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<論文>臨床推論における疾患別知識の役割

Specific Disease Knowledge as Predictor of Susceptibility to Availability Bias in Diagnostic Reasoning: a Randomized Controlled Experiment
J Gen Intern Med. 2020 Sep 15.
doi: 10.1007/s11606-020-06182-6.

背景
知識不足よりも臨床推論におけるバイアスがほとんどの診断エラーの原因であることが明らかにされている。しかし、バイアスに対抗するための知識の役割は不明である。

目的
識別特徴(類似疾患を識別する所見)に関する知識がバイアスの起こりやすさを予測するかどうかを検討する。

研究方法
三相無作為化実験。第1相(バイアス誘導):参加者は、一連の症例(ウイルス性肝炎+IBDまたはAMI+ウェルニッケ脳症のいずれか)を吟味させられた。第2相(診断):参加者全員が同じ症例を診断した;肝炎+IBDに類似した4症例、AMI+脳症に類似した4症例(診断はすべて異なる)。第1相で吟味した症例と類似した4症例で利用可能性バイアスが起きることが予想された。第3相(知識評価):第2相の各疾患について、参加者は24の所見がその疾患に関連しているかを決定した(最大2秒)。知識の指標となる特徴の判別精度は、バイアスの影響を予測すると予想された。

無題

参加者
オランダ・エラスムスMCの内科研修医

測定項目
知識の高い医師と知識の低い医師(第3相の結果による:医師年数や経験症例などの背景に差はなかった)が、第1相によるバイアスのかかった診断を行った頻度(範囲0~4)。また診断に至るまでの時間。

結果
62人の医師が参加した。知識の高い医師は、知識の低い医師よりも利用可能性バイアスに陥ることが少なかった(0.35 vs 0.97;p=0.001;差 0.62 [95% CI、0.28-0.95])。知識の低い医師は、バイアスのかっていない症例群よりもバイアスのかかった症例群でこれらのエラーが多い傾向があったが(p=0.06;差 0.35 [0.02-0.73])、知識の高い医師はバイアスに抵抗していた(p=0.28)。両群とも、バイアスのかかった症例群の診断には、バイアスのかかっていない症例群よりも多くの時間を費やした(p=0.04)が、群間の差はなかった。

結論
類似疾患を識別する特徴を知っていることで、模擬実験でのバイアスの影響を受けにくくなった。バイアスを克服するためにはより省察を行う必要があるかもしれないが、成功するかどうかは適切な知識を持っているかどうかにかかっている。今後の研究では、この知見が実際の診療やより経験豊富な医師に適用できるかどうかを検討する必要がある。


<感想>
結局は知識がモノを言うという側面もあるということでしょうか。研究のデザインとして,メインの検証(第2相)が終わったあとに振り分ける(第3相)やり方が勉強になりました。



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