黄金のレガシーはなぜ賛否両論なのか?

前書き

 前回に引き続き、黄金のレガシーの感想語りをしていこうと思う。今回は賛否両論の「否」の部分に触れつつ、なぜ今回のシナリオがこんなに燃え上がっているのか僕の主観を交えて分析していこうと思う。

 分析と言えば聞こえがいいが、要するにほとんど僕の妄想なのでまあ読まなくていいし鵜呑みにされても困るので話半分に聞いてもらいたい。

黄金のレガシーのシナリオの問題点

 最初に断っておくと、僕はプロのライターでもなければそもそも創作活動すら満足にしたことのない人間なので、作品の『良し悪し』について語るつもりはない。『創作に正解はない』というのが僕の持論だし、良かったと言っている人も悪かったと言っている人もいる以上どっちの意見が正しいとかそういう議論は意味をなさないので、今回語るのはあくまでも『僕が思った』ことであり、世間がどう『思った』かの想像を述べるだけだと言うことを明記しておく。

 黄金のレガシーのどこがどう『悪かったか』とこき下ろすのではなく、何故『賛否両論』になってしまったか、が話の主題なのでそこを肝に銘じておいてほしい。

暁のメンバーの扱い

 暁のメンバーの扱いについては非常に難しいところに来ているな、と思っている。もう暁はいらないと言う声もあるし、暁のメンバーの熱烈なファンが多いのも事実。僕も別にいらないとまでは思っていないが、もっと新しいキャラにフォーカスを当てて欲しいとも思っている。

 故に全く出さない、と言うのも無理があるし、かといって出しすぎるとまたこいつらかよと言うことになり、結果的に非常に中途半端な扱いになってしまっているなという印象だった。

 全体的に、今回の暁のメンバーは舞台装置と化してしまっている、と感じる部分が多かった。ストーリーの展開上「言わされている」と感じるセリフが多かったし、らしくない行動を起こすシーンも散見された。

 あれだけ暁を二分して、という煽り方をしていたのに実際に敵対するようなシーンはほとんどなく、精々IDでちょっと回り道をさせられた程度で、結局ほとんどずっと協力体制をとっていたのもガッカリ感が強かった。

 暁のメンバーの今後の扱いをまだ決めかねている状態なのかもしれないが、いっそすっぱり出すのをやめるかそれとも人気キャラクターとして今後も推し出していくのか、そこをはっきりさせておかないとこれからも同じように中途半端な役割に終わってしまうのではないだろうか。それではどっちの意見の人も幸せにならないと思うのだが。

 また、シナリオがシステムに縛られてしまっていると感じる部分も多かった。このあたりでダンジョン、このあたりでボス戦、というシナリオの流れが決まっているので必然的にそのタイミングで仲間が揃っている必要がある。暁月のハイデリン戦では暁のメンバーが勢揃いで戦うことができて、シナリオの展開上非常に良い演出だったが、今回ラスボスを除く二つの討滅戦の両方にコンテンツサポーターが採用されていて、さらに縛りを増やしてしまっているのが今後の不安材料にならないか心配である。

 漆黒のハーデス戦で登場した異世界の英雄の召喚も、あの時の演出としては非常に素晴らしかったが、一度あれをやってしまったが故に、いままで特に触れられてこなかった討滅戦における自分以外のプレイヤーの存在の言い訳を毎回用意する必要が出てきてしまった。今回のレイドシナリオのアルカディアでも、わざわざ味方が8人いることの理由づけを行なっているのを見ても、また要らない縛りを増やしてしまってこれからやっていけるか?という不安があるのも事実。

ウクラマトというキャラクター

 黄金のレガシーのシナリオが賛否両論となっている理由の大きな原因の一つは彼女の存在であろう。ウクラマトという人物をどういう受け止め方をしたかが、真っ二つに分かれているという印象だった。

 ウクラマトを好意的に見ている人の意見では、まっすぐで理想に燃える少年漫画の主人公的存在で、「知る」という自分の信念を愚直に貫き、必要とあらば矢面に立つことを厭わず、旅を通じて立派な王へと成長した、と捉えられている。

 一方ウクラマトを否定的に見ている人の意見では、箱入り娘で自国のことすら碌に知らないくせに王になろうとしていて、やたらと「知る」を連呼する割に肝心なことは知ろうとしてこなかったサイコパス、のように捉えられている。

 正直悪い意見の方が目につきやすいので、ウクラマトは世間では相当嫌われている印象を受ける。僕個人の意見を述べると、そんな罵詈雑言をぶつけるほど嫌いではないがさりとて好きなキャラかというと首を横に振らざるを得ない。といったところ。

 これは後の項目にもかかってくるのだが、まずウクラマトの登場自体が唐突で、特に彼女に対して良い感情も悪い感情もないうちになし崩し的に行動を共にすることになったのが良くなかったのではないだろうか。

 ただエレンヴィルからの紹介を受けただけで、ヒカセン自身に彼女に協力する理由が存在しないまま旅が始まる。あくまでも依頼を受けただけの関係なわけである。しかもヒカセンといえばエオルゼアの大英雄であり、世界最高クラスの武力の持ち主である。そんな存在がたまたま知り合いの知り合いだったという理由で一国家の権力争いに介入すること自体に疑問符がついてもおかしくはない。

 バージョン6.5の後半部分で一応彼女と共に行動するシーンがあるが、あのタイミングではウクラマト側がヒカセンを品定めするような語り口になっていた。同じようにこちら側からもウクラマトが協力に値する魅力がある人物なのかどうかを、あの時点でもう少し示してほしかったというのが正直なところ。

 バージョン6.5前半というギリギリのギリギリまでヴォイドの話を詰め込んでしまっていたが、せめてヴォイドの話は6.4で打ち切って、6.5まるまるウクラマトの紹介をするのに時間をかけても良かったのではないかと思っている。

 旅が始まってからも彼女との関係は雇用主と冒険者、の垣根を越えられていない。ユーザーの感情を置いていったまま愛称で呼ぶことにされたのも逆に反発を買う結果になっている。もっとヒカセンとウクラマト個人としての間柄が深まるきっかけになるようなエピソードが一つでもあればもう少し違ったのかもしれない。

尺の問題

 黄金のレガシーのシナリオが賛否両論になってしまった最大の要因はこれだと思っている。シナリオを批判する意見を見てみるとその多くは、一部のエピソードで描写が雑だったりその後の展開が説明不足だったりするという内容の指摘が非常に多い。例を挙げると、

・ウクラマト誘拐の件
・ヴァリガルマンダ解放の件
・料理対決の件
・襲われたケテンラムのその後
・大罪を犯したバクージャジャの後処理
・永遠人の存在を消すことの是非

 各項詳細な説明は省くが、まだまだこの他にも挙げると枚挙にいとまがない。特にゾラージャはその存在そのものが説明や描写がほとんどされず、あれだけ「知る」ことをテーマにしていながら彼について何も知ることができないまま退場してしまった感が否めない。これについては、彼のことを何も語らなかったのは意図的であるという考察も存在し、納得のいく考え方ではあるのだが、多くの人がそうは思わなかったようだ。

 圧倒的好評を得た漆黒や暁月でメインシナリオライターを務めたスタッフが、今回メインシナリオから外れているという話は既にされていて、新しいライターが未熟だったと言えば身も蓋もないのだが、こうなってしまった理由として僕が感じたのは、圧倒的に尺が足りていない、ということである。

 新生編から暁月編まで、始まったばかりの新生は除いてもメインシナリオにかかる時間はどんどん長くなっており、カットシーンの長さだけ見ても黄金のシナリオも暁月と比べてほぼ変わらないくらいの長さがある。雑だと言われている部分をもっと事細かに描いていたら、最終的にはもっと長くなっていたに違いない。長きにわたるシナリオのクライマックスだった暁月よりも次のシナリオの導入の方が長いというのはいささか問題があるように思う。

 ゆえに削らざるを得なかった描写やエピソードが多くなってしまったのではないかと考えているのだが、そもそもじゃあなんでそんなに長くなっているのかというと、やはり黄金のシナリオが二部構成になっているのが原因であろう。

 黄金のシナリオはトライヨラの王位継承戦を終えるまでと、その後のアレクサンドリア関連のシナリオで大きく二つに分けることができるが、果たして後半の部分を黄金のシナリオとして実装する必要があったのだろうか?と僕は疑問に思っている。

 ハイデリン・ゾディアーク編とも銘打たれた新生から続く大きなシナリオが暁月で一つの区切りを迎え、黄金のレガシーは新たなサーガの第一歩となるシナリオだった。プリザベーションという新たな謎の集団や世界を渡る鍵の存在など、新たなシナリオの始まりを予感させるキーワードは確かに幾つも出てきたが、それを入手するところまで駆け足でやってしまうのはどうにも性急に過ぎる気がしている。

 事前情報では黄金のレガシーは『ヒカセンの夏休み』であり、『暁を二分する王位継承レース』が展開されるという触れ込みだったが、蓋を開けてみたら結局暁みんなで協力して世界を救う話だったわけだ。「期待を裏切る」というのは創作において重要なファクターではあるが、今回は「期待していたものが得られなかった」という方面の感想の方が大きい。

 黄金のレガシーでは前半部分の王位継承戦のみにフォーカスして、もっと丁寧に「ヒカセンの夏休み」と「暁を二分する継承レース」を展開していた方が満足感も高かったのではないか。そうすれば、トラル大陸の新たな文化を時間をかけて描写説明し、ウクラマトともじっくり交流を深め、バクージャジャと時間をかけて和解し、ゾラージャの苦悩や葛藤を描写し、黄金郷とは一体なんなのか?消えたゾラージャは一体どこへ?という謎を残して次の拡張へと繋ぐことができたのではないだろうか。最後にヴァリガルマンダを持って来れば、シリーズファンとしてはラスボスとして申し分ない相手である。

 漆黒から暁月へのシナリオが続くにあたって、ガレマルド編を挟むかどうか悩んだが、この漆黒の勢いのまま終わらせた方がいいと判断した、という発言がインタビューなどで紹介されているが、その時の判断は間違っていなかったように思う。しかし今回は新たなシナリオの始まりであり、大きなシナリオが終わった直後の話である。今回は勢い重視にせずむしろ丁寧に新しいシナリオの始まる予感を感じさせる程度で良かったのではないだろうか。

 おそらくそうすると今度はテンポが悪いとか中身が薄いとかお使いばかりだとか新生の二の舞だとか言われていたかもしれないが、今ほどシナリオそのものをこき下ろす風潮にはなっていなかったように思う。

 いまだに新生はつまらないという声が多くあるが、未知の世界を丁寧に歩いていくあの時間は、僕は他と違った楽しさがあったと思っているので、新生はつまらないという世間の声にビビりすぎずに新たな冒険の舞台をもっと丁寧に描いて欲しかったなと思っている。

 今回のシナリオを王位継承戦までに留めておけば、アレクサンドリアからソリューション9、リビングメモリーに至るまでの物語も次回の拡張でもっとじっくり丁寧に描けることになる。特に後半は駆け足だった印象があるので、アレクサンドリアやスフェーン、リビングメモリーの人々とのやりとりを、もっとじっくり感じたかったのが本音だ。

 シナリオには驚きが必要であると考えている節があるが、そもそも事前情報で何やらサイバーな都市に行くらしいことはわかっていたので驚きもなにもなかった。いっそ後半の展開を事前情報で一切伏せておいてこれをお出しされたなら、また少し違った感動があったのかもしれない。

悪趣味なシナリオ

 誤解を恐れず言うならば、今回のシナリオは非常に「悪趣味」である。

 とはいえ創作において悪趣味というのは、必ずしも悪ではない。いわゆる王道から外れた展開でも時として人を魅了し名作と呼ばれているものも数多くある。

 黄金のレガシーの物語は一見王道な主人公(この場合ウクラマト)の成長物語を前半部分でやっておいて、後半部分で今までやってきたことを真っ向否定するような価値観をぶつけてくる。その価値観を否定し、今目の前で確かに生きているように見える彼らを消滅、あるいは虐殺することと等しいことをしなければならない。それまで自分たちが信じてきたものを貫く選択を、プレイヤーに強いるのだ。

 リビングメモリーの各所をシャットダウンする際、あろうことか「はい いいえ」の確認ダイヤログが出る。これは見ようによってはその後景色が変わってしまうことの確認のようにも見えるが、シャットダウンするか否かの責任をプレイヤー自身に委ねているようにも見える。どうせ「はい」を選ばないと何も話は進まないというのに。

 これが悪趣味と言わずしてなんなのだろうか。僕自身プレイしていて非常に感情を揺さぶられたし、開発の狙いはそこにあったのだろうけれど、やはりこういった展開はどうしたって賛否が分かれると思う。

 さらにいうならば今回のテーマ上扱わざるを得ないと言える、FF9要素の扱いもそうだ。

  私が死のうとも 君が生きている限り 命は続く

 これはFF9のテーマソング、 Melodies of Lifeの歌詞の一節だ。まさしく黄金のレガシーのテーマに沿った内容で、FF9要素を入れてくるのは必然のようにも思える。しかしそのFF9要素の扱い方もまた悪趣味だ。

 まずFF9において最初の舞台であり物語を通しても重要な位置付けであるアレクサンドリアと呼ばれる都市が、FF14ではすでに滅んでいる。しかも滅ぼした相手がFF9ではアレクサンドリアとは友好国であったはずのリンドブルムときた。

 黄金のレガシー拡張パック予約特典にジタンのミニオン、コレクターズエディションにガーネットのミニオンとアークのマウントをつけ、ソリューション9というFF9に登場したワードと同じ名前を持つ都市が登場することを事前発表し、これでもかと今回はFF9推しであることをアピールしておいて、お出しされたものがこれである。

 FF14はFFシリーズのテーマパークにしたいというP/Dの方針があることは散々語られているが、FF9はシリーズでも屈指のファンが多い作品で、皆どんなFF9要素が来るのかとワクワクしていたところにこの仕打ち。

 極め付けはFF9のキャラクターが作中ラストに語る名台詞「記憶を空に預けに行く」を全く真逆の意味で使って見せる始末。

 こんな悪趣味なことがあるだろうか。FF9のファンは、アレクサンドリアとは似ても似つかない、でもその名前だけは冠している都市が滅んでいく様をエキルレで何度も目の当たりにすることになるわけだ。

 暁月のフィナーレ6.1〜6.5のストーリーではFF4のオマージュがふんだんにこめられていた。あのゴルベーザ四天王と戦うことができ、最後にはゼロがパラディンに覚醒するという展開もやってのけた。言うなればFF4は「正」の方向でのオマージュだが今回のFF9に関してはどう見ても「負」の方向のオマージュだ。これをよしとしない人が少なくない数いるのは当然なのではないだろうか。

 全く真逆の扱い方をしたのは、同じだけど同じじゃない、ということを表現したかったのかもしれないが、だったらそもそも国の名前はアレクサンドリアじゃなくていいしわざわざセリフを持ってくる必要もない。テーマパーク、というのなら過去作のファンを楽しい気持ちにさせる扱い方をしてほしいものである。

結論

 作品を単体として見たときに、賛否両論であることは必ずしも悪いことではない。人の好みや受け取り方は千差万別で、心情や環境、生き方によって物語の受け止め方は変わってくるわけで。黄金のレガシーに否定的な人はおそらくこんなクソシナリオ誰も評価してないし評価してるやつは頭がおかしいと考えているかもしれないが、黄金が良かったと言ってるいる人は確かにいる。そしてそれはどっちが間違ってるとか正しいとかそういう話ではない。

 僕自身も前回の記事で語ったように黄金のレガシークリア時に「面白かった」と思った人間である。とは言えあそこは良くなかったなと思った部分もあったし、あとあと批判されている内容を見てまあ言われてみればそうだなと思う部分もあった。しかし結局そういうところにどこまで引っ掛かるかは人それぞれなので、そこは議論してもしょうがない部分だ。漆黒や暁月にもつまらなかった、合わなかったという人はいるわけだし。

 それを踏まえた上で、やはり黄金のレガシーは良くなかった、と僕は思っている。なぜなら、FF14は運営型のゲームだからである。これが単体のゲームならたとえその評価が賛否両論であっても世に出た時点でそれは完成されているし、合わなかった人は離れればよし、好きな人は気の済むまでしゃぶればよし、とすることができる。しかし運営型のゲームはそうはいかない。どれだけ自分は好きだと思っていても世間から認められなければ、サービス終了の憂き目に遭う。

 FF14はシステム面などを見ると、普段から最大公約数を狙って運営されていると感じる。ユーザーの大多数を占めるいわゆるライト勢でもプレイできるように、とにかく幅広い層にプレイしてもらえるように作られているのだ。戦闘はどんどん簡易化されていき、それぞれのジョブも尖った部分が削ぎ落とされていくような調整がされている。

 それに不満を持っているユーザーも当然いるが、先鋭化されていってライト層がごっそりいなくなるよりいい、と考えているのだろう。FF14が運営型のゲームである以上、それは仕方のないことだと思うし、僕はその点は納得している。

 なぜシナリオの部分においてもそれをやらないのか。FF14が目玉だと推している肝心のメインシナリオが賛否両論では、意味がない。今回のシナリオはウェルリト戦役のシナリオを書いたライターが関わっているという話を聞いた時点で、割と嫌な予感はしていた。ウェルリト戦役のシナリオは、前の項でも書いたいわゆる『悪趣味』なタイプのシナリオだ。そのライターが書いたのだとするとこの黄金のメインシナリオの内容もなるべくしてなったと言えるのかもしれない。

 言い方が悪いが、メインシナリオはもっと当たり障りのない、多くの人が納得して感動できる王道のストーリーでいい、と思っている。これまでのメインシナリオも基本はそうだったはずだ。尖ったシナリオはそれこそサブシナリオでやればいい。メインシナリオに尖った内容を持ってきた結果、賛否両論になって人が離れていき、サービス終了となってしまっては元も子もない。

 そりゃあメインシナリオの出来ひとつで今すぐにサービス終了になると思ってはいないが、僕はまだFF14が好きで面白いと思っているし、FF14繋がりの友達もたくさんいる。向こう10年を目指しているといった以上、その出だしがこの体たらくでは本当に困るのだ。僕はまだFF14を続けたい。

 ここでは詳しく語らないが、暁月から少しづつ湧き上がっていた不満の種と、グラフィックアップデートの問題も重なって、これを機に離れていったユーザーは相当数いるのではないかと思っている。これから先、新たなフィールドコンテンツや生活系コンテンツが待っているようだが、離れていった人たちが後悔するほどの大逆転を見せてくれることを期待したい。いや、願わくば、期待させて欲しい。

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