GRIスタンダードの普及状況

GRIがGRIスタンダードの前身であるGRIガイドラインの初版(G1)を発表したのは2000年でした。当時はサステナビリティという考え方はいまだ浸透しておらず、非財務情報の意味や範囲も曖昧でした。GRIガイドラインは、サステナビリティ報告のための最初のグローバルなフレームワークであり、企業による非財務情報の開示が進むにつれ、世界で広く普及されました。

KMPGは世界の代表的な企業のサステナビリティ/CSR報告書の実態調査を継続的に実施しています。例年の調査対象となる企業は、世界の52カ国における各国の売上高上位100社に入る合計5,200社(N100)、さらに2019年の「Fortune 500」ランキングで定義された世界の売上高上位250社(G250)です。2020年12月に公開された同調査の報告書によると、GRIは最も一般的に使用されているレポーティングスタンダード/フレームワークであり、2020年にはN100企業の67%、G250企業の73%がGRIスタンダードを使用しています。

なお、KPMGは日本国内でも別途サステナビリティ報告書の実態調査を実施し、2021年の報告書をまとめています。この調査では、2021年2月の時点で日経平均株価の構成銘柄となっている225社の日本企業(日経225)が、2020年に開示したサステナビリティ情報が対象となっています。同調査によると、対象企業の99%が、サステナビリティレポート、統合報告書、ウェブサイトのいずれか1つ以上でサステナビリティ情報を開示しています。

報告基準としては、日本でもGRIスタンダードが広く利用されています。2020年に同スタンダードを利用している企業は165 社あり、全体の73%に達しています。このうち、同スタンダードに「準拠」して報告書を作成している企業は38社(23%)、「参照」して作成している企業は127社(77%)でした。2018年、2019年のデータと比べるとGRIスタンダードを使用する企業は増加傾向にあります。しかし同スタンダードを単に「参照」するのではなく、これに「準拠」して報告書を作成していると表明している企業は、全体の四分の一程度にとどまっています。対象企業の間でGRIスタンダードは広く普及していても、その利用は限定的であることがうかがわれます。

GRI以外のレポーティングスタンダードとしては、米国のサステナビリティ会計基準審議会(SASB)が2018年に公開した「SASBスタンダード」が存在します。SASBは2021年6月に、国際統合報告フレームワークを開発した国際統合報告評議会(IIRC)と合併し、さらに2022年中に国際財務報告基準財団(IFRS)が設立する国際サステナビリティ基準審議会(ISSB)に統合される予定です。こうした団体の統合が進むことで、「SASBスタンダード」への注目が高まっています。

ちなみにSASBが2021年11月に開催したウェビナー資料によると、SASBスタンダードの普及率は、米国のS&P 500企業の間で69%、世界のS&P Global 1200企業の間では54%とのことです。2018年に公開されてからの数年間で、SASBスタンダードはGRIスタンダードに匹敵するほどの高い利用比率に達していることがわかります。

ただ、SASBとGRIの二つのスタンダード利用比率がともに過半数を超えているということは、企業はどちらかを選択しているのではなく、両者を同時に使っているケースが多いようです。非財務情開示に際して、多くの企業は用途に応じてGRIとSASBの二つを使い分けているのではないかと推測されます。

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