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「わたし」を見つけては破壊せよ

平素よりお世話になっております。高島です。

「CRAZY ABOUT YOU」リリースされました。


聴いていただいた皆さま、もちろん買ってくれた皆さまもありがとうございます。いつも応援してくれてる皆さまにも重ねてお礼を。

既存リリース曲を除く7曲は26インチのバカでかいバスドラムで演奏しています。

いつもお世話になってるドラムテック(ドラムの調律する人)のハゼさんがひょんなことから購入し試してみたところ、「あれ…、これロックドラムの正解ってこれじゃね…?」と驚嘆。「ドゥゥン!!」と部屋ごと揺れる低音。
二十余年の太鼓叩き人生のなか、初の衝撃です。俺がずっと追い求めていたモノはコレや…!

太鼓が大きい、ということはその分低音が増します。アルバム内楽曲「成敗」が顕著ですが、バスドラムの低音がより押し下げられた分、ベースの動きがかなり見えやすくなっています。この絡まり合いがとっても美しい。
ちなみに同曲のAメロがとんでもないリズムになってますが、あれはいわゆるただのパラディドル。「RLLR LRRL RLLR L*RL」、参考までに。

不思議な縁も絡まり合い、五年ほど前に別団体で「I'm Crazy About You」という楽曲をリリースしていました。端で踊る刺青の男、というよりはデカ耳ピアスの男が僕です。

意訳すれば「わたしはあなたに夢中」。今作は「あなたに夢中」、ビックリマークつけてもいいかもしれませんね。大文字だし。
五年かけて主語が抜け落ちたまさに今、“わたし”にとっての「あなた」はあの巨大で獰猛なバスドラム。
恋に落ちる音がした、という何某かのタイトルを見たことがありますが、僕が恋に落ちた音があるとすれば「ドゥゥン!!」です。

「CRAZY ABOUT YOU」、夏の終わりにお楽しみください。

ツアーもあります。いわずもがな、一人だけ後ろで壁触ってるのが僕です。鬼のパラディドルを体感せよ。




別件で商品モデルもしました。

数年前に台湾ツアーのサポートを務めた縁から、以降懇意にさせてもらっているロックバンド「Yellow Studs」のピアノボーカル野村太一氏。
一緒に革ジャン買いに連れて行ってくれたり、ハンバーグ食べに行ったりしてる通称イエスタのボスに「何も持ってこなくていいから」と呼び出され、港区のスタジオを訪れたデカ耳ピアスの男改め、刺青の男。

服を着てみたりジャケットを背負ってみたりサングラスを掛けてみたり、「もっと!!もっとタトゥーを出して!!」と不思議で楽しい時間を過ごさせてもらいました。必要以上にイカつくなった様に思えますが、その方が商品売れるやもしれん。

俺こんなにタトゥー入ってるんだ…、と発見もありました。商品写真をイカつくしたかったらまたいつでも。こちらも是非チェックしてください。


先日の話。
誕生日を迎えたばかりの板歯目のギターボーカル千乂詞音氏と、いつもライブでお世話になってるカメラマンのてる氏、という不思議メンツで映画を観に行きました。

今年の春先に板歯目のツアーに呼んでいただいたのが縁で、打ち上げの席で詞音ちゃんとホラー映画の話題で盛り上がったのがきっかけ。

ちなみに楽曲「地獄と地獄」内の(バンド名が読めない!!)がSNS上でバズった板歯目ですが、本当にバンド名が難しく、こうしてる今も「いた・は・め」と変換して入力しています。正しい読みは「ばんしもく」です。

カメラマンてる氏はホラーが大の苦手。移動中の車内で僕が話した怪談でさえも「いや、まじホテルで思い出してしばらく怖かったっす…」ほどに良いリアクションを取ってくれます。まぁでもせっかくの機会なんで、と参加してくれました。

そんなてるの為、モンスターや血しぶきなどの直接的なゴア的映画よりも、心理的な恐怖を重視した方向でのホラーがよかろう、と選定した映画はデヴィッド・クローネンバーグ監督「クライムズ・オブ・ザ・フューチャー」。

https://eiga.com/movie/97009/photo/

カラダから生み出されるのは、希望か? 罪か?そう遠くない未来。人工的な環境に適応するよう進化し続けた人類は、生物学的構造の変容を遂げ、痛みの感覚も消えた。“加速進化症候群”のアーティスト・ソールが体内に生み出す新たな臓器に、パートナーのカプリースがタトゥーを施し摘出するショーは、チケットが完売するほど人気を呼んでいた。しかし政府は、人類の誤った進化と暴走を監視するため“臓器登録所”を設立。特にソールには強い関心を持っていた。そんな彼のもとに、生前プラスチックを食べていたという遺体が持ち込まれる...。

https://filmarks.com/movies/102743

巨匠クローネンバーグの最新作。どんよりと、且つ鋭利で難解な映像展開は複数回楽しめそうです。

僕らの生きる現実社会で、人工知能がこれまで以上に浸透した結果「このままではホワイトカラーの仕事がAIに奪われてしまう!」という危険信号に対し、推進派の意見は「人間がやらなくていい事はやらなくてよい、その余暇を遊びや表現活動に充てる、これこそが人間らしい機能だ」ということらしいです。

そう遠くない未来、と描かれた本作でも痛みのなくなった世界でアーティスト活動が大衆のなかで大流行します(それは図らずしもある種のタトゥー)。映画とは人間が想像した数十年先の未来予知装置、という側面もある。

この二点においても御年80歳、長年創作活動の第一線に身を置いていてクローネンバーグ監督の先見の明といいますか、予知能力といいますか。「この爺さん本気出しすぎやろ、まだヤル気かいな」と感心するばかりです。

痛みの消えた世界では痛みを求めて自傷行為が大流行します。唇や瞼を縫い付けてみたり、互いを刃物で身体を切り付けあってみたりするそれは「未来のセックス」と表現されています。

経験則から、ホラー映画を紐解くには宗教の観点を持ってあてはめていくのが極めて有効です。

主なる神はその人に命じて言われた。「あなたは園のどの木からでも心のままに取って食べてよろしい。しかし善悪を知る木からは取って食べてはならない。それを取って食べる時、きっと死ぬであろう。」
(創世記2:16~17)

https://www.newlifeministries.jp/original-sin/

「神の目からみて人間は全て罪人である」と聖書にあり、アダムとエヴァが善悪の知識の木になった果実を食べてしまった結果、罪は人類に入ってしまった。
キリスト教ではその罪の報酬が「死」であり、二人の罪は後に生まれた全ての人に受け継がれていった、という世界設定があります。

罪の支払う報酬は死である。
(ローマ6:23)

https://www.newlifeministries.jp/original-sin/


クライムズ・オブ・ザ・フューチャー、直訳すると「未来における罪」。

痛みが最高状態に振れてしまった結果訪れるのが「死」である、とすれば。まだ見ぬ未来の世界でも我々は許されていないことになる。しかし、痛みからの解放される唯一の手段が「死」である、とも考えられる。

暴力や死、ここまでの話には当然痛みを感じるために、媒介としての自己がある前提。
主語になる「わたし」のリミッターさえ外せれば「あなたに夢中!」と猛進的になれて、つまり五年かけて「I'm」が抜け落ちた僕は最強、という線も出てくる。

しかしどんなにタトゥーが好きな僕でも痛いもんは痛い。結局俺は「わたし」という肉体の入れ物に縛られてるんだなー、と。そんなことを思い知らされます。

痛みや死、避けて通るべき要素をスクリーンに映し、二時間座席に肉体を固定し鏡として「わたし」の心のなかを見つめて探る。
痛みや死を考えることは、生について考えることと同義。ホラー映画は自分の世界を押し広げ、世界を見る視点を増やし、自分自身を見つめる機会を提供してくれるのです。

映画を鑑賞したのち、酒場に入り語らいあった時はもっと饒舌に理論展開できていたように思えますので、また進展があればお伝えします。
ホラー映画鑑賞部は月一開催を目標にしております故。

以上になります。

それでは引き続きどうぞよろしくお願いいたします。

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