ハイレゾ崩壊序曲?
「ハイレゾ」も一時のようなメーカーや店舗の鬼押しも落ち着き、コンポやポータブル機器を中心に普及価格帯での売り文句の一つに定着しつつあるように感じています。
今までにも書いてきましたが、「ハイレゾ」には何の新規性もなく、単にCDより情報密度が高い旧来の論理フォーマットを指してるだけの物です。
CDのように物理フォーマットが決まっておらず、再生する際に使用する環境・ハードウェア・ソフトウェアによって、聴こえる音質はいかようにも変わってしまう。
なのに何の基準や根拠にも基づかない各メーカー独自の物差しで「OK」とすれば、「ハイレゾ」対応機器になるという代物。これでは単に利権団体でしかないのでは。
それでも昨年は期待感からハイレゾは多いに注目を浴びたのは確かです。
一年経って「ハイレゾにも音のレベルは色々ある」「良い音とハイレゾはイコールではない」ということが広く認知されてきたとも思う。
ここに来て日本オーディオ協会は、協会推奨ハイレゾロゴ付与制度を会員企業以外にも対象を広げ、2016年10月より国内外の企業に向けて新規運用開始することにしたという。
これは明らかに方向転換であり、当初に期待した効果が得られなかったため、ロゴ使用のハードルを下げて勢力拡大を狙ったものだと思う。
しかしここでもいくつかの問題がある。
①もともと日本オーディオ協会員は無償で独占的にロゴ使用ができたが、今後は非協会員もハイレゾロゴの使用が可能になり、非協会員が使用申請を行う場合は一定の費用が発生するという。
「ハイレゾ」にはいかなる新規知的財産や新規技術の使用も無く、既に存在していたフォーマットの一部分を勝手に囲って、「ハイレゾ」という実体不明の物を振りかざして来たことを考えると、ロゴ使用に費用を取ると言うこと自体が利権団体である性質を表しているようだ。
日本オーディオ協会がロゴ使用に際し料金を取れるという合理的根拠は存在しないと思う。
単に商標使用料ということならその対象となる「ハイレゾ」の定義範囲を科学的に明示する必要がある。
②Phile-webの記事には以下のように書かれていた。
“この新制度下では「日本国内企業が、日本オーディオ協会に入会することなく、ハイレゾロゴの使用申請を行うことは可能か」との質問も、事務局に投げてみた。これについては「入会なしでの使用は、制度上は可能ではある。しかし、そういった申請があった場合は、オーディオ協会への入会をまずは案内する予定。日本オーディオ協会に入っていただいて、オーディオの発展についての議論を一緒に進めながら、ロゴを使っていただくのが本来の筋と考えている」とのことだった。”
これは明かなダブルスタンダードです。日本の企業なら利権団体に加われという脅しのようなもの。
そもそもボーダレスな現在において、「日本国内企業」という枠組みを考えていること自体が、全く時代遅れ。これだから日本のオーディオ業界が時代に取り残されつつあることになる。
③世界に広げるのに、ロゴが2種類あるのはまずいでしょ。
しかも、KENWOOD, JVCはこのロゴを使用していてるという。。。
本当に技術主導でなく、マーケティング=お金儲けの事しか考えてないのだから困ったもの。
元々のこころざしが低いので一貫性・論理性を保つことができず、その中で海外メーカーを含め世に広くオープンすることで、「ハイレゾ」の無意味化が更に進むのではないでしょうか。
そして本当に良い音というポイントに、メーカーとユーザーの双方の意識が移っていくことを期待しています。