聖地巡礼が生み出す地方創生

目次
①はじめに
②アニメでの地域活性
③君の名は。
④ガールズ&パンツァー
⑤らき☆すた
⑥課題と施策
⑦まとめ

はじめに

 12月課題のテーマは『地方創生をめぐる現状と課題について』
 先月に比べると、なんか小難しいテーマですが、僕が得意とするサブカルチャーと結び付けて、語っていこうと思います!

 まず、はじめに地方創生とは、「東京一極集中と人口減少を克服」し、「地域経済を活性化」するための取り組みのことで、

①地方において安定した雇用を創出する

②地方への人の流れをつくる

③若い世代のファミリープランを実現する

④地域と地域を連結させる

といった4つの具体的な取り組みがあります。
 要するに、様々な理由で地域から東京に移っていく若者に「待った!」をかけ、若者が訪れやすい町、住みやすい町にして、地域を活性化させていこう!という政策で、各地方自治体が色んなアプローチで、これに取り組んでいます。

アニメでの地域活性

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 アニメや小説、ドラマの舞台やモデルとなっている地を訪れることをさす『聖地巡礼
 日本のいたるところに何らかのアニメの聖地があります(上記表)。ご存知の方も多いのではないでしょうか。

 僕も一度1回生の時に、ヒッチハイクをしながら『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない』と『心が叫びたがってるんだ。』の聖地である埼玉県秩父市に行きました!本当にいいアニメなので一度ご覧ください!(両方ともアマゾンプライムにあります)

 聖地巡礼は地域に特殊な需要を生み、若者に身近なアニメというコンテンツをフルに生かせるため、各自治体も真剣に取り組んでいます。
 アニメがきっかけで今まで知らなかった土地を知り、実際に行ってみたらすごくいい場所で、何度も訪れる。もしかすると、今後の生活拠点につながる可能性も…
 そんな地域活性に繋がる『聖地巡礼』から、特に大きな経済効果をもたらしたアニメを3つご紹介します。

君の名は。(岐阜県飛騨市)

 興行収入が250億円に達し、異例の大ヒットとされるアニメ映画『君の名は。』の聖地は、岐阜県の飛騨市となっています。その飛騨市には多くのファンが足を運んでおり、2017年には市全体の観光客が約113万人(前年度比12.4%増)まで達し、500億円近い経済効果をもたらしたと言われています。
 そんな飛騨市は、市を挙げて本作品を応援しており、飛騨古川さくら物産館でパネル展示や、ヒロインが作中にやっている組紐の体験を行っています。また、岐阜県のバス会社では、『聖地巡礼タクシー』という名の、本作品の聖地を回ってくれるサービスを提供しています。

ガールズ&パンツァー(茨城県大洗町)

 『ガルパン』の愛称で、2012年の放映開始にも関わらず人気が衰えない『ガールズ&パンツァー』。
 聖地は、茨城県の大洗町となっています。作中ではとにかく大洗町の街並みが忠実に再現されており、ファンにとってはたまらない町となっています!2015年には、ふるさと納税の返礼品としてグッズを加えたら、なんと1ヵ月で1億6千万円もの寄付金が寄せられたり、地元の鉄道会社はガルパンの影響で2期ぶりの黒字になったりと、大きな経済効果をもたらしています。
 茨城県公式観光情報サイトは、ガルパンに関する情報をまとめたwebページを作っており、町がガルパンを推しています。アニメをキッカケに大洗町を知り移住をした人もいるほど、魅力満載な町となっています!

らき☆すた(埼玉県久喜市)

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 まさに、聖地巡礼が流行りだしたキッカケともいえる、『らき☆すた』。
 聖地は、埼玉県久喜市となっています。久喜市の中でも、オープニング等で登場している鷲宮神社(上の写真、左アニメOP、右現地)には多くのファンが訪れるようになりました。この鷲宮神社、アニメ放映後は初詣客が前年の3倍を超える30万人と急増し、放送開始から10年以上経過した現代でも、40万人台をキープしており、アニメ放映後3年間で22億円以上もの経済効果があったそうです!
 地元では本作品の人気を活用し、イベントの開催やオリジナルグッズの制作・販売を行っています。毎年行われる『土師祭』というイベントでは、『らき☆すた神輿』を担いだり、コスプレをしたりと、聖地ならではの企画が盛り沢山となっています。ファンと町民の方が親しくなり、集会所に泊まるなんてことも!町民の方々の人柄の良さも、ファンを引き付ける要素の一つなのかもしれません。

聖地巡礼の課題

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 コンテンツが人を動かす「コンテンツツーリズム」というジャンルにおいて最も人を動かすことができるのはアニメではなく、NHKの大河ドラマだと言われています。2016年に放送された『真田丸』がきっかけで、ゆかりの地の上田城跡にできた『信州上田真田丸大河ドラマ館』は、来場者数100万人を突破しました。ただし、課題も見えており、歴代の大河ドラマの舞台となった地は、放送の年に大幅な来訪者を集めるが、翌年以降は人が激減しているのが現実です。図表は、近年のNHK大河ドラマについて、放送年(赤丸で囲った年)の前後5年間について、聖地となった府県の観光客数の大河ドラマ放映年との比です。図表からは、おおむね放映年における観光客数の増加と、翌年以降の落ち込みが読み取れます。

 地方創生という取り組みにおいて、一時的な集客であれば、コンサートやイベントの誘致などを行うことで実現できるが、それだけでは地域に継続的に恩恵を与えることはできません。聖地巡礼と呼ばれる現象が成功している地域は、リピーターとなるファンが存在し、彼らが繰り返し地元で消費活動を行うことにより、地方創生に貢献しています。

 上記3つのアニメの成功要因は、聖地のある地元地域がファンと積極的に連携していることにあります。聖地の自治体や住民が、ファンとのコミュニケーションを通じてファンのニーズを丁寧に汲み取り、さらにアニメの権利者との関係を強化して、イベント開催やグッズ展開で工夫を重ねているのです。
 アニメは必ずしも確実にヒットするわけでないものの、偶然にもヒットアニメの聖地となった自治体やその住民は、このような成功事例も参考に、観光効果の持続を目指してファンとの連携を深めていくべきなのです。

まとめ

 聖地巡礼やコンテンツツーリズムという現象は地域創生の1つの手段として大きな可能性を秘めている一方で、やみくもにコンテンツの誘致をすることだけでは不十分であり、ファンが地域を巡りたくなる企画とそれを提供するプラットフォームを合わせることで初めて継続的な成功を得られるものです。その際、経験則に頼るだけではなく、ユーザーの行動などのすべてのデータを具体的な数字で可視化し、継続的に持続可能な地域振興のプランを計画していくことが成功の秘訣となる。これらが実現できれば、どのような地域でもリピーターを作ることができる時代となっていると僕は思います。