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<論文>ミソフォニア(イグノーベル賞2020医学賞)

Misophonia: Diagnostic Criteria for a New Psychiatric Disorder
PLoS One. 2013; 8(1): e54706.
doi: 10.1371/journal.pone.0054706

背景
一部の患者は、衝動的な攻撃性を誘発する特定の忌避的な人間の音に執着しているという。この現象は比較的知られておらず、これまで記述されたことがなかったが、逸話的にミソフォニアと名付けられている。

方法と主な結果
ミソフォニアを申告した42名の患者を当院のウェブサイトで募集した。すべての患者は経験豊富な精神科医による面接を受け、Y-BOCSの改版、HAM-D、HAM-A、SCL-90、SCID IIを用いてスクリーニングが行われた。聴覚または視覚刺激により、怒り、嫌悪感、衝動的な攻撃性を伴う即時回避的な身体反応が誘発される症状の類似のパターンを患者は共有していた。これらの感情の強さは、その後のきっかけに対する強迫観念、回避、強烈な苦痛を伴う社会的機能不全を引き起こした。この症状は、現在の疾病分類のDSM-IV TRやICD-10では分類できなかった。

結論
我々は、ミソフォニアを個別の精神疾患として分類すべきであることを提案する。診断基準は、患者と障害をきちんと認識し、専門医療職による診断を改善し、科学的研究を奨励するのに役立つだろう。

<ミソフォニアの診断基準案>
A.
人間が発する特定の音(例:咀嚼音・呼吸音)の存在または予期は、苛立ちや嫌悪感から始まる衝動的で回避的な身体反応を誘発し、そして瞬時に怒りに変わる。
B.その怒りは、まれだが潜在的に攻撃的な爆発を伴う、深い自制心の喪失を引き起こす。
C.その怒りや嫌悪感が過剰だったり不合理だったりし、状況や誘因に比例しないことを認識している。
D.ミソフォニックな状況を避ける傾向があるか、または避けられない場合は、激しい不快感・怒り・嫌悪感を伴うミソフォニックな状況との遭遇に耐えている。
E.怒り・嫌悪感・回避行動は、その人の日常生活に著しい苦痛(その人が怒りや嫌悪感を持っていることがその人を悩ませる)や著しい干渉を引き起こす。例えば、怒りや嫌悪感のために仕事で重要な仕事をしたり、新しい友人に会ったり、授業に出席したり、他の人と交流したりすることが困難になることがある。
F.怒り・嫌悪感・回避行動は、強迫性障害(汚れに対する強迫観念を持つ人の嫌悪感)または心的外傷後ストレス障害(死の脅威・重傷外傷・自己や他者の身体的完全性に対する脅威に関連したトラウマに関わる刺激の回避)のような別の障害によってうまく説明できない。


もう1つの受賞論文は治療についてのようです。

Cognitive behavioral therapy is effective in misophonia: An open trial
J Affect Disord. 2017 Aug 1;217:289-294.
doi: 10.1016/j.jad.2017.04.017.


イグノーベル賞2020の受賞者一覧は以下です。


<感想>
今回の論文については特に感想という感想はありませんが,今年のイグノーベル賞の中では個人的にはこちらの経済学賞(というかニュース?)が面白かったです。



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