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日本版人権デュー・デリジェンス法案の概要について

2023年6月15日に開催された人権外交を超党派で考える議員連盟(人権外交議連)総会において、日本版人権デュー・デリジェンス(DD)法案の方向性について承認されました。
国際人道プラットフォーム(IHP)は、人権外交議連のコーディネーターとして、人権外交議連内のワーキングチームとともに日本版人権DD法案の方向性について議論し、この法案概要の作成をサポートいたしました。

こちらが人権外交議連総会で承認された日本版人権DD法案の概要資料です。

日本版人権DD法案は、国連の「ビジネスと人権に関する指導原則」や、2022年9月に経済産業省が策定した「責任あるサプライチェーン等における人権尊重のためのガイドライン」を受けて、立法により、事業者に人権DDの実施を義務付け、国際的な人権尊重に資することを目的とするものです。

日本版人権DD法案の概要について

立法によって事業者に対して人権DD(人権尊重取組)の実施を義務付けるにあたり、次のようないくつかの論点が存在します。
①対象となる事業者の線引き
②対象とする人権リスクの種類
③人権DDの実施範囲(サプライチェーンの範囲など)
④違反時の制裁など

こうした論点のうち、日本版人権DD法案の概要では、すでに人権DD法を有する各国の法律の内容や、制定にいたる議論を踏まえて、次のように整理しています。

国立国会図書館による、諸外国の人権DD法の概要資料はこちらです(2023年4月21日時点)。


①全事業者といわゆる大企業との間で人権DDの実施義務を区別し、大企業に対しては、毎年の人権尊重取組の実施状況についての届出を求めています。
②人権リスクについては、強制労働や児童労働の問題に限らず、国際的に認められた人権と、各国の法令で定められた権利自由の侵害を広く対象にしています。
③人権DDの実施範囲は、事業者のサプライチェーンとして、取引の上流、下流の全てを対象にしています。もっとも、いわゆるバリューチェーンまで含めることにはしていません。
そして、④制裁の手段については、事業者の人権尊重取組の実施が著しく不十分であるような場合は、経済産業大臣の名で必要な措置をとることを勧告し、その勧告に従わなかったときはその旨を公表できるとしています。これは、人権DDの不実施、不十分な実施に対して直接罰則を科さないことで事業者への一定の配慮をするものです。
しかし、そもそも人権尊重取組の実施状況の届出が形式的になされなかった場合には罰金を科すことを内容としています。


日本版人権DD法は、今後各政党内でも議論され、法案として作成され、提出に向けた活動が進められます。
IHPは、今後も人権外交議連のサポート等を通じて、人権デュー・デリジェンスの法制化への活動など、国際人道に関わる活動を続けていきます。

本件に関するご質問や、IHPの活動にご関心をお持ちの方はお問合せフォームからご連絡ください。

文責:野瀬健悟(IHP事務局長・弁護士)



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