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クルトワって何がすごいの??

どうもcrackです。noteに出没するのがお久しぶりすぎて忘れていた方も多いのではないでしょうか、ましてや最近僕のことを知ったフォロワーの方は僕がノートに手を出していたことすら知らないのではないでしょうか笑

今回の記事ではここ数年マドリーの守護神として絶対的な存在感異次元なセーブでファンを魅了し続けているクルトワ様について書いていきたいと思います。

私crackもクルトワという選手にゾッコンで、近頃は毎試合後に「世界1のGKはクルトワだ」とつぶやく害悪信者っぷりも見せています()
 実際、彼はすでにファンの心を掴んで離さないものとし、カシージャス以来のマドリーの守護神の正統後継者として、レジェンドを含む全世界のマドリディスタたちに認められていると思います。クルトワのアイドルで、マドリーのレジェンドのイケルカシージャスも彼のすばらしさには心酔している様子なんですよね(僕が彼を推す理由としては正直これが1番大きい)
当のイケルカシージャス様はTwitterで


”The best goalkeeper in the world! There is no other! 🧤🚫 🥅”
(訳)世界最高のGKだ!唯一無二!!  

このようにコメントしており、その関係はまさに相思相愛。クルトワ本人も少年時代からのお手本でありアイドルでもあるレジェンドからこんなベタ褒めされていて、選手としてこんなにうれしいことはないですよね(超絶うらやましい)

近頃の試合中のTLを見ていても、毎試合毎試合「クルトワ神!!」「クルトワスゲー!!やべー!!」というような声で盛り上がり、クルトワが世界一のGKだとマドリディスタが騒ぎ立てる(僕だけ)日々が続いていますが、何がすげーのか、何が異次元なのかって誰も言語化していないと思うんですね、そこを今回はGKをすこ~しだけかじっていたcrackの目線から紐解いていきたいなと思っています。
 この記事を読んだ人は次の試合から「クルトワのこのセーブは手の角度が絶妙にうまいね」、「この1対1は距離の詰め方が絶妙だね」と有識者っぽいコメントができるようになっていることでしょう(絶対に嫌だ)


1.数字で見るクルトワ

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Thibaut Courtois (1992年5月11日:29歳) 199cm91kg
18/19~ レアルマドリー所属

18/19 33試合 46失点 10クリーンシート(=CS)
被枠内シュート数130本 セーブ数91 セーブ率70.0%
19/20 43試合 32失点 21CS
被枠内シュート数135本 セーブ数104 セーブ率77.8%
20/21 51試合 44失点 21CS
被枠内シュート数153本 セーブ数118 セーブ率76.5%
21/22 42試合 35失点 17CS (チェルシー戦1st Leg終了時点) 
被枠内シュート数153本 セーブ数120 セーブ率78.4%

マドリー在籍4年間 169試合 157失点 69CS
被枠内シュート数571本 セーブ数433 セーブ率75.8%

セーブ率でいうと、喰らったシュートの質がそれぞれ全く違うのでGKのレベルと直結するとは言えないのですが、大体アトレティコマドリーのオブラク選手と同じですね。(オブラクの18-22シーズンのセーブ率は75.5%) 特にエリア外からのシュートに強く、エリア外の失点が18/19シーズンに2失点、19/20に1失点、20/21は3失点ととても少ないですね。クルトワのセーブの何がすごいのかは後述しますが、まあこのデカさで飛んでしまえばゴールのほとんどを隠せてしまうのでそりゃ止めれますよね、彼のセーブはそれくらいの温度感で見て大丈夫です()

また、クルトワのすごいところのうちの1つとしてクロス対応、ハイボールの強さがあげられると思いますが、彼はペナルティエリアに入ったクロスボール全体の9%をマドリーに来てからの4年間で阻止しています(1229本中110本)。これだけ見てもどれだけすごいかのイメージがはっきりしないと思いますが、直近の4シーズンでオブラクは6.9%テアシュテーゲンは8.25%マヌエルノイアーは6.0%と、ここ数年の世界最高のGK論争で主役になってきたGKの中でもトップクラスの数字をたたき出だしていることがわかります。さらに、セットプレー(CK・FK)からの失点が直近4シーズンでクルトワは15失点オブラクは20失点テアシュテーゲンは23失点ノイアーは17失点と、このデータもクルトワのハイボール処理能力の高さを表していますね。
 彼のハイボール処理でほかのGKと何が違うというとやはりその199㎝の身長と長いリーチを活かしたキャッチの安定性の高さだと思います。背の低いGKだと触るだけになってしまったり、パンチングを最初から狙いに行くようになってしまうのですが、クルトワの場合はキャッチする確率がめちゃめちゃ高いですよね。ゴールエリアに入ったボールならほぼ確実にキャッチするくらいの感覚で止めてくれるので相手の攻撃の芽をしっかりつぶせます。マドリーのDF陣を考えると現在はアラバとミリトン、昨シーズンまではラモスとヴァランがCBで出ていて、ビルドアップ能力&対人能力の高い選手+身体の能力の高い選手のCBコンビが定石で、高さが弱点になることもあるので、相手のクロス戦術がつぶせるとそれだけでかなりのアドバンテージになりますね。

2.シュートストップの特徴

クルトワといえばエリア外からのシュートストップに目が行くと思います、GKの1番の見せ所ですよね。先述した通り、エリア外からの失点はめちゃくちゃ少なくて、試合を見ていても絶対的な安心感があります。

反応が早く、ステップを細かく踏み、ピョンピョンしているGKをネコ、長い手足を生かし、ゴールの隅々まで手を伸ばしセーブするGKをクモと例えることがよくありますが、彼のはまさに、ネコとクモのハイブリットのようなGKであると言えます。
 彼のアイドルであるカシージャスや、CL3連覇時代の正守護神であったケイラーナバスも完全なネコ型であったように、マドリーの歴史の大半はネコ型のGKとともに歩んできたといっても過言ではないでしょう。それが関係しているのかどうかはわかりませんが、マドリーのGKトレーニングを見るとテニスボールを使い反応速度を高めるセーブ練習や、足でボールをセーブする練習、障害物を使って動きを限定した中でシュートストップをするものだったり… どれも細かい動き素早い反応が求められるような練習になっています。加えてほとんどのボールが至近距離から放たれ、2ndボールに対するリアクションがついてきます。これを見るとマドリーが求めるGK像や、リーガで戦うのに必要な能力がはっきりと見えてきますよね。
 マドリーが求めるGK像と言いましたが、マドリーではGKだけでプレーが切れることが第一に求められていると思います。簡単に言うと「シュートは極力ピッチ外に向けて弾きなさい」ということです。よく1stシュートは止められるけど詰められて決められてしまうよねってGKがいると思いますが、それがマドリーではNGとされています。マドリーはもともとシュートをめちゃくちゃ打たれる(打たせる?)チームなのでそのたびにエリアの中にボールを残されてしまったらたまったもんじゃないんですね。18/19、加入当初はこのシーンが割と多かった記憶があるのですが、試合を重ねるごとに弾く位置が良くなり、それに応じて失点も減っていきました。カシージャスもこの能力は抜群に高かったと思います。
 
シュートをより遠くに、外に弾くには掌底の部分(手のひらの手首に近い肉が厚い所)でボールを強く押し出すのですが、クルトワの場合はリーチがあるので小さいGKじゃ指先で触るのが精一杯のようなボールでも、彼なら両手で行けたり、ボールに確実に力を伝えることができます。
 そして、細かいステップを踏みながらポジション修正を繰り返すことでより確実にボールに対してアタックしています。ナバスで痛い思いをしてきたマドリディスタの方々()はこのポジション修正の大切さがわかると思います。クルトワはこういう細かい動作をサボらない真面目さも評価されるポイントですよね。

クルトワのシュートストップでもう一つ素晴らしいのは足を抜くセーブ(コラプシング)ですね。彼がチェルシー時代からよくやっていたものなのですが、シュートに近いほうの足を抜き遠いほうの足で地面を蹴る。そうすることで重力も加わりより早く体を倒すことができるという技術です。
 これを利用すると反応する時間のないような速いシュートだったり、ブラインドになっていて反応しにくいシュートに反応できるようになります。

クルトワは反応がとても良いんだと言いましたが、この技術を極めているのでそのように見えるというのもあると思います。現代サッカーではしっかりとブロックを敷いて守備をするので、ブラインドになった状態からシュートを受ける機会がどんどん増えてきていていますし、このコラプシングという技術はどんどん重要度を増しているんですね。リーガだと特にブロック形成を意識した守備を行うので正しいポジショニングや素早い反応が求められます。
 また、クルトワほどリーチがあると逆にそれが反応を遅らせる要因になってしまいます。リーチのある選手の唯一のデメリットはそれだと思うのですが、クルトワはそれをコラプシング能力でカバーしているんですね。離れた位置からのシュートに対してはクモのように振る舞い、至近距離のシュートに対してはネコのようにプレーができる。それがクルトワがネコとクモのハイブリットだといえる理由だと思います。

3.クルトワの1on1のすごさ

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彼は2で書いたような長いリーチを生かしたシュートストップにばかり目が行きがちだと思うのですが、私が彼を見ていて1番素晴らしいと思うのは1on1の対応の巧さだと思います。1試合に1つ~2つの1on1を当たり前に止めてしまうので、マドリディスタのみんなは感覚がマヒしてる感じすらしますけど、普通に考えたらあり得ないことですからね()、マドリディスタ以外の方も1on1のところに関してはバッコバコ止めるので驚かれると思います、実際にみんなに見てほしいクルトワのすげえところNo.1な気がします。
 私のアイドルでもあり彼のアイドルでもあるイケルカシージャスも1on1には抜群の強さを誇っていました。両者とも圧倒的な反射神経を生かしたセーブが売りではありますが、カシージャスの1on1とは少しタイプが違いますね。結局のところ1on1に関してもクルトワの圧倒的なサイズとリーチの長さを生かしているというところに帰着してしまうのですが、そこにも巧さが詰まっているので見てもらいたいです。

まず、彼の1on1では「体のどこかにボールを当てようね」というような対応がほとんどです。ある程度距離を保ちながらショットストップと同じように手先でボールを掻き出す形ではなく、相手がシュート打つ瞬間に相手の視界からゴールを隠しシュートをブロックする形が、クルトワの1on1対応ではメインになってきます。前者はセーブ、後者はブロック。こういう認識でいると理解しやすいと思います。
 もちろん、クルトワの場合はそのサイズとリーチを最大限活かすためにこのスタイルを採用しているわけですが、これにもコツがあってですね、ただデケェだけじゃダメなんですね、彼の場合は距離感(間合いの詰め方)が本当にうまいです。

19/20 El Clasico (H) アルトゥールとの1対1

上の画像は、ボールのある位置とゴールの4隅を線で結んだ図なのですが、この4つの中というのが実際のシュートコースといわれています。間合いの詰め方が上手いと、この画像のようにゴールをほとんど隠すことができるわけですね。ここでは「セーブをする体制になった瞬間にシュートコースをなくせる距離」を間合いとしています。当然クルトワくらいになるとサイズがあるのでこの間合いが他選手に比べて広いんですよね、正直この間合いの広さ懐の深さもチートといわれている理由のひとつです。海外だとこのブロックは”Xブロック”みたいに言われたりしていますが、これに関してクルトワは間違いなく世界1ですね。

実際に彼の1on1対応を見ていると分かるのですが、ラストパスがシューターにわたるまでの間、ファーストタッチからシュートが放たれるまでの間、スピードに乗ったドリブルをしてからシュートモーションに入るまでの間、などなど相手からボールの離れるタイミングをしっかりみて、距離を詰めるチャンスを逃さないのがいいところですね。そして最終的に相手がシュートモーションに入った時には構えができている。この駆け引きを正確に、基本に忠実に、さぼらず行うことでクルトワの間合いに引き込むことができています。この動きも全く無駄がなく洗練された動きで美しいです。


番外編.クルトワの股下問題

「股がガバガバ」「クルトワの股はユーロトンネル」なんて言われてた時代、ありましたよね。実際マドリディスタもクルトワ加入当初は彼は股下が弱いというイメージを持っていた方がほとんどだったと思います。
 でもマドリーに来て以来、あんまり股下を通されて決められることがないように感じませんか?そこをここでは番外編として、チェルシー時代とマドリー時代を比べながら考察していこうかなと思います。

まず皆さんに知っていてほしいのは、背が高ければ高いほど、リーチが長ければ長いほど股下のケアは難しくなるということです。それを踏まえてチェルシー時代のいろんな動画を見ていて疑問に感じたのはクルトワのスタンスの広さ(構えの大きさ)ですね。
 チェルシー時代のクルトワはサイドステップで移動するときも1歩が大きく、1対1のシーンでも割とがっつり足を広げたスタンスをとっていました。もちろん歩幅が大きいほうが早く移動できるし、足を広げた構えをしたほうがより遠くのボールに届きやすくなるというような利点もありますがそれだと股抜かれるよね…みたいなスタンスをとっていることが多かったです。

加えて、チェルシー時代のクルトワさんはプレジャンプ(シュートを打たれる直前の予備動作)の時にさらに足を広げてしまう癖があることに気づきました。

シュートフォームに入った瞬間
ボールが相手の足から離れる瞬間

上の2つの画像はバルセロナ対チェルシーの試合でクルトワがメッシに股を抜かれたシーンなのですが、1つ目と2つ目の画像を見比べるとプレジャンプでさらに足を広げているのがわかります。ここはマドリーに来てから明確に改善されていると思います。

股抜きを防ぐためには股を抜けると思わせないことが1番の対策法だと私は思っています。シューターはシュートを打つ前にキーパーを見ますが、シュートを打つ瞬間はキーパーなんて見ずにボールだけを見ますよね、相手がキーパーを見てるときに「あ、股下はないな」と思わせることができればクルトワでも股下を狙われることはないのです。マドリー加入以降のクルトワは1on1でじわじわと距離を詰めている間はコンパクトなスタンスをとり、しっかりと我慢するということが徹底されています。

ネーションズリーグ イタリア対ベルギーでのセーブ

この構え見てください、超コンパクト。明らかに改善されていますよね。

おわりに

今回のノート、いかがでしょうか。めちゃくちゃ長かったですよね()
クルトワの解説だけでおよそ6000字くらいあったのですが、最後まで読んでくれた方々、本当にありがとうございます。

 ここ2~3シーズンで大躍進を遂げているクルトワ様ですが私が一番評価しているのは基本に忠実なプレー、真面目さなんですよね。199㎝という圧倒的なフィジカルアドバンテージを持ちながら、彼のセーブにはサボりや妥協が見られず、基本動作にのっとったものばかりで、本当に素晴らしいものばかりです。
 
彼のアイドルであるカシージャスはマドリーでキャリアをスタートさせ、去り方こそよくなかったもののW杯、EURO、CL等々輝かしいタイトルに囲まれながらキャリアに幕を閉じました。また、クルトワの前の正守護神であったナバスは前人未到のCL3連覇を成し遂げたメンバーとしてマドリーの歴史の一部になりました。
 今のクルトワの実力はこの2人に勝っているという意見もありますが、彼が名実ともにこの二人を超えるにはタイトルだけが足りない、タイトル至上主義を掲げるこのクラブではなおさらです。彼のキャリアを華やかなものにするために、進化し続けるこのクラブでたくさんのトロフィーに囲まれながらキャリアを終えれるようにこれからも精一杯応援していきたいと思います。
Hala Courtois, Hala Madrid👑

お読みいただきありがとうございました。

選手写真:https://www.gettyimages.co.jp/
選手データ:https://fbref.com/en/

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