112年度(2023年)高校野球リーグ戦木製バットの部 決勝 平鎮高中VS穀保家商 を振り返る


先日2月28日、嘉義市KANO野球場で行われた台湾高校野球木製バットの部決勝は、新北市私立穀保家商が2-1の僅差で桃園市平鎮高校を破り、今大会2連覇を達成した。昨年11月に行われた第11回ブラックパンサーカップ(台湾の甲子園)準決勝でも戦うなど、数多くの大会で台湾高校野球の頂点を争い合う両校の戦いは、まさに技と技のぶつかり合うレベルの高いものだ。

両校の先発投手をつとめた穀保の張峻瑋(ジャン・ジュンウェイ)、平鎮の林維恩(リン・ウェイエン)は、ともにU18台湾代表経験のある投手だ。そのため、今試合は昨年のブラックパンサーカップと同様に、ロースコアの試合展開が予想された。

1回の表、平鎮高中の攻撃
穀保の張峻瑋は、150キロのストレートと130キロ後半のスライダーを織り交ぜ、簡単に2アウトを取る。
平鎮の主砲柯敬賢との注目の対決では、153キロのストレートなど力強い球を投げ込むが、結果はストレートの四球。
4番徐紹予の5球目、1塁ランナー柯敬賢がスタートがスタートを切る。152キロのストレートを逆らわず、右方向に流した打球を12塁間を抜けて、ヒットエンドランが成功。平鎮高校は、ツーアウトながら1,3塁のチャンスをつくる。
しかし、続く5番曾聖安は、2球連続の変化球で追い込まれる。1球ファールで粘るが、最後は外側ストレートであえなく空振り三振。

1回の裏、榖保家商の攻撃
昨年のブラックパンサーカップでは、榖保打線に完封勝利した林維恩がマウンドに上がる。
林維恩は、まず先頭打者の何品室融を得意のアウトコースのストレートで空振り三振に取る。
2番の劉承佑に内野安打を打たれるが、続く3番をサードゴロゲッツーに打ち取り、初回を三者凡退で終える。

両投手ともに初回はまずまずと立ち上がりだった。特に、ピンチを迎えた際の張峻瑋のギアチェンジ、そして空振り三振を奪う様は圧巻だった。

試合が動いたのは、2回の表、平鎮高校の攻撃。
この回、先頭の王興楷は、甘く入ったゆるい高めの変化球を逃さず、レフトの頭を越す2塁打で、大きなチャンスをつくる。
バントで送り、1死3塁。
8番胡振利に対する3球目、張峻瑋の力強いストレートをホームベース付近でバウンドするが、捕手李安家は素早い反応で見事にパスボールを防ぐ。
5球目、胡振利が打った打球は、ショート正面に飛ぶが、打球はショートのグラブを弾き、エラーで平鎮は1点を先制する。
この回、平鎮は、合計で2回のバントを試み、どちらも見事成功させている。初回のエンドランも含め、長打だけではなく、きっちりと小技を絡めて、得点を取る野球が浸透しているようだ。

次のポイントは、4回の裏、榖保の攻撃。
先頭の陳陸衡は、レフト前ヒットで出塁。
4番宋柏翰は、初球からバントの構え。榖保は、バント若しくは、エンドランで得点圏にランナーを進める狙いだ。脚の速い陳陸衡を警戒するバッテリーは、牽制を挟むなど警戒をしながら投球を続ける。
牽制を挟んだあとの4球目、エンドランを読んだ平鎮の捕手江庭毅はウエストを指示。捕球後、そのまま2塁へ見事な送球をし、スタートの遅れた陳陸衡を刺す。これで、1死ランナー無しになる。
しかし、その次の球を、4番宋柏翰がライトに運び1死1塁となった。
5番、李安家は2打席連続のライトフライに倒れる。
6番、蔡琞ㄕㄥˋ傑(ツァイ・シェンジエ)が、ライト前ヒットを放ち、1,3塁のチャンスをつくる。
続くバッターは、四球で2死満塁の好機到来となった。
3回以降、平鎮の林維恩は、投げたあとの動作が大きくなり、球が全体的に高めに浮くようになり、制球に苦しむ場面が多く見受けられた。
8番、古定玄に対しても2球ボールが続いた。4球目、甘く入った球を捉えた打球は、センターの前に転がり、一挙2点を得る決勝打となった。

古定玄は試合後に、「今日の試合の林維恩はコントロールが良くなく、ストレート主体の投球だったため、自分を信じて、ストレートを打ちに行った」と語っている。
また、榖保の鄭志強監督は、今大会では左投手と対戦する際、各選手に平鎮の林維恩を意識して打席に立つよう指示を出しており、そのイメージトレーニングが決勝戦の結果を生んだと語っている。

榖保の先発張峻瑋は、7回途中まで投げ、投球数100被安打2四死球2奪三振5という投球内容だった。卒業後の渡米を見据え、良いアピールとなったようだ。
対して、平鎮の林維恩は、制球に苦しむことが多く、それが得点を与える結果となった。調子の上がらない状態で、どのように試合をつくる投球をしていくかは、今後のためにも克服しなければならない課題となるだろう。成績は、投球数76被安打6四球3奪三振2。ストレート主体の投球だったため、被安打が多めだったが、三振や空振りを奪ったストレートのキレは、健在だった。
この両投手以外にも、優秀な選手を多く抱える両校の動向には、これからも注目していきたい。




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