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【ふくろう通信01】こんばんは読書会

池内書房です。2024年3月23日(土)に第3回「こんばんは読書会」を西日暮里ブックアパートメントで開催しました。テーマはカフカの長編「審判」。参加者からは以下のような意見が出ました。

・主人公ヨーゼフKの逮捕容疑は何か。刑事訴訟なので政治犯ではないだろう。銀行員だから横領か。最高刑が死刑になる経済犯はない。ユダヤ人であること自体が罪であるという暗示なら、その後のヒトラー政権の政策を予言していることになる。ただ、カフカ自身は容疑の具体的な中身を想定していなかったのではないか

・主人公を逮捕する2人組は秘密警察か。令状を持っている様子はなく、通常の警察ではないようだ。が、秘密警察は政治犯を担当するので、おそらく違うのではないか。2人組のひとりはカフカと同じフランツという名前。いいなづけがいる(と主張する)点も同じ。自らを投影しているのだろうか
・作品全体の雰囲気が村上春樹作品に似ている。というより村上春樹がカフカの影響を受けている。主人公は奇妙な世界に足を踏み入れ、なぜか女性とうまくいき、助けてもらったりする。村上「1Q84」は冒頭でヤナーチェク「シンフォニエッタ」を聞いて異世界に入り込むが、ヤナーチェクは(カフカと同じ)チェコ出身

・主人公は銀行員という設定。金融業もユダヤ性を示唆

・死刑執行にあたり下着をとられる場面はイエスの処刑シーンを想起させる。イエスもユダヤ人

・法廷での人定質問で、主人公は「ペンキ屋か」(白水社版)「画家か」(新潮社版)と尋ねられ、「大銀行の第一支配人」と答える。原文(ドイツ語)で質問の部分は「Zimmermaler」という言葉が使われ、直訳すれば「部屋の画家」だが、グーグルで画像検索するとペンキ缶と長い柄のついたローラーを持つ人物のイラストが登場する。したがって「ペンキ屋」の方がより正確な訳といえる

では、また。

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