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アートとコピー、この得難い体験について。

アートとコピー、半年以上にわたった受講が終わった。この記事では、私自身(コピー生枠で参加)が何を得られたか&何に苦労したかを挙げていこうと思う。次年度の受講を迷う方の参考になれば嬉しい。

先に、私が何者かというと(今更ではあるが)

・コピーライターと名乗ってはいるが、仕事の7割は「長文執筆」。残り3割がコピーとコンテンツ企画、場合によってはディレクション。
・広告より広報・ブランディング領域。(むしろ広告は素人)
・代理店や制作会社に勤務した経験のない、「突然のフリーランス」。素人が子育てしながら文章を書き始めたら、お客さんがついてそのまま仕事になったケース。
・子持ちである。主婦である。自由な時間はほぼない。掃除が苦手。

こんな感じで大体ご理解いただけだろうか。
ではいこう。

まずは「得たもの」。

①言葉と絵を最初から同時に考えるようになった
最も大きい変化はこれ。一つ一つに全体を包み込む「企画」を考えるようになったと言ってもいい。それは受講生の中に圧倒的に「企画」がうまい人が数人混ざっていて、いつも自分がその人たちの作るものを「面白い!」と思っていたからという影響もあると思う。まずは戦略を持って大枠として何をどうするか、を決めた上で細かいところを作っていく。決してまだ上手くはできないが、制作のプロセスとしてその順番が身についたのは大きかった。ただ、受講生の中には「そんなもん最初からわかっとるわい」という人も明らかにいた。私よりずっと先をいく彼らを眩しく見ていた半年間だった。(逆に彼らは講座で何を身に付けたんだろう、最初からだいぶ「できて」いるのに・・・!感動メモには書いてないこともいっぱいあるだろうから、いつか直接聞いてみたい)なお、最近はやりすぎると言葉そのものを磨くことを怠りそうだと思ったので、意識的に「この言葉だけでも心は動くか?」も考えるようにしている。

②ビジュアルに関するさまざまなトーンを知れた
言葉に関しては、私は4〜5つのトンマナを意識的に操っていて、媒体やクライアントに合わせて調整している。私が自分で扱えなくても、世の中にはああいう文体もあるよね、という知識もある。その感じを、ビジュアルに対してもちょっと習得できたというか、たくさんのアート生の多彩なアウトプットを見ながら「なるほど、ビジュアルにもこれだけのトーン展開があるのだな」ということを多少細かく知れた気がする。今までがあまりにも大雑把すぎたというのもあるが・・・。

③磨けば良くなるということが体感的にわかった
一人でやっていると、大体良くなってきたところで手を止めてしまう。でも相手がいて、しかも相手にやる気があると、「もっと良くなる!」と言ってくれるし、「ここは分かりづらい!」とも言ってくれる。それを言い合いながら進めていくと、提出前日にもまだまだ作品は良くなった。

④アイデアが出るようになった
これはすごく嬉しい変化。「企画を考える」という脳のシナプスが新たに1つつながったのと、同じ課題に対してたくさんのバリエーションのアウトプットを見続けたという2点が影響していると思う。自分では、もう思いつかない!答えはコレしかないだろ!と思っても、受講当日に並んだ作品たちを見ると「うおー、こんな解もあったのか!」と驚く。ものすごく楽しい経験である。そして地団駄を踏みたくなる経験である。みんなに揉まれて、こねくり回されて、ちょっと頭が柔らかくなった。

⑤志の高い仲間ができた
これは、「コンビを組む」がベースにある「アートとコピー」じゃないと、なかなか叶わないことなんじゃないだろうか。出会うだけじゃダメで、一度講座の中でぶつかり合ってみることで初めてその後も続く絆になるというか。本当に、人と関わるのって本当に楽しいなと毎回思っていた。引き続き広告賞その他にも挑戦しており、「続いていく」という感覚の中を今も生きている。


では逆に、苦労したこと。

①打ち合わせの時間
子供がいると休日は制作にも打ち合わせにも使えない。フリーランスであることを活用して、平日の昼間に打ち合わせを入れたこともあるが、相手もフリーランスでないとやはりそれもちょっと厳しい。基本、打ち合わせは深夜だった。そして打ち合わせが終わるとすぐに何か作りたくなるのが人間のサガで(頭が活性化しているから)、そのまま午前3時まで手を動かしてしまうということもザラだった。この半年、本当に寝てない。車で事故ったりしなくて良かった。

②自分がダメすぎて、相手に対して負い目を感じてしまう
本当に何も知らないんだな自分は、と思った。この講座、決して一枚絵の広告をつくりなさいという課題ばかりではなく、長文派の自分の強みが生きる場面もあったものの、基本的には「一瞬で伝える、伝わる」ということをとても大事にしている課題が多い。そこに対してあまり向き合ってこなかった私の実力の低さに、ペアの相手を巻き込んじゃっている感じもあって、ぐぬぬ、ぐぬぬと思っていた。最後には多少改善されたと信じたい。

③コピー生の役目って・・・
アート生は、どうしても、具体的に手を動かして最終成果物を作る役目になることが多い。その一方でコピー生は言葉だけかよ!みたいなところもあり(もちろん、考えるのはアート生もコピー生も一緒に考えるのだけれど、作業負担というところで・・・)、そこもいつも、ぐぬぬ、ぐぬぬと思っていた。できる限りはスライド制作などもたくさんやってきたが、やはり、コピー生は「良い(鋭い・面白い)企画を出せてナンボ」みたいなところ、あるんじゃないかなと思った。。。

④オンライン受講のもどかしさ
オンラインでも受講できるだけいい、といえばいいのだけれど、やはり「仲良くなるスピード」とか、組んでいない人ともご縁ができるかどうかという点では、圧倒的に不利だったと思う。次年度も、現地に行ける人は行ったほうが絶対いいよ、とは書いておこう。(まぁでも私みたいに幼児の育児責任を100%自分サイドが負っていたり、介護してるような立場の人は、東京にいたところで飲み会には出られずにとんぼ返りするしかないかも。人生で何が起きるかのタイミングって、コントロールできないから、仕方ない。ただあくまでも個人的な考えだが、広告のために自分の100%注ぎ込めます!という人だけではなく、そうもいかない現実の中で必死に生み出そうとしている人が何割かいる方が、場が豊かになると思う。いろんな人がいろんな形で平等に参加できることが素晴らしいことだと思う。)


こんなもんだろうか。

最後に、私が特にこの講座に感謝したいことを書いておく。

①OVER35でも受け入れてくれてありがとう
世の中にある講座は、若い人むけにつくられていることが多い。若い人にチャンスがいっぱいあるのはいいことだ。でも私みたいに、30歳ごろからこの仕事をなんとなく始めました〜とか、あるいは他の仕事やっているうちに言葉やデザインに興味を持ち始めました〜という人も、世の中には結構いるんじゃないだろうか。そういう人のために開かれている門戸は、実に少ない。年齢制限に引っかかるたびに、ぐっと奥歯を噛みたくなる気持ちがあった。だから、まずは、志だけで受け入れてくれてありがとうございましたと、真摯にお伝えしたい。

②講座としての基準を最初から最後まで一貫してくれてありがとう
これは私の過去の苦い経験がベースにあるのだが、「評価基準は人それぞれだよねー」ということで誤魔化されて、結局何かを教わった感なく終了してしまった講座もあったりして。。。もちろんこの講座でも、「自分の選ぶ目を磨く(そうしないと一生誰かの庇護のもとだから)」というのは一つの大きなテーマとしてあったものの、それと並行して、講師として「これが良いと思う理由、これでは伝わらないと思う理由」というのも毎回明確に言語化してくれていた。やはり私は、「自分は広告素人である。故に、モノの見方も含めて、一度、教えてほしい」という気持ちがどうしてもあるので、こんなこと言ったら頼りないかもしれないけれど、「なるほど、プロはそこを見るのね」というのを知れたのはとても良かった。実はそれは、この仕事で一度も上司も先輩も持ったことのない自分の、切なる願いでもあった。そして何より、重要な基準に関しては、「最初から最後まで」一貫して伝え続けてくれていたのもありがたいポイントだった。結果、「私は野球をしていたつもりだが、みんなはラグビーをしていた。唖然!」みたいなことが起きず、「野球をして、負けた。悔しい」みたいな気持ちで終わることができた。

③素敵な人たちと組ませてくれてありがとう
この講座、途中で「誰と組みたいですか」とアンケートを取ってくれる。3人記入し、私はそのうちの2人と組むことができた。(組めなかった一人は布野さんである。ぜひまたいつか!) 正直、思わぬ相手でも組んでみたらベストパートナー!みたいになることもあって、その偶然性に全てを委ねてもいいんじゃないかな?と思う面もあったけれど、やはり組んでみたい・しゃべってみたい相手と組めた時にはすごくテンションが上がった。さまざまな面で、受講生の気持ちを配慮してくれているつくりだった。

ここまで読んでくださってありがとうございました。
で、最後にちゃぶ台を返しますが、今後第三期を受ける人が、私が上記した学びを得られる保証は全くありません。なぜならこの講座、どんな受講生が集まるかで、学べることが完全に違ってくるやつだと思うんです。講師から一方的に「教え授ける」講座なら、同じプログラムで同じ学びはある程度保証されるけど、どちらかといえば主体は受講生。いいも悪いも自分たち次第だし、誰が集まるかも、運。

でも、全力対して全力で応えてくれる準備のある講座だと思う。
だから全力でオススメしたい。

そして、偶然にして集められ、もう二度と集まることのない、私以外の41人に最大の感謝を込めてこの記事を終わります。ありがとうございました。


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