"天空の城ラピュタ"を一度も見た事が無いのでインターネットで得た知識だけでストーリーを妄想する
時は1960年代。
この世界にはこんな伝説があった。
"飛行石を手に入れた者の眼前には天空の城ラピュタが現れる"
"ラピュタは楽園、この世で最も美しい天空城"
"飛行石の力を借り、天空へ舞い登れ"
この伝説を信じ飛行石を追い求める1人の少年がいた。
彼の名はパズー。彼は幼少期に伝説を祖父から聞いて以来すっかり虜になってしまった。
日々飛行石を探す為の発明に明け暮れていた。
彼には発明の師匠がおり、その工房の一部を借りて手伝いをしながら研究を行っていた。
ある日、いつも通りパズーは工房で手伝いをしていると空から一筋の光が差し込んだ。
「親方!空から女の子が!」
そう叫んだ数秒後、少女はパズーの手にフッと優しく舞い降りた。
少女は目を開けこう言った。
「私の名前はシータ。あなたは誰?」
パズーは一瞬戸惑ったがふと、ラピュタに纏わるこんな伝説を思い出した。
"空から少女が舞い降りし時、汝はラピュタに選ばれし者である。案内人となってくれよう"
パズーは瞬時に理解した。
彼女がそうに違いない。ワクワクしながらラピュタへ連れて行ってくれと話すがシータは俯いたまま喋らない。
「私…記憶が無いみたいなんです」
それから2人の生活は始まった。
パズーはシータにこの世界の事を沢山教えた。朝ご飯のおいしさ、お風呂の気持ち良さ、友達の大切さ、喜びや悲しみ、時には喧嘩もした。
シータはすっかりこの世界に懐いた。
ある時パズーはシータが首から下げている大きなペンダントに気がついた。
何故今まで気づかなかったのか。
シータはひと時たりともそのペンダントを外そうとしなかった。
「シータ、そのペンダントって大切なものなのか?」
「多分そう…だと思います。わからないけど、これだけは無くしちゃいけない気がするんです。」
「そっか」
そしてパズーの研究はかなり進んでいた。
ついに飛行石をセットし、力を借りる事によって空を飛ぶ事が出来る自作飛行機を完成させた。
その時、シータの胸のペンダントが強烈に光り出した。
そう、それこそが探し求めていた飛行石だったのである。
その強烈な光を感知し、遠くで不敵に微笑む男がいた。
彼の名はムスカ。軍の大佐で、飛行石を手に入れラピュタの財宝を独り占めにしようと企む悪しき者である。
ムスカは部下を呼び、飛行石の奪取と少女の拉致を命令した。
ムスカとその刺客と対峙したパズーとシータは呆気なく敗れ、まんまとシータ飛行石を連れ去られてしまった。
シータは飛行石を奪われ、ムスカの飛行船に監禁されてしまった。
ムスカは早速飛行石を装置にセットした。が、反応しなかった。
シータは何も喋らない。
シータの頭の中では先の強烈な発光の時に蘇った記憶の一部、2つの言葉が浮かんでいた。
1つは飛行石を使いラピュタへと導く呪文 "パロ"
もう1つは飛行石を手に持っている者の視力を奪う呪文 "バルス"
そして、どちらか1つの呪文を使った後、飛行石は壊れてしまう。
バルスを使ってムスカを倒す事は出来るが、そうするとパズーはラピュタに行く事が出来なくなってしまう。
シータは黙秘を続け考えていた。
そしてこれから先どんな尋問、拷問が行われようと決してラグスは教えまいと心に誓った。
が、様子がおかしかった。ムスカは尋問も拷問もして来なかった。むしろ快適な生活を与え続けていた。
ある時シータはようやく口を開きムスカに問うた。
「何故あなたは私に何もしてこないの?」
ムスカはこう答えた。
「私もかつてはあの少年のようにラピュタに夢を馳せ、追い求めていた。ただ、それだけだ」
続けてこう言った。
「私は飛行石を起動させる呪文を知っている。が、直接君の口から聞き出したかった。3分間待ってやる。心を決めてくれ」
刻一刻と迫るその時を黙って待つ事しか出来ないシータ。
部屋には嫌な静寂が流れる。
外は嵐で荒れに荒れており、その風の音だけが鼓膜を揺らした。
ムスカに情が映った訳では無い。
強引に飛行石を奪う彼はラピュタ向かう者に相応しくない、いや、それは恐らくムスカ自身が1番痛感しているであろう。
だからこそ、飛行石起動の呪文だけはなんとか使者であるシータから自発的に聞き出そうとしたのだ。
シータがムスカの背中を見ると少し小さく、でも暖かそうに見えた。
タイムリミットが残り1分に差しかかろうとしたその瞬間外から声が聞こえた。
「シータ!!!!!」
声の主はパズーであった。パズーは自身の飛行機を原油で動けるよう改造し、シータを助けに来た。
そしてシータは意を決して叫んだ。
「バルス!!!!!!」
刹那ムスカのメガネは割れ目が爆発した。
「目があああああ!!目があああああ!!」
踠き苦しむムスカから鍵を奪い、2人は嵐を潜り抜け地上へと戻った。
去り際にチラと見えたムスカの横顔はどこか微笑んでいるように見えた。
地上へ着き抱き合う2人。
「本当に無事で良かった」
2人が空を見上げると先程までの嵐はやみ、快晴の空が広がっていた。
2人は息を呑み、その景色に見惚れていた。
後ろから「おーい!2人とも!」
と友人や家族が駆け寄り無事だった事をひたすら喜んでくれた。
空からは先程の嵐の名残りと思われる水滴がまだポツリポツリと舞い降りている。
そしてこの一粒一粒が自分達を励ます皆の声と混ざり合い、背中を押してくれる気がした。
この世の全てが財宝であり、2人にとって掛け替えのないものだと実感した瞬間であった。
そして2人はこう言った。
「ラピュタは本当にあったんだ」と。
完
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