「らせんオジサン」のZUMBA

 今日は月曜日、カーペンターズの『月曜日と、雨の日の朝は』を思い起こさせる土砂降りの雨だった。
 月曜日のZUMBAは最も激しく、切り返しと捻り・クネリが多いクラスである。インストラクター以外、まともにできているのはイーズカしか居ない。
 レッスンの最初にアイソレーションの説明があった。彼女のレッスンは、胸のみの旋回、腰だけの回転、ヒップを上下に振る動きなど単一部位を独立して動かす内容が多い。
 「アイソレーション」とは、それらの独立部位だけをどのようにして動かすか、というトレーニングだ。
 ダンサーは必ず毎日やっているが、パントマイム師などはこれだけで芸にしている。これを極限値までやると、虚空に浮かぶ一点を、ありもしないのに客に「在る」と思い込ませることができる。
 イーズカはこのアイソレーションが得意である。イスに長時間座ったり、パソコン作業を長く続けるとカラダが凝ってしまう。そんな時にもアイソレーションは役に立つ。
 凝る部位はいくつかの筋肉や神経に跨るので、それをひとつずつ別に動かすと懲りが解消される。
 ラテンダンス系のクネル動きは、アイソレーションそのものである。イーズカの筋肉は放っておくと、松井や清原のようになってしまう。父も屈強で分厚い胸板を持っていた。全身が筋肉の塊だった。
 しかし、そんな筋肉だらけのカラダはケガをしやすい。固い筋肉はほとんどの場合役に立たない。見かけ倒しで重いだけである。目指すべきは「イチローの肉体」である。あれほど柔らかい筋肉は見たことがない。
 なおかつ瞬発力がスゴイ、全身どの部分もムチのようにしなる。だからライトの奥地から、レーザービームのような返球でホーム直前のランナーを刺せる。
 長く運動を続けたかったら柔らかい筋肉をつけるしかない。だからイーズカは30年以上もラテンダンスを続けて来た。
 肉体のケアは年を取ってから始めても手遅れである。まだ筋肉が柔らかく、どちらへも進める段階で手を打たないとダメである。
 年を取ってから肉体改造に目覚めた人間は、だいたい大ケガをする。カラダの扱い方を知らないのに無理をするから、致命的な損傷を与えてしまう。
 若い頃の無理が祟って不調をきたしたら、もう死ぬまで大人しく暮らすしかない。それ以外に生きる道はない。バカが賢くならないように、歳とって痛めてしまった肉体は元には戻らない。

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