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ウマ娘プリティーダービー Season 2 第13話感想

良かった。良すぎた。もちろん全話良かった。最終話に至るまでの丁寧な作り込みがあってこそだと思う。

勝負服

アニメ版トウカイテイオーは一度目の骨折から復帰したタイミングで勝負服を赤系変更する。そして最終話である有馬記念で初期勝負服 (白) に戻した。

そもそも前期の最終話で本 13 話のネタバレ描写があったのでおそらく初期勝負服に戻すだろうと予想していたが、純粋に初期勝負服が好きなので個人的には嬉しかった。

ではなぜ一度変えて、戻したのか?

それはアニメのトウカイテイオーは初期勝負服を来たレースで負けていない。つまり骨折後に (色々と理由を加えて) 勝負服を変更したのも最終話に向けた伏線だったと考えられる。ということをニコニコ動画のコメントで気付かされた。商業的な理由もあるかもしれないが、それでも、だ。

第 4 コーナー

史実のトウカイテイオーは第 4 コーナーで鮮やかなコーナーリングを決めて、最終直線で好位置につける (田原騎手の神騎乗)。

しかしアニメでこの第 4 コーナーは描かれなかった。

視聴直後は「あの第 4 コーナーはカットか……」と少し残念に思ったが、今はカットして正解だったな、と思っている。

実際のレース映像では第 4 コーナー付近で一瞬 3 番手集団にアングルが移動する。そして再度先頭集団にカメラを戻したときにはすでにビワハヤヒデとトウカイテイオーのマッチアップしていた。

尺の都合でカットしたのかもしれないが、「いつの間にかトウカイテイオーが抜け出してきてビワハヤヒデに追いすがる」の演出として最高だと思う。

ビワハヤヒデ

この最終話において、終始ビワハヤヒデにセリフが無い。せいぜい「!?(驚き)」ぐらい。

ウマ娘は特定のウマ娘の応援しているように見えないようにかなり演出に気を払っているように見える (チームメンバー同士なら多少の贔屓はある)。これは実際の競馬実況の特定馬に肩入れせずに公平に実況する慣例に倣ってのことだろう。

この最終話はトウカイテイオーの奇跡の復活を描いているため、状況的にビワハヤヒデの立場が悪くなってしまう。

あの日、ビワハヤヒデを純粋に応援していたファンもいたはずだ。なのでアニメの演出とはいえ、ビワハヤヒデを悪役にさせたくはない。そんな葛藤の末、ビワハヤヒデに黒い感情を向けさせないためにあえてセリフを無くしたのではないだろうか。

喋らないかわりに、レース後は柔らかい表情となっているし (おそらく岡部騎手のテイオーに差されたのなら仕方ないという発言が元になっていると思われる)、ウィニングライブも神作画で超可愛く描かれている。

絶対

トウカイテイオーはレース直前の控室で、シンボリルドルフに「絶対」について問いを投げかける。シンボリルドルフといえば

「競馬に絶対は無いが、その馬には絶対がある」

というフレーズであまりにも有名だ。アニメで直接的な血縁表現は無いが、トウカイテイオーがシンボリルドルフに「絶対」を問うエモさたるや。

一年振りのレースで「絶対」に勝てないと思われているテイオー。しかし競馬に「絶対」は無い。だからこそ「絶対」に勝ちたい。

レース中、他のライバルも「絶対」を思う。しかし最後のスパートでトウカイテイオーは「『絶対』はボクだ!」と断言する。Machico 氏の熱演も相まって涙が決壊すること間違いなしなので、是非アニメを観ていただきたい。

1 話 <-> 13 話

後から気づいたのだが、この最終話のレースは 1 話と対比する演出になっている。

特に「『絶対』はボクだ!」と叫んだ直後にテイオーが顔を歪めて踏み込むシーン。第 1 話では余裕綽々といった表情だったが、最終話では歯を食いしばるほどに必死な表情になっている。同様にチームメイトの応援や追いすがるようなフォームも比較してみてほしい。

行け

Season 2 に限らずだが、ウマ娘では「行け」という表現が多く使われる。特に勝負を決する最終局面で。確かについ叫んでしまいそうなセリフではある。

この最終話でも最後の直線、特別な想いを持つ者たちが口を揃えて「行け」と叫ぶ。「行って」「お願い」や「頼む」ではなく「行け」と。第 8 話でもミホノブルボンがライスシャワーに向けて「行け、ライス」とつぶやくシーンがある。

1 期はそれほど気にならなかったが、Season 2 はかなり意識して使い所を選んでいる気がする。つまり何かしらオマージュ元があるのでは無いか。

JRA はときどきブランド CM を作成する。いずれもかっこいい CM ばかりなので機会があれば是非観ていただきたいのだが、その中に「a beautiful race」という CM がある。

公開期限が過ぎてしまったためか今は視聴できないのだが、その CM の中で「行(ゆ)け」というフレーズが使われている。

競馬愛の塊であるウマ娘スタッフがこの CM を知らないわけがない。おそらく「行け」というセリフはこの CM をオマージュ・リスペクトして多用しているのではなかろうか。

ちなみにルドルフは「行け!走れ!」と「走れ!」を加えているが (二回目は行け!行け!)、おそらく Season 2 第 2 話でテイオーがライバルたちに向けて叫んだ「行け!走れ!」を意識した……と思う。

いつか私も

ウィニングライブの観客席で「いつか私も――」と心の中でつぶやくキタサンブラック。視線の先にはトウカイテイオー。

ここでセリフは止まっているので後は自分の勝手な想像なのだが、「トウカイテイオーさんのようになりたい」と続いたのではないだろうか。

先ほどブランド CM に言及したが、そのブランド CM には特徴的な別のフレーズがある。

あの馬のように、ボクはどこまでも自分の戦い方を貫いていきたい。
あの馬のように、強くありたい。挫折しても這い上がってくる、そんな強さを。
あの馬のように、勇敢でありたい。重圧も恐れず、摩擦にも怯まず。
あの馬のように、ボクは悠然と勝負の一瞬を待っている。

どうだろうか。いずれもトウカイテイオーそしてメジロマックイーンに当てはまると思う。

アニメのキタサンブラックはトウカイテイオーに憧れているが、もしかしたらトウカイテイオー以外に夢を見たのかもしれない。だからあえて曖昧にして、その先は視聴者に委ねたのかもしれない。

TM 対決再戦

何年後かも明かされていないがマックイーンは繋靭帯炎を克服し、おそらくどちらもまだ現役。そして誰も見ていないコースで二人でひっそりと再戦の約束を果たす。芝 2,400m。左周り芝状態良。結果を知るのは二人だけ。

自分はこれ以上無い理想的な演出に震えた。二人がターフを走っていることに意味があり、それだけで尊い。

最高の夢を見せてくれたウマ娘スタッフには頭が上がらない。

最後に

3 期でも OVA でも良いので何かしら新作おなしゃす!!!!

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