Snarky Puppyのすごみ

DIRTY LOOPSのライブの感想も書かずに何を書いているんだという感じですが、それはRun awayのも込みでいつか書きます。僕は今Snarky Puppyの話がしたいのです。何故なら先週ライブに行ってきたから。それも目の前にマイケルリーグまさにその人がいて、なんなら少し話すこともできたくらいの良い席だった。席の良さはライブのクオリティに関係あるのかというと多分かなりあって、同じ会場のDIRTY LOOPSのライブは音が少しウェットで違和感があった。それに対して今回は生音もアンプを通した音もそれぞれ綺麗に聴くことができたし、何よりベースの返しが目の前にあったり運指がありありと見えるおかげでリーグの存在感をこれでもかと感じることができた。今回はそういうお話。

Snarky Puppyとはご存知の通りジャズにルーツを持つビッグバンドである。レギュラーメンバーと呼ぶべきものはいるが、外部の奏者を招き入れることも多く、その核を担うリーダーでベーシストのマイケルリーグ以外はかなり流動的であると言える。そしてリーダーであるリーグの役職は多岐にわたる。演奏はもちろん、作曲、編曲、指揮、演出、プロデュースとありとあらゆることをやってのける。その彼についていく演者も皆ワールドクラスであり、エスタブリッシュドなプレイヤーも数多くいる。たとえばラーネルルイスやコリーヘンリーなどはともにそれぞれの分野で世界一の、と形容されることも珍しくないように思う。そしてさながらB'zのようにすべての曲に幾らかのソロが含まれるがそれを演奏するのはそういったワールドクラスたちで、リーグがソロをすることは稀である。しかし、やはりSnarky Puppyはリーグのアンサンブルなのだと気付かされた。

つまり、リーグの監督、演出、奏者としての役割が偉大すぎるのだ。それは編曲や指揮というようなライブの外側での仕事だけでない。このバンドのビートの骨格は、今やラーネルではないと僕にも感じられる。ツインどころか3人以上のドラマーが同時に叩くことも往々にあるが、その誰でもない。あるいはパーカスたちでもない。やはりマイケルリーグその人こそがこのバンドの頭脳で神経で骨格なのだ。彼に導かれるようにそれぞれの演者が素晴らしい演奏を紡ぎ上げていく。そしてそのカオスをリーグがひとつのハーモニーとして仕上げていく。ベースの威力というのを体現しているのが彼である。僕が惹かれるベースとはヘンリックやコールのような前に出るものであり、屋台骨のベースではあまりなかった。しかし目の前に彼を感じて、そのベースの深淵を見せつけられた。

そして何より素晴らしかったのが、彼の足し引きのセンスだ。どのように盛り上げ、緊張感を出し、静寂を少しずつ打ち破り、そしてフィナーレに持っていくのか。目の前で鳴る音すべてをひとつも逃さずに感じられるからこそ、この足し引きがいよいよ凄まじい破壊力を持っていた。テクニックのみならず感情表現でも訴えかけてくる。だからインストだけのステージでも1時間半があっという間に過ぎ去っていった。

あれほどの音楽体験は、ほかのどのバンドにもできないだろう。Snarky Puppyは本当に素晴らしかった。いつか、あのスタジオ収録に参加することができたらこれ以上の経験はない。

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