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<論文>プレプリントの印象操作にご用心

COVID-19 randomized controlled trials in medRxiv and PubMed
Eur J Intern Med. 2020 Sep 22
doi: 10.1016/j.ejim.2020.09.019

メタ疫学調査:2020年1月1日から6月15日までにPubMedまたはmedRxivに掲載されたCOVID-19の臨床に関連するRCT論文を対象とした。

medRxiv COVID-19 SARS-CoV-2」から「random」という単語を使用した抄録を検索した。事前に登録された主要アウトカムが有意でない研究では、タイトルまたは抄録の結論に肯定的な表現があった場合にSPIN(印象操作)があると判定した。

合計29本のRCT論文(medRxivから13本、PubMedから16本)を含めた。全体で70%以上(21/29)の論文がバイアスの危険性が高いか、あるいはいくらか懸念があり、特に報告された結果を選択する欄において、バイアスの危険性が高いと考えられた。事前に登録された主要アウトカムが否定的であった論文は11件であった。そのうち、medRxivでSPINがある論文は4件(80%)、PubMedでSPINがある論文は1件(17%)であった。例えば、medRxivに掲載された1本の論文では、統計的に有意ではなかった主要アウトカムの結果(オッズ比0.59、95%CI 0.148-2.352 P=0.454)に基づき、「....COVID-19における効果は臨床的に重要であり、さらなる検討と研究の必要性があるかもしれない」と記載されていた。2組の論文はmedRxivと査読付きジャーナルの両方に掲載されていたが、そのうちの1本はPubMedでは抄録で研究の限界についてディスカッションがあったが(ピアレビュー後のようだった)、medRxivでは記載されていなかった。

medRxivとPubMedの両方で問題のあるRCT論文の存在が示唆されるが、特に抄録結論のSPINはmedRxivでの報告でより頻繁に見られた。本研究はサンプルサイズが小さいこと、medRxiv以外のプレプリントサーバーを含まないことなど、いくつかの限界がある。ピアレビューのない迅速公開が臨床研究の報告の質に与える影響については、さらなる調査が必要である。読者はRCTのプレプリントにおける誇張表現に注意を払うべきである。

※「SPIN」については以下論文が初出。
Reporting and interpretation of randomized controlled trials with statistically nonsignificant results for primary outcomes
JAMA. 2010 May 26;303(20):2058-64.
doi: 10.1001/jama.2010.651.

"spin" (ie, specific reporting strategies, whatever their motive, to highlight that the experimental treatment is beneficial, despite a statistically nonsignificant difference for the primary outcome, or to distract the reader from statistically nonsignificant results)


<感想>
COVID-19 Primerなんて見ていると最先端の話題がわかると勘違いしそうですが,このように目に見えるデータや具体的な注意点を示されると,やはりプレプリントには注意が必要と感じます。もちろん悪いことばかりではないとは思いますが。



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