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イロイロコハコ様

2019年度上期にお手伝いさせていただいた本件。結果的に「第41回BtoB広告賞コーポレートサイトの部 銀賞」というおまけまでついてきました。

老舗の箱屋さんである尾崎紙器様は、元々自社のwebサイトをお持ちではおられませんでした。オーダーメイドの箱づくり事業である「イロイロコハコ」を立ち上げるにあたり、初めてのサイトをご依頼いただけたということで、こちらも気を引き締めて臨みます。しかし、コハコ様のInstagramを見て、「う、美しい・・・」と呆然。webなどのツールを持っていなかったり、自社の理念を敢えて言語化して前面に出すようなコミュニケーションを今までとってこられなかっただけで、生み出す商品にはもうこの時点で誰が見てもわかるほどの明確な美意識、モノとしての個性(つまり非言語の要素ですね)を有しておられたし、その中に目指す未来も含まれていたんです。「私たちの箱は、シンプルで無骨」「箱はあくまでも中身を引き立てるもの」とおっしゃってはいましたが、紙と金具の調和しかり、色のセンスしかり、そして技術を持って丁寧に作られたものだけが纏える空気感しかり、「ちゃんと、ある」感がびんびんに伝わってきました。

尾崎社長からのヒアリングでは、創業の経緯、ターニングポイント、提供価値やビジョンに始まり、加賀という地域が菓子箱の全国有数の生産地であることや、箱業界の成り立ちまでとても丁寧に時間を割いて教えていただきました。自ら職人として現場に立ち、毎日遅くまでこだわりの箱を作り続けている社長様。自分の技を磨き続けるその背中と、その背中を(おそらくはいろんな心配も抱えながらも)黙って見守り、毎日笑顔で営業に出歩く奥様と。加賀という地域と、そこで育った美意識と。いろんなものをギュッと詰め込んで、「普通の言葉でいいから、とにかく誠実に、品位を持って」書き起こしていこうと思いました。そしてインナーのコミュニケーションにも役立つものにしようとも思っていました(従業員の皆様が、「自分たちって、なんで箱作ってるんだろう?」と思った時に、立ち返れるものを)。

最終的には、BtoC向け販売サイトのコピー「開ける前から、ドラマにしよう。」と、コーポレートサイトの「コンセプト」の中身一式を納品させていただきました。「開ける前から、ドラマにしよう。」は尾崎様の方で独自にショップカードなどにも展開してくださっていたようです。

(販売サイトはこちら)

サイト制作後、コハコ様の人気は爆発。全国にお客様が広がりました。いや、サイトの成果と言いたいわけではないです、コハコさんにはほっといても売れる要素がありました。商品もお人柄もこの上なく魅力的でしたから。

今でも社長の奥様とはSNSで交流を続けており、私は日々、コハコ様がどんなお客様にどんなお箱をご提供されたか、楽しみにしながら眺めています。そして時折、ありがたいことに、箱を買われたお客様たちが、私の書いたコピーを大切そうに呟いてくださったり、コンセプトを印刷して店内に掲載してくださっていたりするのを見かけます。そういう時、「あ、言葉が機能している。」と感動するんです。あの言葉に心が反応した人が、ちゃんとコハコ様のお客様になってる。引き寄せてる。

私にとっては「世の中で機能する言葉」をつくれたという手応えを、おそらく初めて得られた、記念すべき仕事でした。

尾崎さん。これ、もし読んでいたら。あの時は本当にありがとうございました。今でもあの仕事の時間を思い出すと、私ちょっと、泣きそうになります。


*まとめ*

私のしたこと:社長様ヒアリング、コンセプトの策定と書き起こし、通販サイトのキャッチコピー

上記以外の全て:谷川司さん

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