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フィリピン出張から学んだIssueから考える大切さ

この記事では、2022年春に私がフィリピン出張で経験した学びを共有し、その経験から得た「施策を考えるときは常に課題(Issue)から考えるべき」という重要な考え方を伝えたいと思います。具体的な実例を交え、皆さんが実務においても同じ思考プロセスを活用できるように分かりやすく説明できればと思っています。

「Issueから考える」という姿勢は、ビジネスのどんな局面でも役立つものです。この記事を通じて、多くの方にこの考え方の大切さが伝わり、実際の業務でも実践できるようになればと願っています。


前提:なぜこの経験を2022年から2年後の今、言語化しようと思ったのか

まずは、言語化をしようと思った背景から説明できればと思います。

私が2年前に行ったフィリピン出張は、私の前職である海外留学をする際の語学学校を紹介する代理店営業をしていた会社での経験でした。その会社は「グローバル企業を目指す」というビジョンのもと、毎日9時から24時まで働く、非常にハードな猛烈なベンチャー企業です。フィリピン出張の目的は、会社内の代理店営業マンの契約率を向上させることであり、その目的が私に課せられていた状況でした。
今、私はその会社から退職をし現在はSaaS企業に転職をしています。

前職には、取締役やプロダクトオーナーといった役職の人は居なく、完全に社長がワンマンで経営をしていました。しかし、その中であっても「施策を考える際にはIssue(課題)から考える」「組織を成長させるMVVの大切さ」など、非常に重要な多くのことを学んでいました。
一方で、今のSaaS企業には、取締役・執行役員・プロダクトオーナーといった、専門的な知識を持つ方々が多く、今まで以上に多くのことを学べるはずだ!と思っていました。意外なことに、執行役員やプロダクトオーナーの方が出す施策であっても、施策を進める際に課題(Issue)から考える基礎的なアプローチが欠けていることがしばしば見受けられました。さらには、施策に対して効果をどのように測定し、PDCAをどのように回していくのかという問題意識が希薄だと感じる場面も多くありました。

私は施策を打つ時に、Issueから考える大切さやPDCAを回すために事前に準備をすることが非常に大切だと思っています。
その大切さを極めて強く思っている中、執行役員やプロダクトオーナーにその考えが欠けていそう?なことを知り、今になって思ったのです。2年前に私が24歳という若さでフィリピン出張を経験し、現地で1人で全てを企画し、実行するという状況に置かれたこと。そしてそこから学んだ、「Issueから考えること」「PDCAを回すことの重要性」「効果測定を正しく行わないと施策は絶対に成功しない」という知識は、非常に貴重で意味のある経験だったのだ、と。

この経験を今、言語化することによって、私自身がその大切な教訓を再び引き出せるようにしたい。そして、この記事を通じて、多くの方にその学びを共有し、成功へとつながる施策の実行に役立ててもらえたらと考えています。
長くなりますが、施策を成功させるための学びになると思っています。ぜひ読んでいただければと思っています。

出張当時に考えていたこと・実施したこと

ここでは、2年前に私がフィリピン出張に行く前後で考えていたことを振り返りながらお伝えします。

まず、私の考えを説明する前に、少しだけ留学エージェントというビジネスモデルについて触れておきます。

留学ビジネスの紹介

留学エージェントの事業(以下、留学エージェント)は、名前の通り、留学希望者に語学学校を紹介し、手数料を得るビジネスです。お客様が直接語学学校と契約することもありますが、留学エージェントを通すことで、英会話サービスや渡航前のサポートを受けられるため、多くの方がエージェントを利用して留学手続きを進めます。

このビジネスには、情報の「非対称性」という問題が存在します。つまり、エージェントや語学学校の担当者が持っている情報と、実際の留学先での体験や実情との間にギャップが生じやすいということです。特に、私が出張で訪れたフィリピンの語学学校では、現地の実情がなかなか把握できないため、留学生と語学学校の間での情報の非対称性が非常に強い特徴があります。これは、アカロフのレモン問題に例えることができます。中古車市場と同じで、購入者(留学生)は元の状態を詳しく知ることができず、販売者(語学学校)はその実情を把握している、というような状況です。

この背景から、前職の会社は、フィリピンの語学学校の現状を正確に把握するために、現地に出張して実際の調査を行うべきだと判断しました。私の任務は、その調査を行い、語学学校の実情を正確に把握し、営業活動に役立てることでした。

私が出張前に考えていたこと

上記のような前提がある中で、私は留学経験がありませんでした。留学エージェントで働く多くの人は、留学の経験談を基に営業活動をしていましたが、私は英語が好きで得意ではあったものの、実際に語学学校に留学した経験はなかったのです。

そんな私がフィリピンの語学学校を調査する際に最も気になっていたのは、「語学学校に関する情報が圧倒的に少ない」ということでした。語学学校が作成するパンフレットやYouTube動画は存在していましたが、実際の生活環境や勉強環境に関する具体的な情報が不足しているように感じていました。現地に行ったことがないスタッフも語学学校を紹介することがあり、情報不足のまま紹介することも多々ありました。
そこで、私は「現地で必要な情報を徹底的に収集し、それをもとにお客様に提案できるエージェントになるべきだ」と考えていました。

具体的には、語学学校の施設や勉強環境、さらには生活環境の写真を撮影し、どのような食事が提供されているのか、生徒たちの生活はどうなっているのかなどを詳細に記録することを目指していました。また、学校周辺の環境や生徒たちの日常生活にも焦点を当て、できる限りの情報を集めようとしていたのです。このようにして、語学学校の実態に基づく信頼性の高い情報をお客様に提供することで、「親切なエージェント」として認識され、結果的に契約率の向上につながるのではないかと考えていました。

つまり、情報の非対称性を解消することが、契約率アップのカギになると信じて、この出張をスタートさせたのです。

実際に私が行ったこと

情報の非対称性を解消するために、フィリピン現地ではできる限りの行動を取りました。まず、現地の生活環境、食事、衛生、勉強環境といったさまざまな情報を収集し、それを営業資料としてまとめました。そして、誰がフィリピンの語学学校を紹介しても同じ営業ができるように、トークスクリプトも確立していきました。

フィリピンには約200校の語学学校があり、すべての学校をカバーすることはできませんでしたが、質の高い「有名校」と呼ばれる学校に関しては、しっかりとした資料とトークスクリプトを用意することができました。これにより、情報の非対称性は出張前よりも大幅に解消できたと思い、現地での取り組みに自信を持っていました。

そのため、情報が整備されたことで、営業マンの契約率も自然と上がるだろうと思い込んでいました。

私の主張の流れをまとめると、
留学エージェントと語学学校の間で情報の非対称性がある

情報の非対称性をお客様も感じているのでは?と解釈をする

情報の非対称性を埋めるために現地へ出張する

語学学校に関する情報を集めるだけ集める

集めた情報を資料とトークスクリプトにする

営業マンの契約率アップ
というふうに考えていたことになります。

施策を考える際の理想の流れ

ここからは、施策を考える際の思考法について振り返ってみたいと思います。以下で紹介する内容は、当時の社長からのフィードバックに基づいており、また安宅和人さんの『イシューからはじめよ』や高田貴久さんの『問題解決――あらゆる課題を突破する ビジネスパーソン必須の仕事術』にも共通している考え方です。

施策を考える際、最初に取り組むべきことは
「課題は何か」
を明確にすることです。

マーケティング会社「株式会社才流」の著者である栗原康太さんの言葉を借りると、「顧客に課題が存在するか?Customer Problem Fit」を最初に考えることが重要です。これは、新規事業の成功を左右するプロダクトマーケットフィット(PMF)の教科書にある「良い市場を見つけ、そのニーズを満たす製品やサービスを提供する」ことと同じ考え方です。

施策においても同様で、施策を実行する理由は、理想と現実の間に存在するギャップを埋めるためです。つまり、施策はそのギャップを解消し、現状を理想に近づけるためのものです。新規事業の場合も同様に、お客様が価値を感じ、対価を払っても良いと思えるプロダクトやサービスを作り出し、収益の柱となる事業を創出することが目的です。この両者に共通するのは、必ず「課題」を起点に考えることが成功の鍵である、という点です。

私自身の解釈では、最初の課題探しの段階では必ず手を動かし、実際にデータや現実に基づく作業を行う必要がありますと思っています。勘や直感、解釈に頼って決め打ちで施策を進めると、結果が出にくくなるだけでなく、PDCAサイクルを回しにくい状況に自分を追い込んでしまうリスクがあると学んでいます。

課題を考えないことによる問題点

先ほど、フィリピン出張前に考えていたことや、実際に行った施策について振り返りました。その中で、私は施策を考える前に「課題」を一切明確にせずに、フィリピン出張と企画をスタートさせてしまいました。繰り返しになりますが、施策を考える際には、まず「課題は何か」を最初に考えることが不可欠です。私はその思考を欠いたまま動いてしまいました。課題を考えずに施策を行うと2つの問題が発生すると思っています。

  1. お客様への影響を計る意識が薄れる

  2. PDCAサイクルが甘くなる

1つ目:お客様への影響を計る意識が薄れる

どんなサービスやプロダクトでも、お客様に価値を提供することで、その対価として金銭を受け取ることができます。お客様の評価こそが絶対であり、お客様への影響を無視した施策は無意味だと考えています。

私のフィリピン出張の目的は、契約率向上でした。契約率が下がる要因の一つには、お客様が語学学校を選ぶ際に“悩み”や“迷い”があるため、選定が遅れてしまい、その結果当月中に受注できないといった問題がありました。つまり、契約がうまく進まない背景には、お客様の満足度が低かったり、解決すべき課題が存在していたりすることが考えられます。

私は、情報の非対称性を解消すれば契約率は自然に上がるだろうと憶測で決めつけ、施策が与えるお客様へのインパクトや反応を十分に確認しませんでした。結果として、自分が行った施策がどのようにお客様に響いたのかを把握できなくなり、次の施策にどうつなげるかを判断することが難しくなってしまいました。
お客様の課題を考えずに、決め打ちで施策を実施した弊害だと思っています。

2つ目:打ち手に対する効果測定が甘くなり"改善"に繋がりにくい

お客様の課題を無視した施策は、PDCAサイクルを回しにくくなる傾向があると考えています。本来、施策の流れは「解決したい課題」が起点となり、その課題を解決するために"企画"・"実行"・"確認"・"改善"のステップを踏むべきです。課題が明確でない場合は、"企画"や"実行"ができたとしても、何を"確認"すれば良いか分からず、施策の成果を確認する基準がなくなります。ですので、課題が設定されていないと"確認する内容"が見えず、次に何を"改善"すべきかも見出せない状態に陥り、PDCAサイクルが機能しなくなってしまいます。
違う角度では、お客様の課題といっても小さいものから大きいもの複数あると思います。たくさんある課題から何を取捨選択しているのか、何に対して打ち手を行っているのか常に把握することは、お客様の解像度を上げて施策を打つために必ず必要です。
たくさんあるうちのどの課題に対して"確認"と"改善"をすればよいか分からず、先行きが怪しい施策と打ち手の連続になる可能性が高いです。

私の場合、「契約率を上げる。そのために情報の非対称性を解消する」といった形で、文面上では目標を立てていましたが、その課題の解像度は曖昧で十分に具体化されていませんでした。結果として、ただ契約率を上げたいという曖昧な目標と、自分なりに良いと思った「情報の非対称性の解消」という手段を、資料やトークにまとめることしか考えられなかったのです。

明確な課題設定ができていなかったため、資料とトークを作成した後、「次に何をすれば良いのか?」と迷いに陥ることになりました。これは、実際に体験しないと理解しにくいかもしれませんが、「何となく良さそう」な施策は、往々にして大きな落とし穴(次の打ち手が分からない)に繋がる可能性が高いと思っています。施策を成功させる上で最も重要な要素は、解くべき課題を明確に設定することです。課題が曖昧なままだと、施策は1回の試みで終わり、次にどう改善すべきかが不明確になり、PDCAが回らなくなります。

施策を考える時には"課題ファースト"

今回のNoteでは施策と課題について私なりの経験をまとめてみました。
最後に"課題"に関する言葉を残して終わりにしようと思います。

課題が自分を成長させてくれます。課題の難易度は成長角度です。
目の前に課題が訪れたら、
「この課題は私に何を教えてくれているのだろう?」
と自問自答してください。課題は神様がくれているプレゼントです。傷つき、落ち込み、涙するような課題ほど、神様に感謝することです。
素晴らしい課題が、自分に素晴らしい成長をもたらしてくれます。
傷つきながらも、感謝して素晴らしい課題を解決してください。

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