安田記念 全頭前走分析
①カテドラル C
前走大阪杯 9着 16番人気
作りはマイラーっぽく、歳も歳で緩い仕上げ。相変わらず自分との戦いで、終いを伸ばしての奨励金稼ぎ。折り合ってインで脚を溜められる上手さがあるだけ。
②ガイアフォース B+
前走フェブラリーS 2着 5番人気
初めてのダート戦を見事にこなして連対。昨今の高速決着のマイル戦よりもスタミナを活かせるダートのほうが合っていた。スタートも上手くポジション確保にも苦労しない。単騎追走になっても集中を切らさずに追い出しポイントを探る。直線で外に持ち出す際にロスがあったものの、瞬時に立てなおししぶとく伸びた。勝負根性もある。
③レッドモンレーヴ C
前走京王杯SC 2着 2番人気
ダートっぽい作り。依然としてスタートはのっそり最後方から。1着馬以外は重賞でどうこうできる実力が無く、速い上がりにも対応できなかったが、こちらは32秒2の最速の上がりで駆け、勝ち切る勢いで走破。勝ち馬を交わした瞬間にソラを使ったのか、ゴール前で差し返された格好。高速馬場というわけではなかったが、この末脚は相当大きな武器になる。ただ、1400mが合い過ぎているので、もう一つギアが必要になる緩まないG1のマイル戦では生かしきれない。
④ジオグリフ B+
前走大阪杯 5着 8番人気
喉なりという病気を抱えながらG1でも勝ち負けできるまで良化。前走も仕上げは良く、ゲートからゴールまで集中を切らさずに走り抜いた。さすがは皐月賞馬。
道中は少しストレスの掛かる位置取り。勝負所で押っ付けて出てきソールオリエンスに被され、壁にしていた勝ち馬(ベラジオオペラ)との間合いを上手く取れなかったことでリズムが崩れてしまった。加速域を上手に作れずに伸びきれなかったのは非常にもったいなかったが、良いレースはできた。もう一つ上を狙ってもいい状態にある。
⑤ナミュール B
前走ヴィクトリアM 8着 2番人気
海外競馬2戦後。雰囲気は決して悪くなかった。
スタートは出遅れて最後方。道中も動かず後方のまま。直線に入って追ってしっかり伸びては来たものの、周りに頼る馬がおらず、内にササってまともに終えず。それでも結果は僅差。いろいろと勿体ないレースだった。良い頃の状態にあれば、ここでも勝ち負けになるはずだが、左回りだとササル分、本来の力を発揮できない可能性もある。
ただ、もし道悪になったら、良馬場で求められるスピードが不要になり、その不具合は解消されるかもしれない。道悪なら好走する可能性はアップする。
⑥ドーブネ C
前走中山記念 2着 10番人気
小雨で稍重。そもそも内回りコース。そのうえに時計が掛かる馬場状態。厳しめのラップを刻んで逃げる思い切った戦法を取った。この馬は逃げたほうが持ち味を生かせる。1000m通過が58秒6はかなりのHペース。本来なら差し馬が有利な展開なのだが、道が悪い上に小回りコースであるがゆえに差し馬も足の回転が上がらない。結果、逃げた本馬と先行した2頭で決着。ハナに立てたことと、体力勝負で有利な展開に持ち込めたことが好走に繋がった。
今回も雨で急激に馬場が悪くなるなら一考の余地はあるが、どうやらそうはならなそう。
⑦ロマンチックウォリアー A
前走QE2世C 1着
日本からはプログノーシス、ノースブリッジ、ヒシイグアスの3頭が参戦。これらを完封。
1000m通過が1分丁度。少し時計がかかる馬場状態でもこのラップなら先行馬が有利になるわけだが、そんな不安をものともせず、勝ちきりに態勢に入った日本馬らを準捲りの競馬で渋く差し切った。
スタートはいつも完璧。常に枠順なりのポジションで、先行でも追込みでもどんな展開にも対応できるのが最大の強み。本来は先行して差し馬を抑え込む競馬を得意としているが、今回は最内枠だったこともあり後方から攻める競馬。
1000m通過地点では後方から3頭目。残り800m地点手前で外からじわじわ進出を開始すると、4コーナーではプログノーシスの真後ろに付ける。残り200mでプログノーシスを捕らえて半馬身抜け出し勝利を確定させる。レースセンスを含め、競走能力は相当高い。香港版イクイノックスといってもいいかもしれない。
距離は2000mを主戦場として、1600mのG1は過去に1戦のみ。先行して2着だった。その時の勝ち馬が当時の最強マイラーのゴールデンシックスティで、それに肉薄しているのだから、むしろ評価はあがる。残り300mで内ラチ沿いから上がってきた勝ち馬に外に弾かれタイムロスした分の負け。これが無かったら着順は入れ替わっていた可能性もある。
⑧エアロロノア C
前走マイラーズC 4着 11番人気
去勢放牧明けだった前走は馬体重がマイナス16kgでも落ちた感じが無く、良い意味でのチャカつきもあって、一応は走れる状態にあった。
上位2頭以外は落ち目のオープン馬。重賞でどうこうのレベルではなく、その中で上手く位置を取って着を拾っただけ。道悪というのも良かった。
レースは中団後方で折り合って追走。少し行きたがる面を見せつつも鞍上が上手くコントロール。壁として頼っていた馬がスムーズに加速してくれ、それに釣られてこちらも加速。勝ち馬の後ろをただ追走しただけ。前は垂れてこないし後ろからも来ない状況。上手く嵌った。
⑨パラレルヴィジョン C
前走ダービー卿CT 1着 2番人気
オープン特別に毛が生えた程度のメンバー構成。ハンデ戦とはいえ、斤量はだいたい57~58K。レベルは低い。
ハナをとったエエヤンがスローの大逃げ。道中も展開が変わらず2番手グループにいた本馬との差を大きくし、逃げ切り態勢に入るも、ゴール前でギリギリ捉え交わすことができた。前も後ろも動きが無く、適性も踏まえて力どおりの結果となった。
⑩ソウルラッシュ B
前走マイラーズC 1着 1番人気
今年も前哨戦はマイラーズカップから。毎年前哨戦では好走するも本番では大敗。過去2年は13着、9着という結果。適性云々ではなく、純粋にそれが今の実力で、がっしりボッテリした本馬の体型では府中のマイルは戦いにくい。1400mなら、のイメージ。
前走は正味相手は1頭だけ。その他はオープン特別すら勝ち切れなそうにない馬ばかりで、そういった馬たちが作ったラップにおいては、追走が非常に楽だった。もう一頭の人気馬はやや太め残りで硬い仕上げ。状態面ではこちらが上で、実績あるコースでもあるし勝ち切って当然のレースだった。
今回好走するためには、いかにロスなく脚を溜められるかにかかっている。マイルCS(2着)ではブリンカーを装着していたが今回はナシ。外回しは禁物。内に潜って脚を溜めての競馬が実現できれば…だが。
⑪ウインカーネリアン B
前走高松宮記念 4着 11番人気
初の1200戦がG1。持ち前の馬力からスピードを発揮して逃げ馬に食らいついて2番手追走。頭も最後まであがらずしっかりと走り切ったが、重馬場ということもあり、残り200mで脚が上がってしまった。1,2着が内を突いて伸びてきていることから、実質的に本馬が選んだ進路はただロスを生んだだけということになる。内を突いていれば結果は変わっていただろうが、状況的にそれは難しかった。
マイル戦なら当然ハナは譲りたくないところ。ハナに立てばまた選択肢も増える。
⑫フィアスプライド C
前走ヴィクトリアM 2着 4番人気
ゲートは安定。譲りながら押っ付けて3,4番手の位置。3番を壁にしつつ右前にはセイフティーゾーンを確保。誰も外から競ってこず、直線までこの状態を保ったまま。抜け出すタイミングが少し早くなってしまったため、勝ち馬に交わされてしまったが、道中は負荷を最小限に抑えられており、本来であれば勝ち切れなければならないレース。強い競馬をしたとは言い難い。
⑬ステラヴェローチェ B-
前走大阪杯 4着 7番人気
首差しの長い中距離馬。バランスの良い体型。腹袋もあってスタミナ豊富。マイラーっぽさはなく、2000mから2400mがベター。
前走は3コーナーすぎの勝負所で動き出しが遅れた分の敗戦。阪神内回りだとそれが命取りになる。
今回はマイル戦だが、2000mからの距離短縮でも、前走は後半がマイルの競馬だったから、今回に限っては対応可能。今回は無理に出していかずにしっかりと脚を溜め切らないといけない。手替わりは良い。
⑭コレペティトール
前走マイラーズC 8着 4番人気
京都金杯を勝利してマイラーズCへ。G1馬が2頭いるパドックに入ると全く目立たずで、レースでは最後方近くのインでロスを最小限に抑えて追走し、直線に向いてスペースを選んで追っただけ。後方馬が有利な状況でもなく、よく伸びたほうだが、G2ではこれが限界。
⑮ヴォイッジバブル
前走チャンピオンズマイル 3着
⑯エルトンバローズ
前走チャンピオンズマイル 8着
⑰セリフォス B
前走マイラーズC 2着 2番人気
同じG1レーシングの馬にペルシアンナイトというマイルG1馬がいた。3歳時に皐月賞で2着し、秋にマイル路線に移行。マイルCSを勝利した。以降、大阪杯2着、マイルCSで2着、3着と好走はするものの、勝ち切るところまで行かなかった。年を取るごとに気難しい面を見せるようになり、ブリンカーを付けたり鞍上を変えたりと、何かと苦労されていた。
セリフォスも同様に試行錯誤の連続。昨年の安田記念を好走したあと、秋のG1では良いところを見せられずに敗退。前走もまだ本調子とは言えないデキ。前捌きが硬く短距離質な風貌で、勝ち負けまでは…といった状態だった。道中は折りあいを欠くところがあり、そこがこの馬のウィークポイントとなっている。もっとも、斤量が1K重かったことを踏まえると、よく走った。上積みは見込める。
この中間は追い切りではハミを変えたり乗り方を変えたりと、試行錯誤の繰り返し。今回ようやく理想の追い切りができたご様子。
⑱ダノンスコーピオン C
前走京王杯SC 4着 6番人気
久々によく見せた前走。腹回りが分厚くなり肩回りがしっかりと可動し腹帯も良く動いていた。
レースは後方から脚を溜めて切れ味を試す内容。あくまでもステップレース的。最速の上がりで駆けあがり、速い脚を使えることも分かった。評価できる点は少ないが、本番を視野に入れた競馬ができたという点は高く評価できる。