MOSHIMO「化かし愛」RELEASE TOUR 大阪・名古屋公演 あとがき
平素よりお世話になっております。高島です。
昨日はクラシカルDJ水野蒼生氏が突如来宅。
彼が振舞う創作料理に舌鼓を打ちつつ、ツアーの疲れからか昼間からビール・ワイン・日本酒を際限なく飲み散らかし、絶賛二日酔いの中キーボードを叩いています。
僕が過去にビートメイク(作曲)した楽曲で、彼にはピアノで参加してもらったりの縁。
常に挑戦的な姿勢で気持ちのいい男です。リンク貼っておきます。こんな人。
ツアーを振り返ります。
「1st FULL ALBUM「化かし愛」RELEASE TOUR <バカ試合> 」大阪・名古屋公演が終了しました。
ご来場いただいた皆様、ありがとうございました。直前に当日券で入場いただいたお客様も多くいらっしゃったようで重ねて、ありがとうございます。
様々な事情により、来れなかった方も次回はぜひ。いつでもお待ちしております。
今回もノーBackSpace、ザーッと書いていきますのでお時間ある方は最後までお付き合いくださいませ。それでは、ゆくぞ。
初期装備品
「メンバー全員、Noisy事務所に7:30集合!」
そう号令を受けた僕は「①7:15集合→②6:30自宅出発→③5:30起床」と、いつものどんぶり勘定で計算し、朝を迎えます。
無事起床、自宅を出て事務所へ向かいます(ドアtoドアで40分程度の道のり)。
地方遠征の装備は毎度決まっていて、日用品・衣装等を入れた小型のキャリーケース。
そして財布・ガジェット類が入ったミニバックですが、今回追加されているのは「バスドラムヘッド」。
簡単に説明しておくと、バスドラム(赤字で“MOSHIMO”った書いてある、あの大太鼓)の皮。バスドラ、キック、ベードラ、いろんな呼び方がありますが意味はすべて同じです。
「キックにもっとロー(低音)感があればいいよねー」とPAさんやマネジメントと話していて、その対策としていつもより厚めのヘッドを発注しておいたのでした。
グランドピアノをイメージしてもらうと分かりやすいと思いますが、鍵盤の高音部から低音部にかけてボディ(本体)が長くなったフォルムになっています。
低音部にかけて張られたピアノ線が徐々に長くなるため、その分量の低音が出ている、そういう構造になっています。
では長さの変わらないギター・ベースの弦楽器はどうなっているか、というと「弦の太さ」ですね。低音部にかけて弦が太くなっていきます。
質量が増えればその分低音が増える。ピアノ等々に比べれば微々たるものですが、数ミリでもヘッドが厚くなれば効果は見込めるでしょう。
余談ですが、ピアノは鍵盤の右から左にかけて音が低くなります。
ギター・ベースもフレットの右から左にかけて音が低くなりますが、ポピュラー楽器の中でドラムだけがその逆。
左手側から右手側にかけて、音が低くなります。つくづくややこしい楽器ですね。
話を戻して、そのバスドラムのヘッドも今回一緒に運びます。
サイズは22インチ、おおよそ直径56センチの円盤なので、例えるなら家庭用シーリングライトぐらいの大きさでしょうか。
キャリーケースにはもちろん入らないため、「REMO」と書かれたでっかいピザ箱みたいな、段ボール箱を片手に出発します。
小脇にも挟むこともできず、かといって持ち運び用の取っ手もなく。握力と精神力の戦いです。
眠ってなんかいない、真也さん
なんとか電車を乗り継ぎ、事務所最寄り駅に到着。
いつものようにジュースを飲んでみたり、煙草を吸ってみたり、エガちゃんねるを観てみたり、適度に時間を潰し事務所へ。
建物裏口に停まったグランドキャビン(通称・グラキャ、普通免許で運転できる最大サイズの車両)に乗り込むとすでに助手席にはポチ(岩淵)。
おはよー、と声をかけたぐらいにいっちー(一瀬)登場。
マネージャーとりやま氏が運転席に乗り込み、「じゃあ、いこっか」と僕らに声を掛けますが、そこに真也さんはいません。
事務所から車で5分ほど、楽器を管理しているいつもの倉庫へ向かいます。
そっちの方が自宅からは近いらしく、倉庫の前でコーヒー片手に待っているのがいつもの真也さん。
しかし倉庫まで来ても、そこに真也さんはいません。
「(連絡もきてない…、もしや、ついに…!)」
誰一人として口にしませんが、共通の見解が全員の脳裏に浮かんでいたでしょう。
我慢ならず「ベース兄さん、今日は一人で新幹線移動かー!」とポチが口にしたところでベース兄さん登場。
うわー真也さん、遂にやらかしたかと思いましたよー、というと「ふっふっふ。」と不敵な笑み。ホントはちょっと寝坊したんじゃ…?
手慣れたもんで爆速で楽器・機材を積み込み、一同出発。千の風となって、大阪へ向かいます。
大阪に着弾、ANIMAへ
移動中、朝早く寝落ちしたり、ハッと我に返ってみたり。東名高速道路、幾度となく渋滞に巻き込まれます。
立ち寄ったサービスエリアで「平日なのにおかしくね?」などと話している中で、今日が秋分の日だと知る高島。
この時点で結構なビハインドを喰らいますが、ここは「グラキャを手足のように扱う」と評判のとりやまマネ。
さまざまなスキルを発動させ、どうにか無事に大阪へ着弾。しかも時間すこし巻いている、という。とりやま氏に拍手。
祝日のアメ村、決して広くはない路地をグラキャが通ります。溢れんばかりの通行人に怪訝な顔されながらも大阪ANIMA前に到着。
車を路肩に停め、機材搬入の準備をしていると背後に一台の外車が。
いつだったか、大阪公演の際に駐車場にグラキャを停めて機材搬入をしていると、赤いスポーツタイプの高級車にずいぶんと煽られたことがあった。
運転席にはやんちゃそうな男。駐車場に何度もやってきては爆音でクラクションを鳴らし、そこに停めたら邪魔やろがい云々、と怒号を飛ばしてくる。
「いや、なんなん?ぜんぜん通れるし、あれなんなんすか?」と令和版・歩くブリタニカ百科事典に聞いてみる。
「あんな風に“オレ外車!オレヤバいっしょ!”ってアピールしてくる人って一定数いるんよね…」と真也さん。そうかぁ、色んな世界があるんやなぁ。
グラキャの脇を通り抜けようとする一台の高級車、女の子を助手席に乗せたヤンチャそうな運転手。道幅は結構ギリかも。
やべぇ、今回もまた…、と思いきやスルー。その後続にはなんと前回と同じような赤いスポーツカーが。
いっちーと顔を見合わせる。もしかして前とおんなじ車…?あの日の苦い思い出が蘇ってくる、もまたもやスルー。
流行病も小康状態、街も少し和らいでいるのでしょうか。
カメラマンの雷(ライ)さんとも合流し、スタッフさんの協力の元機材搬入。ありがとうございました。
ドラムの話、「焼き鳥スミス」との再会
全ての機材を客席に運び込み、喫煙所でこれからの流れを考えます。最もムダのないムーブはどれだろう?
道筋がみえ、まずは例のドラムヘッドを張り替えます。
古いヘッドを外して新しいモノをセット、そしてチューニング(調律)。
軽く叩いてみてもすでにイイ感じです。作戦は成功のよう。
ついでにフロアタムのヘッドも交換します。
僕が使用している「Pork Pie Percussion」のドラムキットは、いわゆる最近の流行とはすこし違うので、現代風のサウンドに仕上げるには多少のアレンジが必要です。
まだまだ研究中ですが上述した同じ理由、「もっと低音の気持ちいいところを」のプロジェクトの元、こちらも同様に厚めのヘッドを発注しておきました。
張り替えるのはボトムヘッド、叩く方とは反対側のヘッドですね。
ライブハウス・会場関係なく、低音部にはさまざまな楽器が混在しているので、ここを整理できるかが肝になってきます。
そのちょうど中間にあるフロアタムはライブでも、レコーディングでもチューニングがとっても難しくいつも頭を悩ませます。
今回、軽くチューニングしてみても低音が整理され、サスティン(余韻)も減り、かなりスッキリした印象です。
ボトムヘッドはREMOのクリアエンペラー、覚えておきましょう。
あとはいつも通り、スタンド類を組み立てシンバルをセットし、太鼓類を出してステージにセッティング。
全体のチューニングを整えて、PC周りも組み立ててサウンドチェックが始まります。
セッティング中には「焼き鳥スミス」オーナーのたかっしーさんが登場。今回もメンバー・スタッフ、人数分のお弁当をいただきました。
前回の大阪シャングリラ公演、東京へ直帰だった我々に同様にお弁当を持たせていただきました。
その前日にコロナ禍のなか、どうやって生き抜いていくか、など少し話し込むことがありました。
僕は経営的なことをやる予定はありませんが、誰かと共生していくこと、とても学びが多く貴重時間を過ごさせてもらいました。
ライブ楽しみにしてますねー!とたかっしーさん。
お気遣いいただいてありがとうございます。みんなも行こうね、焼き鳥スミス。本当においしいので。
初日、大阪の夜
サウンドチェックも滞りなく終了。楽屋で衣装に着替えたり、と準備を整えます。
本番30分前にはバックステージに降りて心の準備。
自分でも最近まで気付いていませんでしたが、どうやら神経がかなり細くなってるようで、些細なことで集中力が途切れてしまうことも。
バックステージの隅でAirPodsを装着し、練習パッドをパタパタ。
スティックとゴムパッドで発生するサイン波を聴いているとなんとなく落ち着いてきます。
ドラムを始めてから一番聴いている音だからかもしれません。マックスまで集中力を高めて、本番へ。
SEが鳴り、いっちーの後ろを駆けてステージへ。お客さんがマスク越しでも楽しそうにしてるのがよくわかります。よかったよかった。
本番が終わるとすぐに機材をバラします。
さっきとは逆の行程、PC周りの配線を整理し、各シンバルをしまってからハードウェアをバラす。場所をとる太鼓類は一番最後。
いつかインスタで見た、ニッケルバックのバックステージを思い出す。
アメリカNo.1ロックバンドのドラマー、Daniel Adairの楽器は全てライザー(車輪付きのドラム専用のステージ)に固定されていて、ライブが終わるとそのライザーごとコンテナにぶち込まれ、次の公演地に向かうべくそのまま飛行機に積まれていた。あまりにもアメリカン。
また別のタイミングでKornのバックステージも見たが、Ray Luzierのドラムキットは巨大なため二つのライザーに乗っている。つまり飛行機に乗せる時はドラムキットもキレイに真ん中から分かれる仕組み。
俺にもそんな日が来るのだろうか。笑うなぁ、飛行機から自分のドラムセットがそのまんま出てきたら。
機材を全て車に積み込み、一行はホテルへ。チェックインを済ませ各自自室へ。
「焼き鳥スミス・特製弁当」を頂き、やることもなくとりあえず衣装を洗ってみる。衣装はまんま同じものを2セット用意しているが、汗だらけの服をキャリーに詰めるのはなんだか気が引けた。
これでもまだ22:00前。
そういえば大阪の街をゆっくり歩くこともなかったなぁ、と心斎橋の方まで散歩してみることに。
秋の夜風が心地いいが、やはりどこの飲食店も明かりを落として真っ暗。路上には行き場を失くした人々が缶ビール片手にたむろしています。
ひとつアイリッシュパブを見つけますが、コロナを無視したあまりにも情熱的な雰囲気に圧倒され、すごすごと退散。
コンビニでビールを買い込みホテルへ帰宿。
この後、翌日の公演中に発覚した「汐碇、AM2:00まで続く隣室から流れてくるヒップホップにより不眠」事件が発生します。
名古屋E.L.Lでの二日目
翌朝、11:00のホテルのロビーに全員集合。インスタを見るに、真也さんはしっかりと早起きしてホテルの朝食を食べたらしい。
ホテルのおじさんにカードキーを返却し、一向は名古屋へ向かいます。
前日の疲れか、寝たり起きたりを繰り返して名古屋E.L.Lへ到着。とりやまさん運転ありがとうございます。
ハンサムな会場スタッフさんの手を借りベリースムーズに機材搬入。搬入出はステージの上手裏から行うのでこれまた楽チン。
前日同様、ハードウェアを組み立てステージ上にドラムキットを生成しスタンバイ。
いつも通り、サウンドチェックが始まります。
いつも同じが良いのか、いつも違うのが良いのか。
人によってそれぞれですが、僕の場合は「いつもと同じ環境、いつも違う内容」を心がけています。
イヤモニの中はライブハウスの特性に左右されないよう、自前の機材で一元管理しているため、現地PAさんに手心を加えてもらわずとも大丈夫なようにしてあります。
内容については、お客さんの具合・メンバーのコンディションによって左右されて当然、むしろ変わって然るべき、の姿勢です。
一流の蕎麦屋がその日の湿度で打ち水の量・質を変えたりするように、環境に適合して高い水準を保つ、そんな考え方が自分には合っているように思えます。
「音楽は、時間の芸術」といった師の教え。言葉で説明するのは難しいな。
サウンドチェックも無事終了。開場までの一時間で衣装に着替えたりウォームアップしたり、各々準備を進めます。
人数に比べたらかなり広い楽屋、道標のように靴やらTシャツやらが落ちてたり、置いてあります。
エベレストにはグリーンブーツと呼ばれる正体不明の遺体があり、そこを目印に登山を進めていくそうです。MOSHIMOの楽屋ではその道標を辿るとだいたいポチがいる場所に辿り着くことができます。
早々に準備を済ませ、階段を降りてバックステージへ。
暗がりのなか、たたずむ真也さんと談笑しているといっちーも登場。
「ライブ終わったあとエゴサしてると“真也さんイケメン!”のツイートは疎か、最近は“カッコ良すぎて反則!”とまで言われている(一瀬)」
「反則、ってことを真也さん“法を犯してる”ってことやん、そろそろ捕まるんじゃない?(高島)」
「捕まる前に真也さんが捕まえよう、次から“捕まえちゃうぞ”ってリプ飛ばして(一瀬)」
「“ぞ”はカタカナの“ゾ”ね、星マークもつけて“捕まえちゃうゾ☆”でいこう(高島)」と無駄話。本当の無駄話。
ポチが下りてきて本番5分前。SEが流れてステージへ、本番が始まります。
すべてを終えて
無事にライブ終了。
bluetoothスピーカーを持ち込み、「お気に入りの音楽を聴きながら、特別何をするワケでもなく、ベッドに横たわりただただビールを飲む」のが遠征時のホテルの楽しみなんですが、つい勢い余ってそこそこの音量を出してしまうことも。
コンクリの壁やし大丈夫っしょ、と思っていたらぜんぶ隣の部屋の真也さんに筒抜け。そうライブ中に告白されました。いやー、すんませんな。
前回ツアーからの変更点としては、ハイハットが「15" Mastersound」から「14" NewBeats」に戻りました。
前者は音量も大きくワイルドな音楽性にはピッタリ、加えて意外と複雑な音色を持っているのでそれはそれで面白かったんですが、多様性・凡庸性という意味では後者の圧勝。
こういうビートはやっぱりニュービーツが映えます。キングオブハイハットの名はダテじゃない。
スタッフさんの手を借りつつ機材を積み込み。カメラマンのタカギさん、会場スタッフさんにご挨拶をして乗車、一同東京へ戻ります。
連日お疲れさんでしたー、と車内。
二日続いた狂乱の日々から日常に戻るべく、iPadでキューブリックの「EYES WIDE SHUT」を視聴。
エロティックなシーンから始まるのをすっかり忘れて開始早々にビビる。後ろに座る真也さんに変に勘繰られぬよう、画面の向きに気を付ける。
倦怠期の夫婦、医者で夫のトム・クルーズが妄想に振り回される、いかにもキューブリック的な作品だと認識していたが、初めて観た高校生のころとはずいぶん違った印象を今は受ける。
穏やかな車内、大型トラックを追い抜いたり、追い抜かされたりして無事に1:30ごろに帰京。長丁場の運転、とりやまマネといっちーに感謝。
まずは倉庫に向かい機材を搬入。キャビネットを降ろしてその上にアンプを乗せて運んで、と迅速な作業。こちらも手慣れたもんだ。
そのまま事務所へ戻り、みんなとお別れ。
とりやま氏の運転で渋谷駅で下車。ここからタクシーに乗るつもりが、秋風が心地よく少し歩くことに。
残り24分のEYES WIDE SHUTを思い出し、iPad片手にウォーク。
物語終盤、富豪がトム・クルーズに詰め寄るシーンだ。
行き過ぎた欲求がバタフライエフェクト的に、誰かのテリトリーを犯してしまい、最期は自身の生活に魔の手が忍び寄る。
「常に感謝を」みたいな昨今の風潮はあまり好きではないけども、こう見せつけられてしまえばそれもつい肯定したくもなる。
分相応の幸せを目指せば傷付かずには済む。が、傷付く覚悟でなければ手に入らないものも、たくさんある。
パトロール中の警察官に目配せをし、タクシーに乗り込む。深夜三時。
あまり遠くへは行けませんけど、と前置きをする運転手さんに住所を告げる。滞りなく車は発進する。
後部座席のモニターに薄毛治療の広告が流れている。増毛もテレワークのシステムもこれまで必要だったことは一度もない、といつも通り「画面OFF」のボタンに手を伸ばす。
真っ暗な画面に映った自分をみて、ピンクのサングラスを付けたままだったことに気付いた。夜なのにどおりで変に明るいなぁと思ってた。
レンズに付いた名古屋の汗を拭きとり、ぼんやりしていると自宅前にコンビニに到着。
朝の五時前、白みだした外を見ながらビールを飲んで気絶するように寝た。
以上になります。
最後まで読んでくれてありがとうございました。
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大阪 📸 @nameless4645
名古屋 📸 @yusuke_mphoto
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