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美川冷菓様

昔懐かしの牛乳宅配屋さん。子供の頃、おばあちゃんの家の宅配牛乳をよく飲みました。ひんやりとした厚口の硝子ビンで飲む牛乳は、いつもより甘くておいしくて。紙の蓋を開ける専用のピックみたいな道具もありましたね。とこんなふうにすぐノスタルジーに浸っちゃう。つまり私にとってこの牛乳宅配という文化は基本「昔のもの」で「だんだん廃れつつある」という認識だったんです。

ご依頼を受けていろいろ調べ、初めて「牛乳配達は全然斜陽産業じゃない」ということを知るのでした。むしろV字回復中(その辺のことは、こちらの記事に詳しくありました)。ただ、配達内容は普通の牛乳から「健康に対する何らかの機能のついた乳製品」がメインになりつつあり、健康志向の昨今の風潮を受けて「配達してもらえるなら習慣化しやすい」と需要が増えているんだそうです。知らなかったなぁ。

そんな牛乳宅配業を美川の地で長年続けてきた徳田様ご一家は、今回初めて自社のwebを作りたいということでご依頼くださいました。webを作りたい理由は挙げればキリがないのですが、「子育て世代&子供たちの健康をもっともっと応援したい」という想いをお持ちで、そこにターゲットを絞ったメッセージ発信をしていくのが大きな狙いでした。

今回も制作の最初に根掘り葉掘りヒアリング。そもそもなぜ美川冷菓は子育て世代を応援したいのかが私の中で明確になるまで話を聞かねば、と、そこは特にしつこく踏み込んだ気がします。(美川冷菓にとってその世代の顧客層が元々手薄なわけではなかった。)創業者であるおじいさまが、戦争から戻ってきて、食糧難の時代に立ち上げたお店。そのおじいさまに深く愛されて育った幼少期。自らが親になって思うこと。幼稚園の配達の時のエピソード。いろいろなお話を聞く中で、”大人から幼い者へ、愛や庇護と共に命を受け渡していくことは生き物としての自然の営みなのかもしれないけれど、実際親になってそれをやってみるとその自然を維持するののなんとハードなことか。その大変でありながらも掛け値無しに素晴らしい営みを、なんとか助け合い、分かち合いながら、同じ社会を生きる皆で進めていきたい”というのが、徳田様が仕事を通じて願っていることなんだろうな、と、感じられました。言葉にすればあまりにも普遍的なことかもしれないけれど、実感がこもっていて、同時代を生きる者としてそこらへん深く共感するものがありました。

最終的には、「美川冷菓の提供しているもの=家族の伸びしろ」と定義し、それを軸にトップの文言や会社概要の「ご挨拶」などを書いていきました。漢字にしたら「伸び代」なんですけどね、牛乳が白いのとかけているのでここは敢えて「しろ」、平仮名に。トーンは牛乳屋さんらしく、丸みがあって、元気で明るい感じに。

悩んだポイントは、家族のいない人、子供のいない人をはじめ、誰が読んでも傷つくことのない文章に仕上げていくところでした。ターゲットを明確にしつつも、基本どんな人にも健康になって欲しいのは間違い無いので、ターゲット以外の人をあまりにも強烈に振り落とすものにはしたくなかった。牛乳ってそういう性質の商品じゃないですしね。そこについては「伸びしろ」という言葉の持つ力に懸けたというか、託したところもあります。徳田様にはとても気に入っていただけたみたいで、有難や、有難やです。

美川冷菓様、本当にありがとうございました。webから美川冷菓様の姿勢や想いが伝わっていき、いつか幼稚園やこども園と何らかの企画が持ち上がったり、市役所と子育て支援で共同で進めることが始まったり、なんていう未来を思い描きながら制作していました。いいご縁が結ばれることを祈っています。徳田様もどうかお身体を大切に、お仕事頑張ってくださいね。

*まとめ*

私のしたこと:ヒアリング、コンセプト策定、キャッチコピー、導入部ボディコピー、「ご挨拶」書き起こし、その他

それ以外のすべて:谷川司さん


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