エコロッジ概念の日本への応用に向けた予備的考察(7)

3.2.2 National Geographic Unique Lodges of the World[1]

2015年、ナショナルジオグラフィック協会によって「National Geographic Unique Lodges of the World」(以下、Unique Lodgesという)というワールドクラスのホテルコレクションがスタートしました。

コレクションに登録されるための審査基準は以下の通りです。

  • 持続可能性(自然や文化を保護、向上させているか)

  • 関わり(地域の人やコミュニティとつながり、利益をもたらしているか)

  • 本物性(その場所の本当のユニークさを明らかにしているか)

  • 優秀さ(ワールドクラスのゲストサービスを提供しているか)

  • インスピレーション(ユニークで充実した体験を提供しているか)

また、ナショナルジオグラフィック協会は「持続可能な観光の柱」として以下を定めており、審査基準同様に施設の取り組みを評価する際に用いられます。

  • 自然遺産の保護(生物多様性の保全・生息地の修復)

  • 文化遺産の保護

  • 地域社会への支援

  • 環境に優しい慣行

同コレクションでは、持続可能性や真正性、卓越性へコミットしている世界各地の非日常的な場所にあるブティックホテルが集められており、上記基準に基づいた厳格な評価プロセスを経て審査が行われます。選定された施設は、文化遺産や自然遺産の保護をサポートし、持続可能な手法を取り入れながら、優れたゲスト体験を提供しています。また、そうした体験を通して、ゲストと地域を結びつけると同時に、それらの場所や貴重な資源を次の世代に引き継ぐための保全に貢献しています。登録施設は高価格帯の施設が多く、快適性のある設えが施されています。持続可能な面としては、多くの施設で再生可能エネルギーを利用した独自のソリューションが考案されているほか、すべての施設で地元産の食材を優先し、地元コミュニティに経済的・社会的利益をもたらしています。新型コロナウイルスの影響により、同コレクションは2020年 12月31日をもって終了しましたが、終了時点では35か国63の施設が登録されていました。アジアからはマレーシアやモンゴル、ベトナムなど5つの国で登録がありましたが、日本の登録は0でした。

3.2.3 Regenerative Travel[2]

2019年、持続可能からさらに一歩進んだ再生可能な旅行を推進する「Regenerative Travel」が旅行の専門家であるAmanda Hoとメキシコでブティックホテルを所有するDavid Leventhalの二人によって開始されました。「再生」に強いコミットメントを持ち、最高レベルの社会的・環境的影響に注力しているホテルを支援するコミュニティとして構築された同コレクションは、ベストプラクティスの共有、データ収集と分析による説明責任を促進し、多様な視点を最前線にもたらすことによって、各ホテルの継続的な共進化を働きかけると同時に、ゲストがそうしたリジェネレイティブなホテルを見つける手伝いをしています。登録施設は「Regenerative Hotels」と称され、各ホテルは地元の人々や自然文化によって形作られ、地元の経済に貢献し、その場所の本質を明らかにする特別な体験を生み出すことを大切にしています。食べ物やデザインからアクティビティやアメニティまで、その場所のユニークな性質によってゲストの経験を豊かにしています。メンバーへの登録に際しては、炭素使用量、従業員の幸福度、魅力的なアクティビティの有無、地元の食材調達割合など、環境および社会への影響に関する指標に基づく審査が行われます。Regenerative Travel加盟ホテルが体現している基準・スタンダードとして公表されているのが以下の6つです。

  • 独立した所有・運営(ユニークなホテル体験、運営の自主性と独立性、透明性の高いガバナンスと事業構造)

  • 地域への敬意(自然環境、歴史、文化、地域社会と調和した運営の実施)

  • 真のホスピタリティの提供(自己成長・自己変革を促す本物性の高い体験を提供するためのあらゆる努力の実施)

  • 包括的・平等主義的(旅行者、スタッフ、コミュニティのメンバーなど全ての人に対する広い受入れ、スタッフへの安全で快適な労働環境と公正な賃金・福利厚生の提供)

  • 責任と倫理を持った行動(地域社会や生態系を考慮した事業全体としての健全な倫理観の体現)

  • 地域および地球の生態系の尊重(すべての意思決定における地域および地球規模での生態系への配慮)

  • 再生可能であることの価値と手法の伝承(再生可能という価値と手法をすべてのステークホルダーへの共有、地域社会への説明責任など実践を継続的に共進化させるための透明性の確保)

現在は23か国29施設が登録されています。アジアからはインドネシア、マレーシア、ネパール、ブータンの施設が登録されており、日本施設の登録はありません。

3.2.4 Beyond Green[3]

2020年11月に独立系ホテルチェーンであるPreferred Hotel Groupがサステナブルホテルブランドとして「Beyond Green」を発表しました。「素晴らしいゲスト体験を提供する行動と影響を通じて、持続可能な観光のリーダーシップを発揮すること」を目標としたコレクションとされています。加盟条件としては、サステナブルツーリズムの3領域をベースとする「基本を超えた環境への配慮」「自然と文化遺産の保護」「地域社会の社会的・経済的な発展への貢献」の3つにおいてリーダーシップを発揮していることや、世界的なサステナブルツーリズムの基準と国連の持続可能な開発目標に沿った50以上の指標を達成していることが挙げられており、サステナビリティを重視していることがわかります。なお、上記50以上の指標については非公表となっています。2022年11月に新たに3軒の施設が加盟し、現在は合計18か国26軒のホテル、リゾート、ロッジが登録されています。日本の登録はなく、アジアからの登録はモンゴルのみです。

[1] National Geographic Unique Lodges of the World:

https://www.nationalgeographic.com/expeditions/unique-lodges-of-the-world/(2020年12月21日閲覧、2020年12月31日閉鎖)

[2] Regenerative Travel ホームページ:https://www.regenerativetravel.com/(2023年1月15日閲覧)

[3] Beyond Green ホームページ:https://staybeyondgreen.com/(2023年1月15日閲覧)

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