都心のエアポケット

 午後に歯医者に行き歯石除去を完了した。その近くにレンタルバイク屋があるので顔を出した。
 昨日はバイクの輸送で店を閉めていたようだ。
 「景気はどうですか?」と尋ねると、「ウチは都心だからサッパリだけど、出前専門展開にした飲食店から。「3輪のキャノピー車を借りたいという要望が殺到して、そちらの対応が忙しい」とのことだった。
 個人ユースのレンタルも多摩川から外側の周辺部では普段より多いようだ。「自粛なんか関係ないですね」と断言していた。
 GW最中のレンタルは少ないらしいが、周辺部の店舗はてんてこ舞いなので、バイク輸送と応援が大変だという。
 まあ局所の業界話は聞いてみないと分からない。
 昨日のスズキとホンダの直営店の話をしていたら、「いまやバイクは超高級品になっているでしょう」と笑っていた。
 その通りで、100万円台など当たり前で200万円を超えるバイクのオンパレードで、実際には200万越えの高級車から売れていくらしい。バイクマニアは趣味人の金持ちなので、安いバイクなんか見向きもしないらしい。
 イーズカも40歳を越えた頃、USホンダの初代ワルキューレを200万円以上だして買っていた。完璧な輸入車なので、7月に注文して、納車は11月3日だった。
 一般的なバイクなど何の興味も無かった。
 しかし63歳の今は、そんなカネは無い。しかし欲しい。そんな話をしていたら、レンタルバイク屋が「イーズカさん、お好きなバイクを試し乗りしてください。気に入ったバイクや、さらに乗りたいバイクがあったら言ってください。会社に掛け合ってラインナップに入れますから。」と言ってくれた。
 素晴らしい。イーズカはしばらくはレンタルバイク屋で思う存分に楽しむ。
 むかし、この店舗にイタリア・ホンダの真っ赤なバイクが販売車として置いてあった。まさにイタリアンレッドで細部のデザインが信じられない位にオシャレだった。
 ドゥカッティやモト・グッチなど乗りたくも無い。扱いが面倒で故障ばかりである。あんなものは都会に住む「田舎者」しか乗らない。言い訳しながら、自慢する愚か者のバイクである。
 レンタルバイクにホンダの「アフリカ・ツイン」もあるらしい。「なぜツインなのか?」と聞いたら、「2気筒です」という返事だった。
 連休明けには、ホンダの「アフリカ・ツイン」1100ccか、ホンダCBR650を借りる。レンタルバイク屋が「両方を用意しておきますから、好きな方をどうぞ」と言ってくれた。
 どちらもバケモノ・バイクである。サーキットは都心にする。いまや皇居周辺など山手線の内側がガラ空き状態である。人もいなければ、クルマも居ない。F1・モンテカルロ・グランプリのように市街地でレース走行が楽しめる。
 六本木は坂の町なのでオモシロイ、神谷町や増上寺まで遠征する。神楽坂の新潮社や、音羽の講談社界隈も楽しそうだ。新国立競技場の絵画館周辺はサーキットそのものである。オリンピックなど中止に決まっているから、思う存分に楽しむ。
 むかしホンダ・ワルキューレを買った時は、都心のガラス張りのビルの周辺を走り、窓に映る真っ赤な革ジャンの自身の姿に見惚れて「わたしは、何と美しいのだろう」と酔っていた。ホントに自分を愛していた。バカもここまで来ると立派である。
 人脈には恵まれているし、「豊かさとは、こういうもんだ」と確信している。GWが明けたら、これ見よがしに都心を、大型のバケモノバイクで疾走する。

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