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高知けいば予想の教科書23

割引あり

まえがき

 高知けいば予想の教科書シリーズは本作が6年目となる.22年度の売上はついに前年度の売上を下回ってしまったが,冬の時代を耐え抜いた関係者からすれば予測通りであり,焦ることなく知恵を出し合って高知けいばをさらに発展させてくれると確信している.
 シリーズ開始より一貫しているのは教科書という形に拘り,持続的に高知けいばに参加できる高い予想力を持ったファン人口を増加させたいという想いである.近年はAI技術の発達により各社さらに質の高い予想を発売しているが,その結果似たような予想のみになるのでは,と危惧している.当サイトもAI予想を展開しているが高知けいば専門らしく他社では取り入れにくい要素を追加している.本教科書にはそのようなファンならではの鮮度の高い情報が含まれている.
 前作はデータのアップデートを主であり,また楽天kobo専売としたが,本作はnoteでの併売も実施する.これはnoteしか利用していないユーザーがいるようで,現在でも前々作以前の教科書が購入されているためである.新たなコンテンツとしては,2章にリーディングの打越厩舎の攻略法をかなり詳細に分析した.また一発逆転ファイナルレースにおけるデータを補強し,特に当日の傾向を踏まえた予想法について5章に大きく加筆した.
 ここ数年の一風変わった暮らしは終わりに差し掛かったものの,元通りになるものは何もない.高知けいばも常に進化している.ぜひ高知けいば予想の教科書23とともに皆様の予想力をアップデートして頂きたい.最後になるが今年度も高知けいばを支えてくれる関係者の皆様に感謝の意を示しつつ,令和5年度の高知競馬の更なる発展を祈念する.

1章 コースの特徴

1.1. コース形態

高知競馬場は一周1100mの右回りダートコースである.1,2コーナーはコーナー半径が小さく,3-4コーナーは大きいため走りやすいため,勝負所で減速しにくい特徴がある.坂もなく直線が短いため逃げ先行が有利となるところを,インコースの砂を深くすることでなるべくフラットな状態を作っている.砂厚は高知けいば公式サイトで確認することができるが,数字から有利不利を判断することは容易ではない. このことは1.8.で解説する.

1.2. 距離と有利な枠

 レースの大半は1300mおよび1400mで行われる(2022年のレース数: 1300m: 431, 1400m: 557, 1600m: 153, その他:37).そのため時計の比較が容易である.慣れるまではこの距離だけ購入する方がよい.1600mは3コーナー奥のポケットからスタートするフルゲート11頭の特殊なコースであり,馬場の内外の不利によって結果が左右されやすく,そのことから騎手の心理が大きく働くため展開予想が難しい.以下の表に2022年における馬番ごとの成績を示す.例年以上に大外枠の成績が悪化している.インコースの砂が薄くなったと見るより,馬場の回復が早くなりタフな馬場でのレースが増加し,外を回すロスが強く影響していると考えられる.

Table 1-1. 2022年の距離1300mにおける成績と馬番の関係 

Table 1-2. 2022年の距離1400mにおける成績と馬番の関係

 

Table 1-3. 2022年の距離1600mにおける成績と馬番の関係

 上記は全レースの結果から得られたデータであるが,1枠成績を考える際には,「フルゲート」か「それ以外か」のケースを分けて考える必要がある.フルゲートではない場合は1番内の枠は使用せず,フルゲートの場合のみ1番枠が最内となるためである.

 

1.3. 馬場状態

 馬場状態は基本的に「重」もしくは「不良」である.これは路盤改良がままならず,細かい砂の粒が堆積して水はけが悪化しているものと考えられる.路盤改良は21年度以降に計画されており,長期開催休みを防ぐために部分ごとに行うことが検討されているが今のところ公式発表はない.「不良」から「重」になるのは比較的発生しやすいが,これは雨で流れた砂を補充するためであると考えられる.このような時は一見乾いているものの,レースが進むにつれて水が表面に浮き上がり,時計の出やすい馬場へと変化する.一方「稍重」まで回復することは珍しかったが,2022年はおよそ30%程度が稍重もしくは良で開催されている.砂の変更もあったが何らかの工事が行われている可能性もある.また馬場状態の判断方法はyoutubeの高知けいば公式チャンネルの動画によって紹介されており,2名いる担当者が触った感じで決定している.

Table 1-4. 2022年の馬場状態

1.4. 不良馬場時の成績

 不良馬場においては逃げ馬がすごく有利になり枠がさほど関係なくなるという説明が他のページで見られる.また砂が流れるため内枠の不利がなくなり,コース形状的に内枠が有利になるという説も見られる.以下の表は,馬場状態不良における成績である.中枠の勝率が高いが,複勝率でみるとおよそバランスよく分布している.砂厚管理も含め枠順の有利不利がなるべくなくなるように調整している.

Table 1-5. 不良馬場における成績と馬番の関係

 不良発表ではなく水の浮いた田んぼのような馬場における馬番ごとの成績を以下の表に示す.ここ2年と同様に中枠の成績が非常に良いが1枠も良いことから判断は難しい.後述するが水の浮く超高速の不良馬場自体が2022年は減少している点も評価を難しくしている.

 Table 1-6. 水の浮いた馬場における成績と馬番の関係

 

1.5. 馬場状態と走破タイム

 馬場状態が馬番ごとの成績に及ぼす影響は小さいことが示された一方,馬場の重さ(タイムが速くなるかどうか)については大きな影響を与えるのは一般的である.通常は不良馬場でタイムは速くなり,良馬場に近づくにつれて遅くなっていく(すべての競馬場でそうなるとは限らない). 高知競馬場において良馬場はタフな馬場になるが,重馬場のすべてが軽い馬場になるわけではなく,良馬場と同程度のタフさであることも珍しくはない.また砂の変更に伴って稍重が最も力を要する馬場であるという意見もある.これは前述の通り雨で砂が流れることが予想された場合砂を追加するため砂が厚くなるため,もしくは路盤改修が行われず粉砕された微小な砂が固められて水はけが極端に悪く,内部だけが湿って重馬場と判断されているためと考えられる.すなわち新聞等に書かれる重不良馬場成績が高速馬場における成績であるわけではない.タフ馬場あるいは高速馬場適性を見抜くためには,独自のデータ整理が必要である.Table1-7に示す通り,最もタフな馬場は稍重の時に多く発生しており,良馬場はむしろ平均的なタフさに近い.

Table 1-7. 馬場状態と馬場の重さの関係(数字はレース数)

 馬場状態が極端に悪い,あるいは極端にタフな時の方が予想は難しく感じるが,1番人気の成績を確認すると,水の浮いた馬場および超タフな馬場の方が勝率,回収率ともに高くなっている.極端な馬場の時ほど1番人気を中心に馬券を組み立てる方が良い.

Table 1-8. 馬場の重さと1番人気の成績の関係

1.6. 馬場の重さの判断方法

 馬場の重さの判断は,序盤のレースで走った馬のタイムから推測すると良い.前述の通りほとんど同じ距離でレースを行っているので比較が容易である.この時に重要な事は「真面目に走りきったレースで比較する」ことである.大敗したレースは当然のこと,大差の1着なども最後は流すので評価が難しくなる.比較は「競り合った2,3着」の馬のタイムで行うことを勧める.

 レース前に判断したい時はそれまでの天候,砂厚から推測する方法が考えられるが,精度よく予想することは難しい.その場合は調教時計から推測する方が容易である.また自分での判断が難しいときは,「福ちゃん出版社のホームページ」で知ることが出来る.おおよそ2,3レース終了後に更新されることが多い.参考までにクラスごとの2,3着馬平均走破タイムをTable1-9に示す.大まかな目安として利用してほしい.

Table 1-9. 2,3着馬平均走破タイム

1.7. 水の浮いた馬場

 馬場の水はけが悪い上にスコールのような大雨に見舞われるため,田んぼのような馬場が発生することがある.この馬場は当然ながら軽い馬場となり早いタイムでの決着が増える上に,明らかに逃げ先行馬が優勢となる.ただし先行馬の注意点として基本的にインコースも使えるが,好位内は泥をかぶるため馬もそうだが安全を考えると騎手も怯む.イン先行はハイペースであれば良いポジションであるが,馬群が詰まるとスピードに乗れずに前を捕まえられなくなる可能性を考えなければならない.また軽い馬場の適性以上にハイペースの適性に注意したい.

 馬場整備の観点からはこのような水の浮いた馬場になった場合,スピードが出過ぎないように勝負どころの3コーナーから直線にかけて砂を補充することが予想できるが,直線は1レースで馬が2回通るためすぐに砂がなくなってしまう.結果として,コーナーは比較的重く直線は軽い番手馬泣かせの馬場になることがある.特に雨予報の前半レースには注意したいパターンである.

1.8. レースのペース

 特に軽い馬場でしばしばみられるが,逃げ先行が有利であるためレースのペースが上がり,ハイペースに適性のない馬が脱落することがある.予想においてはTable 1-7に示した馬場のタフさのみならずペース適性も考慮する必要がある.レースのペースを数値化する方法として, RPCI(Race Pace Change Index)を利用する.中央競馬のソフトTargetを利用していると馴染みがあるかもしれない.このRPCIは以下の式で表される.

 上式よりレースの上がりがかかるほど,分母が大きくなるためRPCIは小さくなる.すなわちRPCIが小さいほどハイペースである.ただし50が平均になるわけはなく,コースの形態および馬場状態に左右されるところが大きい.高知けいばにおいての基準はTable 1-10で確認できる

Table 1-10. クラスとRPCIの関係

 他場では上級クラスほどRPCIが小さくなる傾向が見られたが,高知ではあまり傾向が見られない.下級クラスは前半から飛ばすというより,勝負所では全頭脚が無くなりバタバタになっていると解釈できる. 4章で述べる一発逆転ファイナルレースでおなじみの記者選抜戦では,各馬色気を出して先行するため,異様なハイペースになることが多い.

1.9. 砂厚の変化

 本節では砂厚の変化および中間の天候から,内外の有利および馬場の重さを推測できる可能性を探る.1.6で述べた通り,馬場の事前予測は困難であり,通常はレースを判断材料とする.しかしレース前に馬場を把握できれば予想においては大きなアドバンテージとなる.

 事前に馬場の重さを知ることができる情報の一つとして,直前の調教時計が挙げられる.レースの数日前に追切ることが多く,その時の馬場の重さを調教時計の掛かり具合から推測する方法であるが,軽めの調教なのか,思ったより時計が出なかったのかハッキリしないため予測精度としては不十分である.

 他に数値として利用できるものとして砂厚がある.これは高知けいばの公式サイトで確認することができ,1-2コーナー,向こう正面,3-4コーナー,直線において,内ラチから1m毎に砂厚を0.5cm単位で把握できる.砂厚を公表している競馬場も少ない中,高知競馬場はかなり細かい砂厚を発表している.Fig.1-1に内ラチからの距離ごとの2019年の平均砂厚を示す.内ラチよりおよそ3~4mは砂が厚くなっており,そこから外に向かって砂が薄くなっていくことが分かる.フルゲートの1番枠がこの辺りに位置すると考えられる.(フルゲートではない場合1番ゲートを使用しないことにも注意したい)

Fig. 1-1. 平均砂厚と内ラチからの距離の関係

 しかしながら砂厚の絶対値が馬場を明確に示すことは少なく,かなり極端な値にならない限りは内外の有利もタフさとも関連がない数字である.この砂厚の変化で分かることは,砂が補充されたかどうかという点である.Fig. 1-2に測定された砂厚の合計値の増減を示す.砂厚がおよそ180cmとなったところで補充する事が多い.開催の前の段階で翌日に砂が入るかどうかの推測が可能である.当然ながら,当日の砂厚の合計値が前開催日より増加していれば,砂が投入されたと言える.

Fig.1-2. 測定された砂厚の合計値の増減

2章 騎手と調教師

2.1. 騎手

 高知けいばにおいて馬券を当てるために最も重要なファクターの一つが「騎手」である.技術の差のみならず,起用法から厩舎陣営のやる気が推測できるためである.以下の表は2022年の高知競馬所属騎手の勝率および連対率である.2022年の成績順に騎手を並べている.1,2位と下位では連対率に約5倍の差がある.しかし上位の騎手を買っても人気があるため高い回収率には繋がらない.当てるという観点からは上位騎手を外しにくいが,回収率を考えると騎手買いは避けるべきである.しかしこの騎手だから買わない,という作戦は有効である.

Table 2-1. 2022年高知競馬所属騎手成績

 騎手の馬番別複勝率をTable2-2に示す. 騎手の得意戦法や技術の差で得意な馬番に差が出ている.近年と比較するとインコースが使える割合が上がったことから上位陣が内枠から中枠を選択し成績を上げている.

Table 2-2. 騎手の馬番別複勝率

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