無農薬はわかるけど無肥料? 2 窒素
前回に引き続き、無肥料栽培について
私が調べたことを書く前に
お断りしておきたいことがあります。
私が4年後に始める自然農法での農園は
いわゆる中小規模の農園です。
どういうことかと言いますと、
自然農法は大規模農家には
今のところ不向きだと思うんです。
慣行農法は化成肥料、農薬を使って
早く、大きく、均一に作物を育て出荷します。
大きさがバラバラだと収穫に手間がかかり
規格外の作物は買い取ってもらえないので
自然農法での栽培は不向きというか
物理的に不可能なんです。
畑の面積の大小は
実際に栽培する人の感覚にもよりますが
「東京ドーム◯個分の広さ」といった畑では
早く、大きく、均一に育ってくれないと
困るんですね。
また、早く、大きく、均一に育てる慣行農法には化成肥料だけでなく種の問題もあります。
作物から採った種を翌年撒くと できた作物は
大小バラバラに育つ可能性があります。
そこで交配することで均一に育つ植物の種を作り
一代限りの作物を育てています。
これがF1種と呼ばれる種です。
固定種、交配種については別の機会に書きます。
ということで、中小規模での自然農法について
これからも私の備忘録として書いていきます。
さて、最初の疑問です。
植物が育つためには何が必要でしょう?
小学校で習いましたね。
水、日光、二酸化炭素でした。
それ以外に大切なのが養分です。
具体的には窒素、リン、カリウムです。
ホームセンターなどでも窒素とリンとカリウムが理想的に配合された化成肥料が売られています。
これ、使わなかったら どうなるの?
まずは、窒素。
たんぱく質やアミノ酸に含まれ、
植物の葉や茎を作ります。
窒素は空気中にあります。
その割合は約80%と酸素よりも多いんです。
こんなに沢山あるのに、
何故、肥料として植物に与える必要が
あるのでしょう。
それは植物は空気中の窒素を
自分で吸収できないからなんです。
でも、山の植物は誰からも肥料を貰わないのに
育っているのは何故なんでしょう。
答えは2つ。
1つは雷による作用で
雨に溶け込んだ窒素が地面に降って
植物に供給されるんです。
上空の空気に含まれる窒素が
雷による高温にさらされて、
窒素酸化物に変化して
雨に含まれて地上に降り注ぐことで
植物は窒素を得ます。
古来、農家の人々は
「雷、ひと光で一寸、稲が伸びる」と言い
雷を尊びました。
もう1つの答えはマメ科の植物に
多く見られる根粒箘からの供給です。
マメ科の植物の根っこには
根粒箘という箘がいます。
この箘はニトロゲナーゼという酵素を持ち、
土中の空気から窒素を取り出して
植物に与える働き(窒素固定)を持ちます。
ただ、ニトロゲナーゼは
酸素があると働かないという特性があり
通常では窒素だけを固定できないのです。
しかし、マメ科の植物はレグヘモグロビンという
人間の血中にあるヘモグロビンと同じ物質を持ち
このレグヘモグロビンが土中の空気から
酸素を取り込み、残った窒素をニトロゲナーゼが
植物に吸収しやすくして供給しています。
つまり、畝間などにマメ科の植物を混植すると
マメ科の根粒箘の働きで
土中の空気から窒素を取り出してくれるから
窒素肥料が不要になるんですね。
マメ科以外にも箘根箘(ジアゾ栄養細菌)という箘が
多くの植物と共生関係にあるそうです。
箘根箘は菌糸を伸ばして植物の根から入り
お互いに栄養を交換する共生関係を結びます。
その菌糸は植物の根の最大1000倍の範囲まで
広がり栄養を運ぶそうなんです!
窒素を固定したり、
土壌からリン酸を持ち出したりして
植物に供給しているそうです。
なんと自然界では全植物の80%以上が
何らかの微生物や細菌との
共生関係にあるそうです。
微生物や細菌と
共生関係を持たなくても生きる植物は
水生植物、食虫植物、寄生植物だけだとか。
すごくないですか?!
私は56歳のオッサンですが、
とても驚いて興奮しています!
私が農学ではなく植物学を勉強する理由が
ここにあります。
畑で作物を栽培するということは
植物を育てるということです。
わざわざ科学的にアンモニアを精製して
そこから窒素肥料を作って土に入れなくても
作物は窒素を吸収することができる仕組みが
自然界には整っているんです。
余談ですが、
マメ科の植物が持つレグヘモグロビンは
ヒトと同じ赤色なんです。
枝豆などの茎を傷つけると、
切り口は赤く血のように見えるのは
レグヘモグロビンがあるからなんです。
なんか、めちゃくちゃ面白いと思いませんか?!
私だけかもしれませんね(泣)
次回は自然農法の植物が
リンを吸収する謎について書きます。
読んでくださると励みになります。
これからも よろしくお願いいたします。
参考資料
YouTube「うむ農園『自然栽培チャンネル』」
「ここまでわかった自然栽培」
~農薬と肥料を使わなくても育つしくみ~
杉山修一 著
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