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【Música】Sagrada Familia Cathedral - Francis Poulenc "Mélancolie" KALEVI KIVINIEMI

Francis Poulenc "Mélancolie" KALEVI KIVINIEMI https://youtu.be/PHgilbdIgd0

ガウディが音・音楽をサグラダファミリア大聖堂においてどのように位置づけているかを明確にしたいと考えた。楽器については,「鐘学的なる建築-ガウディのデザインとリズム」(秋山邦晴)や「ガウディの設計態度」(松倉保夫)など信頼できると思われる国内資料からでも,チューブラベルや双曲線状のパイプ型の鐘などが造られたことを"事実"として認識できよう。特に,1915年から1917年にかけて,ガウディは鐘を製造し,実際に鳴らして音の伝搬実験をしたということである。したがって,主たる楽器が鐘であることは,その形状を別にすれば,明確である。また,誕生の門のファサード内側付近には合唱隊のための窪んだ空間を確認できるので,鐘と合唱による音楽をガウディはまず構想していたと考えられる。
むしろ重要なことは,どうしてサグラダファミリア大聖堂において音楽を不可欠な要素とガウディが捉えていたかである。サグラダファミリアは巨大な石の森であって,ガウディにとっての「自然」を体現しているのではなかろうか。その自然は石によって固定されたものであってはならず,植物のようにメタモルフォーゼするものであろう。そのような無限的な変貌は螺旋状の階段などで表現されているが,音楽によって表現することが最適だと考えられる。変幻自在な音・音楽を基調(生命)とするガウディの自然観を「音響ナチュラリスモ」(acoustic naturalismo)と呼びたい。この自然観を16年度にはさらに掘り下げる予定である。
サグラダファミリア大聖堂は楽器であるともに礼拝の場でもあるので,両者のバランスが取られなければならない。鐘楼内部にある円筒状空間の連続は一種のマフラー(消音器)であり,音響的なバランスを実現するための考案であろうと予想される。そこで,鐘楼下部を簡略化した25分の1の縮尺模型をアクリルで製作し,その頭部に音源を置いて,音の内部伝搬や減衰効果を測定した。身廊の天井位置が不確定ではあるが,モデル実験からマフラー効果を確認できた。

吉川 茂
サグラダファミリア大聖堂においてガウディが構想した音楽と楽器に関する研究

ガウディによれば、サクラダファミリア大聖堂の全体は1つの巨大な楽器として構想されていた。鐘の音楽と協会における礼拝との間での音響的なバランスをとるべく鐘楼の下部構造は一種のマフラー(消音器)になっている。生誕の門の左側(外から見て)の塔(ツインタワーの形をしている)に着目して、そのほぼ下半分の基本構造を1/25縮尺模型で再現し、上部に音源(「鐘」の代用)を置いて音の伝搬特性について実験した。音源スピーカーから14〜96kHzの広帯域信号を入力し、音響レベルを測定したところ、身廊部では約35dBの減衰があり、隣の塔ではさらに約10dBの減衰が見られた。上部構造からの放射に適合する鐘は細長い形をしたチューブラベル・タイプである。ピッチを決める主要な振動モードは(1,4)であり、両端では円形断面を保ちながら左右の5本(G5,A5,B5,C6,D6にチューニングされている)のベルに関する実験から確認した。ただし、ピッチがいくつかの部分音の寄与によって決まるのではなく、たった1つの振動スペクトルによって決まるので複数本のチューブラベルを組み合わせるときの効果は期待できない。生誕の門のファッサードにおける彫刻群「天使の合唱隊」などから予想される音楽的シーンは「復活祭の鐘の音と合唱の声」とか「エオルスの琴の音を伴奏とする妖精たちの合唱」などである。一方、塔、チューブラベル、螺旋階段などは完結性を意味するポジティブな円環であるとともに「樹木」のように閉ざされることのない「有魂」の「器官」を象徴している。サグラダファミリア大聖堂は鐘および合唱の音楽と合体することによって初めて「母なる自然の創造力と養育力(ゲーテの言う自然の治癒力)」を体現でき、「ガウディの聖堂」にふさわしくなると推測できる。

吉川 茂
サグラダファミリア大聖堂においてガウディが構想した音楽と楽器に関する研究

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