純と練
聖黒のキャラクターはリアル軸と同じように歳をとっていて、作中の時点で36だとか43とか45だった彼らも令和3年ではもう皆還暦を過ぎている。丸腰さんもおっしゃっておられたが、他の面々は生存してると思うけど練はどうなのだろうか。
幼少期から体が弱かった、という点はおそらく成長と共に改善されてる様だけれども、彼の摂取する尋常ではない酒量と眠剤等の面から考えると、やや危ない……気もする。
もともと長生きを望むタイプではなさそうだし、私は「海は灰色」は未読なのだけれども、麻生と一緒にいる未来はなんとなく見えない。
資産が膨大にあるので、そこら辺は問題ないとしても、練が欲しかったであろう愛してくれる人間というのは手に入ったのだろうか。
練は麻生以外をおそらく心の底から愛することはできなそうだし、誰かと新たに恋愛するのもちょっと考えにくい。
そう思うと、練の事を本心から愛し(やり方はさて置き)理解してくれていたのは、誠一だったんだなと思う。
山内練は、自分が今まで遭遇したどのキャラクターとも違う魅力があって、もし彼が女顔のかわい子ちゃんだけだったらここまでハマらなかっただろう。彼の底のない闇や、それでも根底にある優しさ。そしてどこかで手に入らない愛情を求めている子どものような面と、悪魔の暴力性。詰め込まれてます。
及川とはまた違ったベクトルで好きなのだけれども、本当に魅力が大きすぎる。もっともっと彼の生き様を追いかけてみたい。
練は誠一と龍太郎という二人の男の他に田村や斎藤などとも縁深いけれども、個人的に及川とのコンビ?が好きです。この二人全然違うようで核が似ていていいな〜
はじめての出会いってどんな風だったの?!と、これもまた妄想のしがいがあるという訳です。
以外小話
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はじめて見た時から、なんて誠一に似てるんだろう。とそればかりを思っていた。
誠一が本気で殺したいと思っていた本庁四課の刑事が俺の所へやってきた日は、酷く蒸し暑い曇天だった。
挨拶もそこそこにどうしようもない質問を多々されて、適当かつ真摯に答えていたら突然ぶたれそうになったので逆にその腕を捻り上げてやった。尤も、殴りかかってきたのは及川の部下だった訳だが。
及川の事は誠一からも粗方聞いていたし、俺自身でも調べ上げていたからこちらから改めて聞く事は何もなかったが、なんとなくサシで喋ってみたくなり、及川の部下と俺のガードを部屋から追い出しベッドルームへ誘った。
及川がゲイだという事も知っていたし、俺たちと仲良くしてるのも知ってる。だから誘った。恋人がいると知ってて誘いをかけた。
及川にとってみれば、俺とセックスする事なんて大した事じゃなくて、言ってみれば接待ゴルフみたいなモンだったのだろう。予想外にすんなり応じた事には少し驚いたが、殴られるのを覚悟で「アンタの男、ヘタクソだろ」とはすっぱな事を言ってみると、突然押し黙ったのであながちハズレじゃなかったようだ。
それから三、四年。こうして俺たちはコーヒーでも飲むように顔を合わせると違いの体に手を掛ける。これは交渉で、愛だの恋だの甘ったるい感情などない。けれども、ふと思った。
この誠一に似た男も恋をする。俺をパクったあの男にゾッコンだ。それなら俺にとっちゃあ恋敵なのだけれども、おかしな事に俺は及川を通じて麻生龍太郎を知った。
及川のセックスは荒々しかったが、どこか憎みきれない情を感じてそれが嫌だった。もっと手荒くすればいいのに。誠一みたいに。
「悔しいのか」
誠一が死んだ。
そして、誠一に似た男が俺を今日も抱く。嬉しいんだよ。嬉しくて、気持ちがいい。
誠一に似てるとばかり思っていた男は、俺と少し似ているのかもしれない。
終