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認知症の母と沖縄移住 13 下見・家電の事前購入

下見には、引っ越しの準備に向けて、家電を事前調達しておくという重要なミッションもありました。

東京から沖縄への引っ越し便は、船のコンテナ移動のため、1週間程度かかります。東京で荷出しをすると、しばらくはベッドも布団も冷蔵庫もIHクッキングヒーターも洗濯機もない状態が続きます。

この1週間をどう過ごすか。国内旅行や台湾旅行を楽しむ人もいれば、沖縄の新居の近くに宿を取る人もいるでしょう。私たちは、何もない新居に入って、荷入れの準備、具体的には窓の遮光シールやカーテンの取り付け、壁の装飾をすることにしました。

寝る場所は、自立式のハンモックを二つ持っており、ハンモックに揺られながら寝ることに慣れているうえに、5月の沖縄であれば、体にシーツ1枚かければ十分なので、心配はいりません。

問題は飲食をどうするかです。1週間毎日、弁当と外食を組み合わせ、コンビニでお茶やコーヒーを買ってもいいのですが、高くついてしまいます。下見に9日間かけて、予算もそれなりに使っているので、そろそろ引き締めが必要です。

コロナの問題もあります。非常事態宣言の解除後の引っ越しを予定していましたが、外食するよりは家の中で食べた方が安全そうです。

冷蔵庫と電子レンジが購入から20年を迎え、どちらもまだまだ現役バリバリでしたが、電子レンジは、ふたの締まりが悪く、温めの途中で止まることもあったので思い切って、両方とも買い直すことにしました。

引っ越し初日から冷蔵庫があれば、飲み物やそのまま食べられる食材の保存が利きますし、電子レンジがあれば、お湯を沸かして、インスタントコーヒーを飲むこともできます。

家電量販店に足を運ぶと、すぐに意中の冷蔵庫が見付かりました。10万円台で460リットル、製氷機も付いていて、値段と機能のバランスが取れています。壁際にずらりと並んでいる30万円台の冷蔵庫と比べると、お手頃感があります。

さて、いざ購入の段になって、困ったことが起きました。現時点で購入し、2か月後の引っ越し翌日に配達するという要望は簡単に通ったのですが、店内に並んでいるのは展示品が大半で、店頭販売限りと書かれている僅かな商品を除いては、入手不能だというのです。

よくよく聞いてみると、店内だけでなく、県内の倉庫でも在庫切れが続いており、入荷まで3か月以上待たなくてはならない。そういう状況でした。コロナの影響で中国の工場が完全にストップしており、機械の部品や完成品が入ってこなくなって、極端な品薄状態になっている……。そのことを計算に入れるのを忘れていました。

3か月後というと、6月の中旬ではありませんか。引っ越しから1か月以上も冷蔵庫なしで過ごさなくてはいけない段取りです。自分たちとしては、考えうる限り早めの行動を取ったつもりでいましたが、コロナの工場停止の影響下では、2か月前の購入というのは決して早くはなかったのです。

こうなったら1軒目での購入を諦め、県内の量販店にローラー作戦をかけるしかない。意を決して、グーグルマップでバスの便を調べて、2軒目の量販店に乗り込むと、先ほど購入を決意した冷蔵庫が、県内の倉庫に1個だけ残っていました。

これで入居翌日から冷蔵庫が使えることになりました。幸運にも、電子レンジは在庫に余裕があり、残るは、加熱調理器具です。

新居には、ガスレンジ台はあるものの、レンジそのものは付いていないので、ガスレンジか、IHクッキングヒーターか、どちらかを購入しなくてはいけません。

私たちは長年、IHに慣れ親しんできました。40代は間もなく、自分たちの介護が始まるお年頃でもあります。火の消し忘れによる失火のリスクを考えると、断然、IHにしたいところですが、魚焼きグリルの付いた本格的なIHを導入するには、ガス管を外して専用の200V電源を設置する工事が必要となり、かなりの出費が見込まれます。

大家さんに工事の許可をもらうところまではスムーズに行きましたが、果たして金を払ってでも失火のリスクを減らすか、失火のリスクを取っても、金を守るべきか。

家電量販店で、IHの料金と工事費、そしてガスレンジの費用を比較しようということになり、IH設置の工事費用を尋ねてみると、2万7500円でした。

仮に退去時に大家さんにガス菅への原状回復を求められると、往復で5万5000円。沖縄県内で引っ越したとして、引っ越し先が再び、ガスレンジだった場合にはもう一度、電源工事をしてさらに2万7500円……。

持ち家を買うつもりはないので際限なく、設置と原状回復のゲームが繰り返されることになります。

本格的なIHの導入はあっさりと見送ることにしました。残るは、魚焼きグリルの付いていない簡易的なIHにするか、それとも腹をくくって、十何年ぶりにガスレンジに逆戻りするか。
結論は……出ませんでした。簡易IHも、ガスレンジも在庫がたっぷりあったので、引っ越し後に再度、家電量販店を訪れて決めることに。

最終的に購入したのは簡易IHでした。火事の心配がないだけでなく、値段も1万円台と非常に手頃で、しかも、沖縄はプロパンガスの料金が高いと聞いていたので、月々の光熱費を抑えることができる点でも魅力的でした。

魚を焼く時は、パン焼きに使っているトースターを活用すればいいから――。最終的に背中を押したのは、妻の一言でした。

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