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MOSHIMO「化かし愛」RELEASE TOUR 東京公演 あとがき

平素よりお世話になっております。高島です。

僕はシンプルに「刺青・タトゥーの類で身体を装飾する」のが好きです。見るのも、入れるのも好き。
出来ることなら全部、たくさん入れたい、と常日頃思っています。
ゆえに街中や銭湯でそういった人がいるとごく自然に
「おっ、どんなのが入ってるのかしら」
「ライン(線)はどんなクオリティなのかしらん」と目がいってしまうのです。どんなに小さな彫物でも、見落とすことは決してありません。

みなさん、「グレイテスト・ショーマン」という映画をご存じでしょうか。2017年に公開されたヒュー・ジャックマン主演の、サーカスでの実話を元にしたミュージカル映画です。

19世紀にはフリークショー、今でいうところの「見世物小屋」ですが、ヒゲの濃い女性や小人症、または大男、アルビノなど。そういった身体的な障害を持った人々を文字通り「見世物」として扱うサーカスがありました。

劇中には、そんな世間の侮蔑・差別の目なんか関係ない、世間にどういわれたってThis is me、これが「私自身」だ、と歌い踊る感動的なシーンがあります。
そのまんま、「THIS IS ME」というドラマチックな楽曲をバックに、髭面の女性がシンガロングします。
圧巻のパフォーマンスと歌声。結合双生児の兄弟、小人症の男と、女性に続いてさまざまな人物が代わる代わる歌います。
そのなかに全身刺青だらけの男がチラっと登場します。

ビールを片手に観ていた僕も「おっ、面白いヤツおるやん。顔までってことはチカーノスタイルかな?」などと、ついそちらに目がいってしまいます。
情熱的に歌う刺青だらけの半裸の男。

でも、あれ?なんか違和感あるな。
2mとゆうに超える男とか、小人症のプロレスラーとかテレビで観たことあるけど。なんだろう、この感じ。

カメラは髭面の女性に切り替わります。またこの人の歌声が凄いんだ。表情の作り込み方も完璧だし、ついウルっと来てしまいます。
その脇には全身刺青の男。変わらず情熱的な表情でなにかを訴えています。

あれ、ちょっと待って。お前、刺青って、自分で入れてない??

クライマックス、髭の女性が歌い上げます。圧巻のパフォーマンス。そしてフレームの端にはやはり、刺青の男。

あれ?やっぱりお前、実は関係ないよね?
「俺はぁ、生まれつき刺青だらけなんだぁー!!」みたいな顔で歌ってるけど。

「THIS IS ME!」
全員が足を踏み鳴らしパフォーマンスが終わります。
息の上がる髭の女性、滴る汗も拭わない小人症の男、決死の表情の結合双生児の兄弟。その隣には自信満々な刺青の男。

やっぱり、お前違うよね?自分から「見世物」になりにいったよね?
懲罰の刺青だとしても、尚のこと悪いのお前やん…。
顔までやられるっていったい何したん…。

彼に着目すると二度楽しめる映画です。おすすめ。

そんなグレイテスト・ショーマンを観た翌日、MOSHIMO「1st FULL ALUBM「化かし愛」RELEASE TOUR <バカ試合>」の東京公演が開催されました。


恵比寿リキッドルーム、ご来場いただいた皆様、ありがとうございました。初めてきてくれた方も多く、おかげで会場ソールドアウト。
緊急事態宣言も明け、良い幕開けになったと思ってます。
今回もライブ当日の振り返りをしてみます。そんなに長くはないかな、いくぞ。

前々日~当日に起きたこと

夜、突如としてLINEが連発するので一体何事か、とスマホを拾い上げる。
「これ、いっこーの友達よね?」
「友達出てるよ!」
そんなような大量のLINEとスクショ。
とあるインターネット番組にいっちー(一瀬)とポチ(岩淵)が出演するのは知っていたが、添付されたスクショを見るに視聴者数が数万人。

友達というか、バンドメンバーというか仕事仲間というか…。まぁ平たくいうと友達っすねー。
そっけない、そんな照れ隠しで返信。翌日の仮免許技能試験に向けて早めに就寝します。

二日後。「1st FULL ALUBM「化かし愛」RELEASE TOUR <バカ試合>」の東京公演当日の朝。
会場は恵比寿リキッドルーム、全バンドマン憧れの地でございます。僕はこのステージに立つのは今日が初めて。

朝七時に起床し、いつも通り洗濯物を回したり、コーヒーを飲んてみたり、煙草を吸ってみたり。超大型の台風のため洗濯物は部屋干しです。
空気清浄機とサーキュレーターの完璧なポジショニングを構築し、時計をみると定刻。
「例のレンタカー屋さんに12:00集合!」のとりやまマネの命通り、10:00には出発します。
念のため、ドアtoドアで40分程度である、と再記しておきます。

外はしっかりと雨。
14時頃がピークとされている大型台風、これから雨も激しくなっていくことが予想されます。
歩きながらアプリでタクシーを配車、運よく次の通りで一台捕まったので乗車、最寄り駅まで向かいます。
ちなみに家からここまで、一歩も立ち止まらず。ベリースムーズ。

電車を乗り継ぎ、件のレンタカー屋さんのある最寄り駅に到着。11:00。当たり前に時間が余る。
「こうした余暇の時間が良いパフォーマンスを生むんじゃい」とエガちゃんねるを観ながら自分に言い聞かせる。

迷子のポチ

レンタカー屋さんには一番乗り。10分後、MOSHIMOのバンドTシャツを着たとりやまマネが到着。
バンド業務以外のとりやまマネを知りませんが、少なくとも僕の知ってる彼は常に「MOSHIMOのバンT(時たまeasy as pie)」+「ワイドのクロップドパンツ(黒)」のセットアップ。
先月の北海道遠征も上着すら持たず、いつものセットアップで寒い寒い、と言うもんですからなんか便利なアウターでも次の誕生日に贈ってみようかなぁ、などと思案しているといつも通りの真也さん(本日誕生日)が登場。
真也兄さんは今日が誕生日。日付が変わるころにLINEは入れたが改めて「お誕生日おめでとうございますー」と一言。新しいiPhone片手に嬉しそうな真也さん(本日誕生日)。
リュックの中のプレゼントはいつ渡そうかな、と思いながら乗車。男三人、Noisy事務所へ向かいます。

昨日の仮免許試験の結果、これはいつみんなに話そう。
「えぇ、真也さん、仮免七回も落ちたんすか!?」
「S字もクランクも俺一回目からノーミスやったし、正直これはもう才能っすね」などとさんざん啖呵を切った手前。
とりやまさんに至っては落ちたらビール奢る約束までしてしまった。

いや、俺は決して落ちたんじゃない。ギリギリ、受からなかっただけだ。
左折の際に右に膨らむクセが出てしまって「それ以外はもう、マジで完璧」と横に乗った警察官も言っていた。
俺は仮免試験に落ちてはない。ギリ、受からなかっただけ。
不意に聞かれても大丈夫なようにロジックを固め、Noisy事務所へ到着。
いっちーと合流し、大雨のなか迷子になってしまったポチを路上で拾い、全員で倉庫へ。楽器を積み込みます。

お墓の秘密、リキッドルームへ

リキッドルームに来ていただいた方はお気づきだと思いますが、ステージには「お墓」と「卒塔婆」がありました。
どこか見覚えのあるアレは、アルバムジャケット制作にあたって舞台美術さんに発注した「特注品」。「化かし愛のうた」のMVにも登場してますね。

撮影後、機材と一緒に倉庫に保管してありましたが、今日ここで使わなければいつ使うんだ、と一緒に持っていくことに。

大雨の中、せっせと機材を積み込みます。とりやまマネがノースフェイスのジャケットを着ている。よかった、他に服持ってたんや。
機材を積み込みいざ乗車、と思いきや後部座席にはお墓が三つ。
奥からいっちー、いっこー、真也さん(本日誕生日)の席に鎮座しております。

お墓をタクシーに乗せて運ぶわけにもいくまい。
機材車の乗るポチととりやまマネを見送り、いっちーが呼んだタクシーに乗り男三人は別途恵比寿リキッドルームへ。

リキッドルームの搬入口から入ると、そこはステージ上手の裏。搬入がラクで助かります。
雨で滑るからか、手の保護なのか、真也さん(本日誕生日)は黒い手袋をしています。
少しずつ強まる雨の中、キャビネット、アンプ、ドラム、お立ち台、と続々と機材搬入。

楽屋に荷物を置き一息、すぐさま楽器をセッティングをすべくステージへ。
縦に長かったり、天井が高かったり、会場によっては音の響き方がぜんぜん違うので多少のチューニングを施します。

マイキングしたり、お客さんが入ったりするとわからないレベルなのでそこまで神経質にならんでも…、と思いますが「神は細部に宿る」。
借りれるものなら神の手も借りたい一心でチューニング。サウンドチェックが始まります。
「God is in the details」とは、ドイツ発祥なんですってね。知らなかった。

お仕事の話、本番

サウンドチェックが終わると楽屋へ戻り一息。本番まで結構な時間があります。
近くに座っていたカメラマンのかわどう氏と、映像のしらしげ氏を談話。

なんでも「カメラマンも本番は緊張する」らしく、バンドのセットリストを見て「この曲ではこっちから、この曲ではギターソロがあるからこっちから…」とある程度のプロットを事前に立てるそうです。
が、本番ではギタリストがリハとは反対の方向に行ったり、導線的に予定していた方向に行けなかったり。プロット通りにいかないことなんでザラだそうです。
それでも時は一刻一刻と進んでいくし、写真は抑えないといけないし。

ケースバイケースですが、30分のステージではおよそ500枚(!)ほど撮るそう。
その中でも「即出し」と呼ばれるような、ライブ後すぐ写真もこの膨大な数から選定し加工し、僕らが使える状態に仕上げてもらいます。

ライブが終わってすぐ写真がアップされたりするのを不思議に思った人もいるでしょう。
こうした人たちの影なる活躍で僕らは活動できています。どんなジャンルでもプロの話はタメになるなぁ。

本番一時間前、「リアル・マイキー」こと伊森くんが楽屋へごあいさつに。
伊森くんはMVや撮影の時にお世話になっているヘアメイクアーティスト。いつもパワフルなナイスガイで、彼が登場すると不思議と雰囲気が軽くなる。
活動範囲は広く目の離せない人物です。ここからインタビュー読めますのでぜひ。


本番30分前、階段を降りステージ裏へ。斜幕の隙間から客席がみえます。
最近自分で気付いたことですが、免許の勉強もステージの演奏も、最後は「集中力」。覚える、とか練習通りに、ではなく「理解する」というんでしょうか。
今、目の前で起きてることを正しく「理解」する、そのための集中力ですね。

10分前、メンバー&スタッフさんが続々とステージ裏へ。
裏のテーブルに置いた僕のタオル、ポチが颯爽とかっぱらって行きましたが今はなにも言いません。
SEが鳴り、ハイハットのカウント。本番が始まります。


ライブ終了、機材について


本番も無事終了。その後はメンバー全員で物販へ。
それぞれ色んな話をしたんですが、「オレ、こないだ詐欺にあったんすけど~」と語りだした男の子がなかなかの衝撃。
昨日食ったカレーなんすけど~、ぐらい軽いタッチ。マジか、そんなことあんの?「あぁフィッシング詐欺やね、それは」と何故かがいっちーが得意気。

物販&関係者のご挨拶が終われば後片付け。
ある程度までのバラしはとりやまマネがやっていてくれました。VIVA謝謝。

ドラムって本当に奇妙な楽器で、ご存じの通り太鼓のなかって空洞なんですよね。
なかに何かが入るわけでもなく、且つどの楽器よりも場所を取る上、パーツが多い。パーツが多い、という事は時間もかかる。

中学生のころ、某アーティストが福岡に来る!とのことで、喜び勇んでZepp Fukukaに観に行ったことがあります。
お小遣いフルで使ってチケット買って、会場に着いてみたらステージにあるのはテレビで観たあのカッチョ良いドラムセットじゃなくて、「地方仕様」のレンタルキット。
今になれば色んな事情が理解できますが、当時の僕はそれなりにショックでして。
「オフシーズンに地方まで来てもらってるだけありがたいと思え!」みたいな考え方もあるらしいですが、そんなん酷いじゃんね。

そんな残念な想い出にならぬよう、可能な限りの労力は厭わない。そんな気持ちです。
(ちなみに、その数年後ZeppFukuokaにやってきたマリリン・マンソンはでっかい祭壇とか、でっかい竹馬とか、フルフルでステージやってました)
(しかも歌もバリバリ上手かった)

スタッフさんの手も借りながら、なんとか時間内に機材を搬入。
お昼から今まで、ずっと屋内にいたのでわかりませんでしたが、すっかり台風も過ぎ去ってました。みんなが帰るころには雨も止んでたのかしら?

おしまい、最後へ

会場スタッフさん、カメラマン、みんなに別れを告げ一路倉庫へ。
結構な時間スマホを見てなかったのでかなり通知が溜まっている。
「ライブよかったよー、ドラムうまくなったねぇ」と広告代理店に勤める幼馴染から。よし、MOSHIMOを売ってくれ。
某野球選手が引退を発表したらしい。東京都からのLINE、新規患者も徐々に減ってきてます、と。
こうして緩やかに日常に戻っていきます。

倉庫に到着。行きの車内でかなりのスペースを取っていたグッズの詰まった段ボール、おかげ様で帰りの車内にはありません。
楽器・機材を戻し、Noisy事務所前で解散。

緊張の糸が切れたのか、早々に本日三回目のタクシーに乗車。
荷物をみて「お仕事ですか、大変ですね」と運転手さん。音楽、演奏、ライブ、エンタメ、仕事。とてもファジー。

もちろん楽しいからやってる、「遊び」と捉われても問題ない。
が、ここは何がなんでも来てくれるみんなを、僕の前に立つメンバーをプッシュしなければいけない。
責任と義務。あまり楽しみすぎると分別がつかなくなるので、「仕事としての音楽」がピリッとして自分にはちょうどいい。
遊ぶならどこまででも緩くやりたいし。

街燈光る路地裏。そろそろまたタトゥー入れたいなぁ。

以上になります。
それでは引き続きどうぞよろしくお願いします。

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