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−生成り色− 主張の弱い控えめ電子レンジ

ぼくの実家の電子レンジは、たぶん使い始めて30年は経っている。

1,2年前から、さすがに衰えが見えてきた。
温めること自体は何も問題ないんだけど、温め終わった時のアラームが非常に小さいのだ。これのために「蚊の鳴くような」という形容があるのかと思うくらい。

文字では伝わらないと思うけれど、あえて伝えようとすると、
普通の電子レンジが「ピ!!ピ!!ピ!!ピピ!!!」だとしたら、
うちの電子レンジは「…ピ……ピ……ぴぃ……」。

はじめは、なんやあったまったならシャキッと知らせてくれんかい!と思っていたけど、最近はこの電子レンジくんのことがなんだか愛おしく思えてきた。
「あのぅ、お忙しいところスイマセン……温め終わったんですけど、、取り出すのはお手すきのときで大丈夫ですよ……!」
って言ってるみたい。

ぼくも常に他人のことを気にしすぎて自分を主張できないから、電子レンジくんにとても親近感を抱く。

電子レンジくん、きっとほんとは、誰かに見守っていてほしいんだよね。

今度から、きみが温めてくれている間は、ぼくもきみの前でぐるぐる回って、温め終わったらすぐに取り出してあげるね。



【生成り色】きなりいろ
染色/漂白していない、生地そのものの色。
飾らない控えめな電子レンジくんにぴったり。



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