見出し画像

4周年によせて

一般社団法人異言語Lab.を立ち上げて4年目に入った。

謎解きゲームに感銘を受け、たまたまろう者だったことから、手話を使った異言語脱出ゲームを創ってしまった。一般社団法人を立ち上げてしまった。「~してしまった」の感覚がしっくりくる。だからなのか、わたしは経営やチーム体制、戦略を意識し始めるのが、遅かったように思う。

一年目、本業との両立で、泊まり勤務明けや休みを使って目の前のイベントを無我夢中で制作していた。お金は気にせず、猪突猛進、である。
1年経った後に、確定申告の時期が来た。会計のイロハも知らず、徹夜でExcelで作った年間収支書を、とある税理士さんに持って行った。「これはただの紙切れです、まずは会計アプリをダウンロードしてください」と税理士さんに淡々と言われた。「会計アプリとExcelとどう違うのか?」と一瞬頭をよぎったが、聞かないことにした。

二年目、本業と異言語Lab.の両立で疲労気味のわたしを見かねた上司が「あなたがやることは異言語Lab.で社会を変えることだ。あなたにしかできないことをやりなさい。」と背中を押され、非常勤にしていただいた。謎公演を作ることに無我夢中で6作品は創ってた。周りのことはわき目もふらずに制作し続けることでわたしは必死だった。とある会議で、その他の大勢のスタッフの気持ちを代弁したかのように、わたしの一番近くで携わっていたスタッフにぶち切られた。チームで相談して進めろ、戦略的に考えろ、と。

三年目、コロナ禍の真っ最中、若いスタッフを積極的に加入させ、経営戦略や広報、謎制作、推進など役割体制を決めた。それぞれのやることがくっきりしてきた。自分の中で報連相、スタッフに意見を聞くことを意識した。コロナでやれることは限られていたが、トライ&エラーを繰り返し、スタッフが主体的に関わる土壌が育ち始めた。ああ、こういうことか、あの頃のブチ切れたスタッフの言葉の意味が分かった。

そして四年目。その11年間続けた本業も退職にし、異言語Lab.に全力を注ぐことにした。
それぞれの部門・プロジェクトには、例えば、経営・宣伝・謎制作と、それを近いことを本業にしている方に来ていただき、またその方よりノウハウを教わり、どんどん吸収し、主体的に活動をしていける体制を意識して配置している。気が付いたら、今年度は33名のスタッフが集まった。毎晩、オンライン会議が開かれている。歯車がようやく四年目で回り始めた気がする。

わたしが物事の本質を理解するするには、やってみながら、作ってみながら、初めて分かることが多い気がする。まずはやってみよう精神の方が性に合っているようだ。
学ぶことがまだたくさんある。よくわかってないことがまだたくさんある。なにが正解かわからない。わたしはスタッフに教わりながら、みんなと試行錯誤しながら泥臭くやっていくしかない。

異言語Lab.は、スタッフひとりひとりが、視覚言語が音声言語と同様に普及する未来、異言語コミュニケーションを通して伝え合うことの喜びが広がった未来を、見据えている。

そのためにやることは2つ。
①文化の醸成の場を創る。
異言語Lab.は手話という言語・ろう者の文化を、エンタメとアートの両輪から育てていく実験の場である。
その文化醸成の過程で生まれた遊び、面白さを共有し、議論し、生まれたものをプロダクトにしていく。
②エンタメ、アート、教育、テクノロジー、メディアの力を使って、小さなコミュニティ、地域、全国、世界へと、様々な人に「異を楽しむ世界」を体験していただく。

「失敗してもいいからやってみよう。たくさんの人に体験してもらい、ブラッシュアップしよう。自分が創りたい世界を創ろう。やればやった分だけ価値が増し、力が付く。」

わたしは、スタッフにそう呼びかけている。可能性を信じて作り、たくさんの人に見てもらい、ブラッシュアップし続けていれば、いつか社会に触れる時が来る。
異言語脱出ゲームは、まさにそうやって大きくなったプロダクトなのだから。
ひとりひとりのアイデアが、どう育ち、どう形になり、どう社会に触れるか。それが楽しみで仕方がない。
ワクワクするプロジェクトを、みんなと議論をし、制作する瞬間がたまらなく良い。
わたし1人では難しいことも、チーム全体で得意分野を活かしながら、真摯に丁寧に謙虚に取り組めば、本当に異を楽しむ世界が来るかもしれない、そんな予感がする四年目だ。
みなさん、どうぞ楽しみにしていて下さい。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?