高山が作家として更に飛躍することを願い創作活動を支援したい!~エッセイ「ガーターベルトの女」の作品化を目指して【341】

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随筆「ある所長」

2018/01/15
最初はYのシリーズの外伝としようとしたけど、それはやめます。

Yのシリーズ読んでない人には分かりにくい所もあるでしょうが、仕方ないなあです。

Yのシリーズを読んでくれとしか言えないですね。

しかし、Yによって一つの波が様々な形で起きたんですね。

その波に、ある意味乗った一人の人物の話しです。

僕は、トンネル業界に入って二十五年以上経ちます。

今は非常に良い状態で仕事をさせて貰ってます。

勿論不満は有りますが、何より作業員に恵まれましたね。

掘る方の作業員だけを坑夫と言うのは不公平な感じがするから、雑工をする人も坑夫と呼びますね。

僕は、今は管理職です。

大きい現場から、本当に小さい現場を入れて七つの現場を管理してます。

人数は七十人を超えてます。

正確には事務員、炊事婦さんを入れると正確には八十人を超えてます。

それを管理して、更に仕事を取ると言う営業してます。

相当忙しいと言うか、時間がバラバラです。

しかし、充実してます。

それでも時にと言うか、この頃凄く思うのが他の人生もあったのではです。

五十代を前に、それを思うと色々考えさせられます。

家庭の事情や、個人的事情等も有るのかも知れないです。

一つの仕事である程度まで行くと、多分誰もが考えるのかもです。

今回の主人公は、そういう人です。

元請けの所長ですね。

ここで簡単に元請けと下請けって説明しますが、元請けは役所や、時には個人から直接仕事を貰う人達です。

そしてそれを、人間を実際に使って仕事をするのが下請けです。

時には孫請ってのも有りますが、ここでは省きます。

大きなトンネルになると、元請けも一社で無いです。

二つとか三つの共同体を作って、仕事をします。

Yの居る所は正確な距離は書きませんが、大きなトンネルです。

三社がJV*(注参照)を組んでます。

そのトップが、元請けの所長です。

そういう大きいトンネルに来る所長は、トンネルを事務的には良く知ってますよ。

あくまでも、僕から見たら事務的にですけどね。

この所長は、そこも普通と違いますね。

所長の所は大きな会社ですが、それ以上は言えないですね。

田舎の会社の、小さいトンネルをやるのならそうでも無いけど、大きな会社のトンネルをやるのと、まず元請けの所長と仲良くなったりはしません。

僕のように、会社では管理職としてそこそこ偉くなっても、打ち合わせで会うくらいです。

まあ、営業してて会うってのは有りますけどね。

自分自身、一人の坑夫の時代は元請けの所長と言えば、雲の上の存在でした。

まあ、話すとしたら坑夫の安全大会等ですが、そこで意見を求められても皆ほとんど言いませんね。

僕はわりと言う方でしたが、所長が答えると言うより他の人が答えてました。

小さい元請けになるとそこそこ接触は有りますが、それでも個人的話しをしたりは、ほとんど無いです。

まあ、僕は小さい所の元請けの事務員と付き合った事が有るけど、その女の子が言うには、所長は外での顔と事務所での態度や顔は違う、との事でした。

外面が良いとの事でしたが、今思えばそう単純な事では無かったのかもです。

元請けって、意外に大変なんですよね。

どういう風に大変かは、JVを組むって事は人間関係が実はかなり大変ですし、役所や近隣住民との関係など色々ですね。

しかし、今回の大きなトンネルの元請けの所長は、変わり者です。

良い意味で、変わり者ですね。

最初気づいたのは、何時も現場に居るんですよ。

それもトンネルの中が多くて、安全な所で見てました。

安全な場所をきちんと知ってるってのに、最初は感心しましたね。

そのうち、坑夫の中でも雑工をする連中を後向(アトムキ)と言いますが、その連中を手伝ってるのを見るようになりました。

何かを積んだりとかの時に、所長自ら身体を使って手伝ってるんですね。

僕は、最初は正直変わってるなと見てましたね。

元請けと下請けってなると分野が違うのも有るけど、元請けは基本的に下請けの作業員を下に見てますからね。

それと、僕の立場では個人的に仲良くするのは難しいんで、観察してました。

何かしら起これば、時には元請けと意見が合わないって有ります。

そういう時に、最終的に話し合いに出るのは僕ですからね。

時には元請けと言えども、出来ない事は出来ないと言わないといけないから、情けが入るのを極力避けてました。

しかし、Yが来てから徐々に所長が、僕に話しかけて来るようになりましたね。

Yが耳が悪いのに、素晴らしい動きをするからです。

Yの細かい動きを観察して、鋭い意見を言ってましたね。

一つは、Yの動きは耳が悪いから目で補ってるだけでは説明つかない、と言うのも気付いてました。

僕らが気付くなら分かるけど、見てるだけで気付くってのは鋭いです。

僕に、最初はYは正直大丈夫かと思ったけど、彼は凄いなあと言うようになります。

その辺りから二人で何かと話すようになりましたが、それでも距離を、僕は距離を置いてましたね。

Yが来て、Hが来てEが来てってなって行きます。

元々良かったメンバーが、どんどん良くなりました。

所長は、かなり僕に話しかけるようになります。

こういう良いメンバーが揃ってるのは初めて見た、と言います。

聞くと、所長は若い頃からトンネルを主にやって来てるようでした。

勿論、大きな元請けでも何時もトンネルが有るとは限らないから、他にも色々行ったようです。

会社に行って、なるべく現場に出してくれるように頼んだらしいです。

そういう人ですから、坑夫の汚い部分も知ってますね。

所長は、現在五十代半ばで眼鏡を掛けてて細身です。

ランニングをずっとやってるらしくて、煙草は吸いませんね。

大学は有名国立大学を出てます。

本来は、もう現場に出なくて出世コースに乗る予定だったのを、断ったらしいです。

現場が好きなのと、その中でもトンネルが好きらしいです。

それと、坑夫という存在が好きらしいです。

自分自身も、作業に少しでも関わりたいらしいです。

Yをきっかけに色々話すようになったんですが、非常に観察してるのと、頭が良いですね。

Yの事を的確に理解してますし、応援してます。

色々個人的に話してみると、非常に面白いと言うか鋭い人だな、と思うようになりました。

それと、今回のこちらのメンバーが所長を徐々に受け入れるようになって、とにかく坑夫がやる仕事を手伝いたいとか、やってみたいってなってます。

坑夫も受け入れるって事は、馬鹿では無いんですよ。

ある程度見てて、受け入れますからね。

勿論、中には損得考えて受け入れるのも居るけど、今回はそういうので無くて皆が受け入れ始めました。

坑夫は、そういう点で色々な人間を見てきてるから警戒心も強いけど、人間観察も勘のような物が働きますよ。

元々後向と配管をしたりしてたから、坑夫も暇な時なら良いとなりまして、挿薬等をやってます。

挿薬とはダイナマイトを挿入ですね。

孔に何本も入れて、それを押し込むんですよ。

これは掘削班でもキツイ仕事の一つで、僕も初めてやった時はダイナマイトを直接扱うからビビりましたよ。

見てるのとやるのでは、やはり全然違うようです。

一人が付いてあげて所長はやりましたが、汗だくになって戻って来ましたね。

コツがまだ掴めて無いんですよ。

それでも本人は、相当満足のようです。

色々な事に、少しでも良いから自分自身も参加したいようです。

なるべく時間が有ればやらせてあげろ、と言ってます。

挿薬やダイナマイトを仕掛ける時の機械の操作等を、人が付いてやってます。

所長は、喜んでやってますね。

ほとんど、現場に居ますね。

後向と汚れるの気にせず、色々な雑務もしてます。

元請けの事務所と下請けの事務所では、場所が少し離れてて僕らの方にばかり来るからどうしてですか?と聞くと、元請けの事務員の女性が、所長が汚れて戻るのを嫌うらしいです。

まあ、事務員の女性の気持ちも分かるけど、その辺り寛大にと思いますけどね。


しかし、元請けの人の作業着はそんなに汚れてるの見たことないし、いざ何かしら有れば不味いだろうで、僕のつなぎをあげました。

それでも足らないようで作業着を買いに行ってます。

しかし、作業着は元請けの支給したのを基本は着てなくては不味いだろうです。

役所等が来るってなれば、そっちに着替えるとの事です。

作業着を買いに行くのに、高山君ポケットはやはり沢山付いてた方が良いかとか聞くから、思わず笑って所長らしいので綺麗なのは買って下さいと言いました。

所長が欲しいのは坑夫が着てるようなのですが、僕が言うのは、それは分かるけどある程度は所長らしくです。

作業着に始まって、僕のグループは軍手より革の手袋してるのが多いんですよね。

これは僕の影響で、コスト的にも使うのにも革の手袋が良いんですよ。

安い所を見つけてて買ってたら、所長は安い所を知らないから高いのをまとめて買ってましたね。

溶接やガスも坑夫が教えるようになってます。

そうなると今度は、道具類が欲しいとなってそれも買ってます。

僕が笑うと、高山君は笑うけど先ず形からと、俺は坑夫ってのがいかにカッコいいか知ってるから憧れなんだよ、と言いますね。

子供が、仮面ライダーに憧れてるような物だよとも言います。

これまでも何度も下請けの手伝いして、坑夫に色々手伝わせてくれと言ったようですが、ほとんど無理だったようです。

それが、ここではかなり出来てると喜んでます。

最近ではかなり出来てるどころか、最後は掘削をしてみたいとまで言ってますね。

相当嬉しいようです。

現場志望で坑夫を見てるうちに、段々と若い頃から坑夫に憧れを持つようになったと言います。

もしかして若かったら、坑夫になってたかもとも言いますね。

最近まで、自分自身が出世コースからわざと離れて現場に残ったのは、失敗だったのか?と悩んでたらしいです。

それと、自分自身本来は何になりたかったのだろうと悩んでたらしいですが、作業に参加するようになってかなりそれが発散されてるようです。

五十代半ばにして、色々悩むって分かりますね。

その辺りから僕も距離を縮めるようになりましたね。

坑夫との交流も濃いですね。

休みの日には僕も巻き込まれたけど、作業着とか道具類を買いに坑夫を誘って行ってます。

まあ、子供みたいですが本人が良ければ良いかです。

しかし、あくまでも元請けの所長ってのは忘れて無いですよ。

Yのシリーズの5で役所のトップが、Yを辞めさせろと言うのに僕らが反対して、何とか食い止める話しが有ります。

元請けの所長は軽めに書いてますが、僕は元請けの所長も会社から言われるだろうと思ってました。

下手をすれば、元請けからYを外してくれと来るかもと思ってましたね。

役所と直接的繋がりが有るのは、元請けですからね。

もしも、元請けからYを外してと来たら、相当反発したと思います。

元請けの所長は、その辺りを高山君、うちの会社の方は俺が何とかしたからと言ってました。

僕は、相当実は揉めたかもとは思ってました。

ある時、元請けの所長の所の三十代の事務員が、僕の横に来て言いましたね。

彼は、JVでも所長の所の社員で、所長とずっと現場を一緒に回ってるようです。

所長がやるべき事務処理等を、彼が相当やってるようです。

所長にも、俺のある意味右腕だしこれから所長になっていくだろうからよろしく、と言われてました。

彼が缶コーヒー買ってきて、二人きりで立ち話ししました。

彼が言うには、Yの事で会社では相当揉めたらしいです。

それを所長は、Yの資料から僕の会社の資料、僕の資料まで揃えて論破して行ったらしいです。

相当な量の資料を集めてくれ、と彼は言われて集めたらしいです。

会議の席で役所に逆らうのは不味いだろうってなったら、所長がそれに対してきちんと反論していったらしいです。

それは、理路整然と、そして熱く説得したようです。

所長は、これが通らないなら現場を降りる、とまで言ったようです。

資料を作った所長の右腕の彼も、自分自身も降りると言ったようです。

所長の主張は、僕と同じなんですね。

使えて相当腕が良い坑夫を、耳が悪いからと言って潰すのかです。

それなら彼を見に来てくれと言ったようですし、もしも彼のせいで事故があったら、責任取って会社を辞めるとまで言ってますね。

その位、Yを信じたんですよ。

それを、大量の資料揃えて、きちんと理路整然と説明したらしいです。

色々な反論が有れば対応出来るように大量の資料作ってたらしいけど、結果的に使わなかった資料も多かったようです。

所長は、反論されたら二段三段できちんと資料出して、説得する準備をしてたようです。

所長の右腕の若い人が言うには、その時の所長の気迫と冷静さは凄かったですよとの事です。

理路整然に言いながらも、相当な気迫だったらしいです。

会社で一番の切れ者と言われてるだけあって、きちんと理論で抑え込んだようです。

見ててハラハラもしたけど、この人に付いて行こうと思ったらしいです。

若い人に、こういう風に思わせるって素晴らしいですね。

Yと言う、耳は悪いけど優秀な坑夫を守るために、エリートがそこまでやるか?です。

しかし、僕が思うに、Yの為にだけでないと思います。

所長は、自分自身の考えを曲げたく無かったのだと思います。

自分自身の為です。それは、僕もそういう所が有るので分かるような気がしますね。

彼が言うには、高山さんと所長が気が合うのは、似てるからですよとの事です。

僕はそうかな?ですけどね。

しかし、違うと思ったら徹底的に戦うって似てますよ、と言われました。

その若い彼は、ここだけの話しにしておいて下さいと言ってました。

所長は、ほとんど僕に言ってないですからね。

僕は、実は相当な苦労をされたのではと想像しただけでしたが、思ってたより苦労してますね。

それを、いちいち言わないってのも男らしいですね。

所長も僕も、今の日本を覆ってる、間違えてて何かしら皆が萎縮してしまってる事を憂いてますね。

それと、所長も相当な読書家で、年代も近いからその辺りも気が合います。

所長と二人で荷物の移動を、僕が機械に乗って所長が手元をしてやりました。

所長は汗だくになってて、自販機で缶コーヒー買うと僕にも一本くれました。

周りに誰も居ないのを見て僕が、「所長、本当に僕らと溶け込む為にも僕とソープに行きましょう。」

と僕が言いました。

ジョークですよ。そしたら所長は、飲んでたコーヒー吹き出しそうになりながら真っ赤になりました。

「そうか!!うーん。しかし俺には妻子も居るし、実はそういう所に行ったことが無いんだなあ。」

行ったこと無いなら行くべきです、と僕が更に押すと所長は、うーんうーんと唸ってましたね。

僕は笑いながら、ジョークですよと言いました。

所長は、一瞬だけだけど行ってみたいと思ってしまったぞ、と笑いましたね。

所長は、ここの現場が始まってYが来るまで、今までの自分自身はもしかしたら間違えてたのかと思いかけてたらしいです。

それが、今は間違えては無かった、と思えるようになったとの事です。

それが、僕には一番良かった事なのでは、と思えますね。

しかし、坑夫が受け入れてるから、所長は出来る時にはなるべく現場の事をやらせてあげたいですね。

うちの坑夫は優秀ですが、受け入れるとか受け入れないとなると話しは別で、受け入れてるって事は所長が良いからでしょう。

次回は所長ソープに行くって話しになるかもです。

ならないでしょうけどね。

シリーズになるかも分かりませんが、長くやってると面白い出会いがあるなあと思いますね。

有難い事です。


おわり


JV*注
共同企業体(joint venture)の略(wiki参考)

次回は随筆ある所長2」

「ガーターベルトの女」~映画化のために​

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