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遠い国

平素よりお世話になっております。高島です。

「せっかくだから入りなよ」

日がな肌を傷付ける遊びに興じている者の矜持、「肌を露出する際は現場のレギュレーションに従う」を厳格に守り続けています。

昨今はいささか風向きも変わりまして「訪日外国人も多いし、実際タトゥー入れてても別によくね?」、そんなスタイルの公共施設も多くなったように感じます。
繁華街のコンビニに足を運ぶとジオメトリックなタトゥーを施した外国人店員さんがおり、互いに「おっす…(無言)」と目配せする、そんなこともありました。

当時もそのような環境におりました。
映画「ショーシャンクの空に」(1994年)では仮釈放となったレッド(モーガン・フリーマン)が数十年ぶりに娑婆に出て、社会の変わりように驚き、そして混乱する様子が描かれています。

僕もレッドと同様に「当プールでは刺青・タトゥーのあるお客様でも入館可能です。」と急に言われましても「これで自由だ」と威勢よく上裸にはなれません。アンディ(ティム・ロビンス)よろしく。

同作ではレッドより前に仮釈放になった高齢の受刑者ブルックス(ジェームズ・ホイットモア)がおり、彼は様変わりした社会についていけず最終的に自死してしまいます。それぐらいセンシティブ。

二名ともスーパーの袋詰めという、あるのかないのかよく分からない小さな仕事から社会復帰を進めていきました。僕もそれにならってまずは「とりあえず半袖になってプールに入る」という小さな社会復帰を始めました。
ポケットにiPhoneが入ってることも忘れて。

僕は数少ない友人たちを恨みます。
どうして三時間も僕を放置して、誰も連絡をくれなかったのでしょうか。LINEでもなればポケットの異常事態に気付けたはずです。

Apple社も恨みます。
どうしてこういう時に限って一件もアプリの通知をしてくれないんでしょうか。いつもはしつこいぐらいに「交通機関への影響予想」「最新動画をチェック:バキ童チャンネル【ぐんぴぃ】」と通知してくれるじゃありませんか。

しかし自業自得、因果応報。刑務所がどんなに理不尽でも殺人事件を起こさなければレッドが投獄されることはありませんでしたし、ポケットにiPhoneを入れたのも僕自身。誰かを責めることはできません。

不定期に液晶が点滅する、奇妙な姿になったiPhone。しかしここで買い換えるなど蛮行、来月には新しいiPhoneが発表されることを僕は知っています。

iPhone16、なんと新たに物理ボタンが増えるそうです。同時期に提供されるであろうiOS18ではホーム画面のカスタマイズもより自由になるそうで。
テック界隈では「iPhoneは高いだけ、カメラ性能もチップセットもAndroid一強」が声高にいわれてますが構いません。何も考えずに使える、それがガジェットの本来あるべき姿です。

どうかあとひと月耐えていただきたい、不屈の男アンディ・デュフレーンのように忍耐強く、そしてしなやかに。

アンディ・デュフレーン(Andy Dufresne) - ティム・ロビンス

遠い国のことをいつも考えています。
そこでは僕の知らない言葉を操る人間がたくさんいて、みな揃って僕の知らない遊びに興じている。

その遠い国、かつては概念的なトーキョーであり、次第にそれが具現化されついに「東京」が自分の根城となった。それでもいつも考えているのは遠い国のこと。

そこで物理的に遠い国に足を運んでみた。
言葉こそ違うものの現地の人間が喜ぶこと、怒ることはだいたい僕らと変わらない。リスペクトと礼儀を持っていればもうそこは僕にとって遠い国ではない。
僕の知らない遊びはそこら中に散らばっていてあまり魅力的に映らなかった。遠い国はいったいどこにあるんだろう。

舞台に降り立ち言葉のようなものを発していても、何をしてても、どうしてもここが自分の街だとは思えない。
同じ表情、同じ恰好、同じ発想、甘い言葉を少し使えるからって我が物顔でそこらを歩き回り。僕は遠い国に行きたいのに見上げてみても空はちっとも高くない。

もしかすると遠い国は存在しないんじゃないだろうか。この世に存在しないから、見えないからきっと遠くにはあると信じている、そしてそう信じたいんじゃないだろうか。
見えているから相手を近くに感じる、そして近くにいるから相手を知った気になる。完全なる他人であるのに。

自分の知らない言葉、自分の知らない遊び、これが無尽蔵に発生してくれれば僕に遠い国は必要ない。
装置としての遠い国は他所に設置するわけにはいかないのでこれを自分にビルドする。アクセスするには行くのとは反対に落ちていく、街に文化にどっぷり沈んで乱数を発生させる。

そこまで知らない、を重視するならいい加減Androidを許容するべきだ、とも思いますが僕がAndroid使ってたらややこしいヤツだと思われそうじゃないですか。

以上になります。
それでは引き続きどうぞよろしくお願いいたします。

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