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仕事の選び方 IKTT Midori編

仕事や条件を選んで入社する。これが普通だろうし、実際自分も今までそうしてきた。しかし今回は違う。仕事を選んだというよりも、これからの人生の中でついていきたい「人」を選んだその先に、今の仕事があった。

ブライダルの仕事を辞めた後、友人との何気ない会話の中で、近場でどこか海外旅行に行こうという話しになった。ベトナム?カンボジア?タイ?友人が選んだのはカンボジアだった。なら、気になる日本人がいるからそこも行こうと友人を誘い、2014年、初めて伝統の森に来た。

2014年12月 伝統の森訪問時

第一印象は、すごいとこに来ちゃったな。。。だった。目的は森本喜久男という男性に会う為だったから、IKTTの仕事は布を作っているという程度の理解で、布自体に興味はなかった。そして、この旅行のたった2日間の間に自分の人生を大きく変える決断をするとは思ってもいなかった。今ではカンボジアの田舎の村が私の仕事場であり生きる場所となっている。

「ここで働かせてください」

まるで、千と千尋の神隠しの一場面のようだが、何の躊躇もなく森本さんにそう伝えた。こんなことは人生で初めての経験だった。そして森本さんは、あまり驚いた表情はせず一呼吸置いて

「ありがとう」

と言ってくれた。何者かもわからない、この仕事の世界のことも知らない、そんな人間によくOKを出してくれたと今でも思う。

2017年3月 蚕祭り

この人生を変える2日間の間には他にも運命的な出会いをした。それは一冊の本だった。たまたま居合わせた人が私に手渡した1冊の本が私の背中を押した。優柔不断で行動力がない、人見知りな自分に対し、目には見えない力が大きく働いたのを一瞬一瞬に感じていた。

森本さんは2017年死んでしまったが、この間に私は多くのことを森本さんから学んだ。もちろん今でもまだ学んでいる。そして私の精神は見違えるほど落ち着き、少しの自信もついてきたと思っている。決して今までの人生が不満だったわけでない。むしろ、日本で沢山遊び、色々な経験をし、色々なモノをみて、社会人として10年以上やってきたからこそ、今の自分があるわけで、IKTTで自分しか出来ない仕事が出来ている。なんの経験もせずに世界観が狭いままでここに来ていたら、出来る事も限られていただろう。

工房内にて

仕事を選ぶ上ではやはり仕事内容や条件を優先するだろう。しかし、私みたいな性格の人間は、たまには自分の直感を信じて行動してみるのも悪くない。後先考えずに、心が動いた方向に突き進んでもいい。間違ったと思ったら軌道修正すればよい。突き進んだ先でしか経験できないことがあり、意外とどうにかなるもんだ。そもそも自分には守るモノも無く、身軽だったからこそ出来た選択だったという話でもあるが。。。

今となっては自分の直感に従ってよかったと心から思っている。昔から、夢や、やりたいことが特に無い私は、目の前にある仕事を一生懸命、丁寧に行うことで、今の自分にたどり着けたのだと思う。それは子供の頃から「何かを表現したい、美しいモノが好き」という漠然とした思いが招いた、今までの人生の選択の上にあるのかもしれない。

2014年 伝統の森訪問時

私は今、カンボジア伝統絹織物の世界で働いている。他国の伝統を扱うという事の重みが年々増してくるのも事実。たまにYouTubeで見かける日本の伝統的なモノ作りの世界にいる外国人。きっと同じような気持ちなんだろうと思う。

最近はIKTTの布を真似するところが出てきたりしている。うちのスタッフはまた真似されたとか言っているが、私にとったら嬉しい事。少なくとも、「あ、この布いいな」とカンボジア人が思ってくれているという事だ。カンボジア人にとって違和感なく受け入れられてる証拠でもある。そして、SNSでもアンチコメントを見かけるようになってきた。

ほんと、有名になったなぁ~と、嬉しい気持ちで一杯だ。

これから先の事も聞かれる事がある。あとどのくらいここにいるんですか?と。正直分からない。期間を決めて働いているわけではないし、正直に言えば、カンボジアの為にとか、誰かを助けようとか、IKTTの為にとか、そんなちゃんとした目的があって働いているわけではない。

この仕事が好きだから。それ以外に何もない。


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