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【書評】いい人間関係は「敬語のくずし方」で決まる

さて、先日新刊案内をいただいた『いい人間関係は「敬語のくずし方」で決まる』(藤田 尚弓 著) を入手したので、著者母校のパイセンとして評してみよう。


敬語のくずしは特別なことではない。多くの人は、ほぼ実行していることだ。だがその行動は「そろそろ堅苦しい会話でなくてもいいかな」という、個別の経験則に基づくタイミングだ。
タイミングがハマれば良いが、外せばそれまで築いた関係は敬語以上に崩壊する。本書は著者の「振れ幅の大きい人生」と、コミュニケーションの研究家としての膨大な蓄積から敬語のくずしのタイミング、運用の「最適解」を求めた実用書だ


言語学やコミュニケーションの研究書ではないから、読者が想像しやすい実生活のシチュエーション別にケースが並べられている。ページを繰りたくなる絶妙な構成だ。
著者を知る者として、このケースの並びは、中盤以降は先に進むほど(母校の先輩、久しぶりに会う親戚、合コン、PTAなど)著者のキャラクターと実生活に近づいていくようになっているのも興味深いところだ。

末尾では時代の要請とも言うべきオンラインでのケースに触れてはいるが、ほとんどのケースはリアルでのコミュニケーションを前提としている
感染症の拡大で様々な制約に縛られる今の時代に実用を意識して著された一方で、コミュニケーションの自由を一日でも早く取り戻したいという著者の渇望と共感の希求が無意識に現れた一冊だと思っている。


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