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奇妙な雰囲気の絣

会いたい!これ作った職人に会いたい!と、私を興奮させたこのデザイン。

実物を拝むことは出来なかったが画像でも良い意味での奇妙な雰囲気がプンプン漂っていて、一瞬で「次これ」と決定した。正直、カンボジア人のお客様のオーダーが多く入っていたが、パズルのようなスケジュールを天才的に組み直し、華麗なる入り込み成功。生産管理を担う者の特権でもある。そして括り手を呼んで、

「(推しの)ねっちゃん、次これね!」

「???」

いつもなら画像を見ながら打ち合わせに入るが、彼女はしばし画像を見つめていた。まあ、そうでしょう。そうなるでしょう。次これ!と決めたと同時に、普通のカンボジア人にはウケない事はわかっていたので、普通より少ない糸の量で制作してもらう事にした。なんならIKTTコレクションとして保存したいと思うくらいだ。

私は仕事柄、実際の古布、本やネット上などでカンボジアのテキスタイル、主に古布を見る機会が多い。そこで思うのは、昔の職人達の想像力や表現力の豊かさだ。カンボジア絣の主なモチーフは、宗教や精神世界からインスピレーションを受け表現されているものがほとんど。ナーガ、生命の樹、聖鳥ハンサ、などなど、あげたらきりがない。

ナーガが鍵型で表現されジグザグ模様は水の流れを表してる
ナーガが生命の樹を取り囲む姿が、生命の樹を守護していると言われている
生命の樹の上には聖鳥ハンサ
地上にいる人間の祈りを天に届けると言われている

今回復元したこの布は、そんなカンボジア絣の中でもとてもユニークであまり見たことのないパターン。鉤型のナーガや幾何学模様で構成されている模様は多いが、今回の作品はそれらを使った表現が絶妙。また、織り方も独特のため、織り手NOU SORNに張り付いて確認し合いながら慎重に織り進めた。

IKTTでは通常の勤務時間(7時から16時)以外にも、仕事をしている括り手と織り手が沢山いる。これを時間外と呼び報酬は出来高制にしている。この布は時間外で織っていたため、初日は気付いたら23時を回っていた。(彼女は普通でも22時から23時くらいまで織っている事が多い)新しい布を織る時は模様が出てくるとワクワクするが、今回はいつも以上に興奮し、蚊に刺されまくっている事すら気にならなかった。

NOU SORNとIKTT Midori

そして織り途中の画像をSNSにUPすると、馴染みの外国のお客様からすぐに問い合わせがありオーダーが入った。織り手SORNと括り手ねっちゃん(SREY NECH)に伝えると、喜ぶと同時にびっくりしている絶妙な表情をしていた。はいはい、そうでしょう。君達、こんな最短でオーダーが入ると思ってなかったでしょうww

さあ、CoconutのBrown配色か、LycheeのGray配色でも。。。

いや、これって派手だからKawaiiのではないか??

と、いうわけで、最後まで読んでしまったIKTT好き、布好きの皆様。たまに出現する良い意味での「奇妙な雰囲気の絣」にご期待ください。

現在22時45分。SORNの織り機にはまだ灯がついている。

[おまけ]
布には全く関係無い話しだが、ユーチューブのショート動画をなんとなく見ていたら、芦田愛菜ちゃんが 「No one is flawless」という言葉を口にしていた。欠点のない人はいないという意味らしい。この言葉だけだったら何も感じなかったが、flawlessは完璧と似ていると。「でも完璧な人はいない」よりも「欠点のない人はいない」方が、背中を押してもらってる気がする的な事を言ってて。。。キュン

本当そうだ「欠点のない人はいない」と完全に芦田愛菜様に影響された。そうだ、この言葉を胸に、ガチギレしそになった時にはブレーキになってもらおう。頻繁にこのブレーキを使いそうだから、すぐに覚えるな。

初めまして「No one is flawless」様

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