったのは、周りからの刺激が少なかったからなんじゃないかなって。


ということで、最近知り合った武蔵野美術大学卒のデザイナーで、高校時代は油絵をやっていたというまなさん(東京在住)に連絡を取ってみました。


「まなさん、ちょっとパンダ描いてくれます?」


「??」


(5分後)

「こんな感じですか?」

「iPadでぱぱっと描いたんですけど」



!!!

「決まり!採用!」

「?????」

そんな感じで東京と石川、500km離れて「合作」をしてみることになりました。
善意で巻き込まれてくれたまなさんには感謝の言葉も見つからないくらいですが、とにかく東京と石川でキャンバスをリアルに往復させ、作品を完成させようという、そういう魂胆です。

美的センスのない私が、美大卒の知人を巻き込むことで一生に一度の傑作を生み出すことはできるのか?


「ちなみにまなさん、キャンバスってのには何を使って描くんですか?うち、子どもの水彩絵の具くらいしかないんですけど」

「あ、大体の水彩絵の具では描けません。絵の具ならアクリルがいいと思いますってそんな初歩的なことから!?」

「アクリル買います!」

以下は、

先攻・まなさん

後攻・吉田

で絵が出来上がっていく様子を日記的にお伝えします!


2022年6月21日

早速まなさんからキャンバス(※A3サイズ)が届いた!

ワクワクワクワクワク・・・



おおおおおおおお!なんかSUGEEEEEEE!

こことか!なんか絵の具盛り上がってる!
ゲイジュツテキ!!!!!

いやーやっぱ絵がうまい人って筆を動かした跡からして美しいわー。


ほな、早速私もアクリル絵の具とやらで描いてみよかー、
でも突然描いて失敗するとイヤだし画用紙に試し書き試し書き・・・


ゴシゴシゴシ・・・


あれ?



なんか、かすれるんだけど。






まなさんみたいに「筆の流れた跡」が全然出来ない。



えー・・・
どうしよう。

・・・・・・・

うん。絵の具は一旦ポイ。


ここで私は決めたのです。

できるだけやり直しが効く画材を使おうと。

絵の具みたいに一発勝負のものは避けようと。


ってことで、やり直しが効きそうなやつ、
なんかないかなー


(とあるブツを床からつまみ上げる)


あ、これとか良くない?


ゴニョゴニョゴニョ

ペタペタペタ

ジャーン!どや!


この恐竜はフエラムネのおまけ

山の部分は百均の小麦粘土

下部に金箔を貼り付けてゴージャス仕様にしてみたよー!


※ちなみに石川は割と金箔の手に入りやすい環境にあって、
この金箔は「金箔入りインスタントコーヒー」から採取しました。


うん、なんか可愛い気がする!えへへ!「ジュラ紀の朝焼け」って感じ?


でも、ちょっと欲を出して山の下に緑で塗ったところ、、、

ここはやっぱ汚いわー

山の下が汚い


どうしよう・・・でもまだ序盤だし?

この先どうなるかわからんし?

一旦東京にお返ししまーす!

2022年6月26日


来た!

まなさんからキャンバスが戻ってきた!
(つーかヤマト運輸はやっ!!!!!)


あれからどうなったんだろう。

ドッキドキーのドンキッキ・・・

おおおおお!

夜が!

夜ができてる!


これは面白くなってきたぞ!
朝と夜が一緒にある世界!


いや待てよ、

・・・海。

これは海かもしれないじゃないか。

わからん。どうとでも解釈できる。


これが・・・これがゲージツか・・・


さて。


ここにどう手を加えるか。

しかし、その前に、ここ。


やっぱここ、汚くて気になるんだよね・・・


うん。今回はここをカバーする作業に決めた。

また何か貼っちゃえ。



(30分後)



うっし!
何とかカバーできたかな?

これはその辺の包装紙を丸く切って貼って〜

ちょっと見えにくいけど海鳥なんかも描きこんでみた。

今回は題して「花々に押し出される旅立ち」

この恐竜サンはどこに行くんだろうな〜♪


ま、どこ行くかわかんないけど一回東京に行ってもらお!

まなさんにお返ししまーす!


2022年6月29日


この日は事前にまなさんから連絡がありました。


「私今回けっこう絵を進めちゃいまして、だいぶ完成してきた気がします。
 たぶん、今回の郵送で吉田さんが描くのは最後の回かと。
 ということで、思う存分描いてくださいね!」


最後・・・やおら緊張するワタクシ。


そして来た。
最後のキャンバス。


いつも、開封の瞬間にものすごくドキドキするんですよね。

相手は絵を見て、どんなことを考えたんだろう。
どんなふうに時間をかけて、手を加えてくれたんだろう。

いざ、OPEN。。。んん?

ちょっと待って。

泣きそう。


まなさん、

ここまで付き合ってくれてるのに、
こんなプチ・サプライズまで。


しばらく包装を解けない私。


いや、でも、絵だ。

絵を完成させなければ。絵はどうなったんだ?

陸が!陸ができている!

そして海も!!!!

あ、木!スリー・ツリー!
六花亭のマステもイイネ!


美しい。

もうこれで完成じゃない?
下手に手を加えない方が・・・


・・・


いや、描こう。
だって送ってきてくれたんだもん。

何をするか。
このとき私の頭の中にあったのは2つのこと。

①左側(夜側)にビーズ等を貼り付け、星を増やす

②さらに、貼り付けた星々の間をゴッホの「星月夜」のようにアクリル絵の具でうねりをつけていく


うん。夜空といえばゴッホやしな。


決めたら即取り掛かる。首尾よく①ビーズを貼り付け、②青黒い絵の具をモリモリっと、ウネウネっと・・・

うねらない。
何これ。シミ・・・?

やっべ
せっかくの青い土台の美しさを損なった気がする。

うーん、、、
やっちまったのはわかるのに自分でリカバリーができない。

考えろ。考えるんだ。
腐っても厚切りジェイソンと同じ誕生日だろ?
ちょっとくらい思考力とかが似てて・・・くれよ・・・
神様・・・!


はっ!


そうだ、これもしかして、メイクと同じだ!

鼻にコンプレックスがあるなら目元を強調し、
目にコンプレックスがあるなら口元を強調する。
見て欲しくない箇所があるなら、
別の場所に視線を集めるんだ!!!

じゃ、今手を加えるべきは、右側の「ピンクのゾーン」。
もう失敗は許されない。


そして私は財布を掴み、炎天下をスーパーまで駆けた。
駆けた。駆けた。駆けた・・・・・・



「まなさん。描けました。返送します、


 二人の作品の仕上げを、お願いします」。


2022年7月2日 zoomにて


ーーあ、まなさん!

「あ〜吉田さん!こんにちは!
 絵、仕上げましたよ!ほら、仲間が増えました!

ーーおおお!?恐竜が増えてる!

「はい、緑の子だけだと最後に一匹取り残された恐竜って感じがしたので。木に赤い実をつけたから恐竜の食べ物も出来ましたよ♪」

ーーすごー。やっぱ絵うまいっすね・・・。恐竜の足跡まである。

「それから絵の周囲をぐるっと梱包材のプチプチで包みました。東京と石川を往復した梱包材です。これも、今回のアートを象徴するものだなと思ったから


ーーなるほど!使い回したプチプチが立役者とも言えますもんね。

「最後に、吉田さんが絵の裏に新聞記事貼ってたじゃないですか」

ーーああ、はい。

説明します。
私が最後に返送する際に貼ったのは、2022年6月7日の日経新聞の記事、「はやぶさ2  砂に生命の源」です。JAXAの探査機であるはやぶさ2が、小惑星「りゅうぐう」から持ち帰った砂に、生命の源となるたんぱく質の材料のアミノ酸が含まれていたことがわかったというニュース。
私たちの絵もまた「恐竜」「天体」「鳥」が登場しており、なんとなくリンクするなぁと思って裏側に貼り付けたのでした。(※まなさんには一切の説明をせず)

裏に貼るっていう発想があまりないので、いいなと思ったんですね。で、画面越しだと見えにくいかもしれませんが、この周辺に生命の砂をイメージして金色のマニキュアをつけてみました。私が最後にやったことは大体以上です!」

ーーひゃー、面白い!ありがとうございます。おかげさまで想像を超える傑作が生まれたと思います。あのー、ちょっと聞くのが怖いんですが、この制作過程、まなさんは正直どう思っていました?私はめちゃくちゃ楽しかったんですけど、まなさんからしたら自分より圧倒的に絵が下手な人と組んでいるわけで・・・。

「いや、私もすごく楽しかったです。久しぶりに純粋に楽しいと思いながら作りました

ーーなんか救われる・・・!

「もちろん、好きなことだから仕事にしたし、基本的にはいつも楽しんできたんですよ。ただ、美大の時は締め切りに追われて徹夜が多かったり、美術予備校時代もデッサンとか成績順に貼り出されちゃったり。上手い人が上段、下手な人は下段って感じで。そういうの見て、落ち込みながら家帰ったりして・・・」

ーーあ〜、それはキツい日もありそう。そうか、ということは作るものがずっと「他人の評価の対象」だったんですね。何年も何年も。

「そうなんです。評価から離れて好きなように作れたのが本当に久しぶり。あとは人と組むと予想外のことが起きて面白いなっていうのも感じました。今回だと、吉田さんが恐竜を貼り付けてきたことで絵の世界観が決まった気がしています」

ーーあれ本当にたまたま家に転がっていただけでしたけど、確かに決め手になりましたね。

キミ、いい仕事したぞ!

「吉田さんが異素材をどんどん貼り付けてくるから、私も後半、マニキュア使ったり梱包材貼り付けたり、普段しないようなことし始めました

ーーあはは、まなさんにも影響があったのがちょっと嬉しい(笑)。私はまなさんとの合作で、才能が開花したかはさておき、1枚の絵にお互いが表現し合う行為自体に癒しというか、幸せ感みたいなものがあったんですね。コミュニケーションに実感が伴っているというか?私たちがやったことをもっとライトな形にして、学校とかいろんな場でやってみても、人との交流や表現の方法がより豊かになるんじゃないかな、なんて思いました。

「なるほど、そういう広がりもありそうですね。そういう時は特にですが、”自分は下手だから描かないでおこう”なんて、誰も思う必要ないと思うんです。下手じゃないんです、それは全部個性だと私は思っています。その人のやり方でやれば、それはれっきとしたアートです

ーー・・・(泣)

「誰かと作れば”作るのって楽しい”って思ったりすること、きっと誰にでもあるんだろうなと思います。他人がいることで物事の面白さを見つけていく。

これは、二人でやる自由研究でしたね

ーー本当にありがとうございました。この絵が大好きです。


ということで、この記事のタイトルは、「美的センスのない私が、一生に一度でも傑作を作りたくて美大卒の知人に頼ってみた話」でしたけど、改めますね。
この話は、


美的センスのない私が、

一生に一度でも傑作を作りたくて

美大を卒業した

素晴らしい友人を頼ってみたら

たくさんの気づきを得た話


でした。

*傑作にかかった費用*

キャンバス 300円
郵送費(東京ー石川3往復)  5970円
アクリル絵の具 1340円
ビーズ 330円
れんこん 378円
合計 8318円

(意外と高かった笑)

絵のタイトルには、
この二週間、私たちが一番よく使った言葉をつけました。

「届いたよ」



☆まなさん側の物語はこちら☆


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