21世紀には、広告会社など要らない

 これは1980年に社会に出て以来、広告と販売促進を業務としていたイーズカの持論である。
 もう40年を広告業界で過ごして来たが、広告業界は絶滅寸前の恐竜のようである。
 デンツーを筆頭とする広告代理店とは、電波法で規制されていたテレビを舞台に荒稼ぎしてきた。限られた時間とスペースが利益の源泉であり、日本のテレビを作ったとも言えるデンツーは圧倒的な支配力を誇っていた。
 第4代目社長であった吉田秀雄氏が作ったとも言えるデンツーは、極めてユニークな会社であった。
 イーズカも学生時代「自分が働くなら、デンツーしかない」と思っていた。新卒時の面接では不採用だったが、中途採用の契約社員で潜り込んだ。
 バブルの最末期だったので、すべてか異常であった。しかし社員のモチベーションは高く、「マスコミなど、俺たちが食わせてやっている」という自負心があった。
 悪どいことも平気でするが、セコイことはやらなかった。やる必要も無かった。
 しかしバブル崩壊以降、状況は激変していった。1995年にウィンドウズが発売されて、インターネット社会が始まった。
 最初は「何が変わったのか」良く分からなかった。2000年に米国でITバブルが崩壊すると、本当の「インターネット企業」が登場してきた。
 そのフロントランナーはグーグルだった。
 最初は「とにかく検索が速い」だけの企業で、現在の姿は想像できなかった。
 デンツーもそれなりに研究しており、勉強会などすると「夢のような現実」が語られていた。それがデンツーにとって「地獄になる」とは思いが及ばない。
 「放送と通信の融合」というのが、デンツーのドル箱であるテレビの地位を急降下させた。
 インターネットというのは、元々はアメリカの危機管理のための軍事技術である。ピラミッド構造の組織は、頂点を叩かれると全体が破綻してしまう。しかし「分散型」にすれば、攻撃された部分以外は生き残る。
 ある意味「きわめて民主的なシステム」である。
 すべての情報が権力者に捕まれるが、反撃ルートも多数ある。権力の一極集中に対するアンチテーゼが含まれている。
 日本はこの手の思想が苦手である。故にネット時代に必然的に衰退の道を転がり落ちた。何の技術革新も無く、新しいサービスなど何ひとつ提供できていない。
 企業の業務改善は進まず、旧態然たる「サラリーマン会社」が生き残っている。
 政治も経済も行き詰まり、政治家も経団連の重鎮もバカが居座っている。
 オリンピックだの、カジノだの、万国博だのという20世紀の遺産にしがみついている。
 こんなモノに、もはや未来は無い。局所のコンテンツとしては存続するが、「新しい価値も豊かさ」も実現できない。
 デンツーはトップランナーなので、その危機に直面している。しかし経営陣の判断は、税金で実施される公共事業に寄生する事だった。
 「ブザマなり、デンツー」である。
 21世紀は、デンツーなど必要としていない。醜態を晒す前に、とっとと退場してもらいたい、と願っている。

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