高山が作家として更に飛躍することを願い創作活動を支援したい!~エッセイ「ガーターベルトの女」の作品化を目指して【439】

妄想家・夢想家無名居士の夢物語の記録です
無名作家高山のエッセイ「ガーターベルトの女」の映画化芝居化・・・
その他いろいろ作品化できれば
なんて途方もない夢を観ています

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📖 高山のエッセイ〜アル・パチーノ雑感~『セント・オブ・ウーマン/夢の香り』

アル・パチーノの魅力と言えば何でしょうね。

あのドスの効いた声で迫る迫力かな。

何でしょうね。僕はハリウッドスターで一番好きですね。


もう七十代の半ば過ぎですね。


つい最近の映画で言えば、『ミッドナイト・ガイズ』はまあ、良かったけど、『Dearアダニー君へのうた』は、合わなかったですね。

あくまでもファン目線ですから、この二つは薦めはしません。


七十年代には『セルピコ』、『スケアクロウ』、『ゴッドファーザー』シリーズ、『狼たちの午後』と、傑作に出演しながらも、アカデミー賞主演男優賞をことごとく逃してますね。


特に一般の人が印象深いのは、『ゴッドファーザー』シリーズでしょう。


ギャングファミリーの跡を継ぎたくない、知的な三男を演じます。


1と2では、随分変わりますけどね。

この二作は傑作でしょうが、アル・パチーノだけの映画と言うより、マーロン・ブランドやロバート・デ・ニーロや他の名優の映画ですね。

因みに、後に作られた3はまあ、後日談で良いのではです。


今のアル・パチーノ、或いは歳を取ってからのアル・パチーノを知ってる人は、七十年代のアル・パチーノのイケメンぶりに驚くでしょうね。


歳を重ねてもイケメンですが、若い頃のカッコ良さは当時は、やはり注目されたでしょうね。


しかし、この人非常に小柄なんですよね。


日本に来日してない為に比べるものがないけど、僕が二十代の頃にレンタルビデオ店で働いてた時に、京都大学の映画研究会の男が居まして、その男が色々調べた結果は165センチ位では、でした。


僕もそう思いますね。


諸説あって、167とか170とか言われるけど、とにかく小柄ですよ。


ロバートデニーロと比べられがちですが、身長はデ・ニーロの方が高いですね。


ハリウッド俳優としては異常とも言える身長の低さですが、それが甘いマスクと相まって独特の雰囲気を作ってると思います。


もしもアル・パチーノが180センチ位あったら、ここまでの名優になったか疑問です。

甘いマスクの演技派で終わったかもですね。


そういうアンバランスさが彼の魅力を引き立てたと思います。

もう一つ、身体的特徴を言うと特に中年以降はそれが顕著に出てますが、肩幅は広いんですね。

アンバランスですが、何処かそれがバランスを取ってるって不思議な感じです。


ロバート・デ・ニーロと比べられますが、俳優としての資質は違うのではと思います。


ロバート・デ・ニーロは、かつては役作りに非常に熱心でカメレオン的ですね。


一方のアル・パチーノは同じように役作りに非常に熱心ですが、何時でもアル・パチーノなんですよね。

上手い下手で言えば、ロバート・デ・ニーロの方が上手いでしょうね。


アル・パチーノが下手とは言わないけど、デ・ニーロ程の器用さは感じません。

両方の俳優がとても好きですが、僕はアル・パチーノの方がどちらかと言えば好きなんですよ。

それに、デ・ニーロは僕から見たら出過ぎですよ。

根っから映画が好きなのは分かるけど、作品を選んでよと思うことも多いです。
アル ・パチーノは演劇が好きなようですし、デ・ニーロは、マーチン・スコセッシと言う稀有な才能の監督と何度も組んで傑作を出してますが、アル・パチーノにはそういうのはないですね。

若い頃のアル・パチーノとスコセッシに組んで欲しかったですね。

日本で言えば、アル・パチーノは高倉健さんかも知れないですね。


何時でも、何をしても高倉健さんでしたからね。


アル・パチーノの映画を若い人に勧める時に、僕が選ぶ作品を今回は紹介します。


アル・パチーノは七十年代に活躍して、八十年代に低迷したってのが大体の見方です。


傑作『スカーフェイス』も後に評価されてますが、公開当初は評価されてないですね。


八十年代の終わりに、『シー・オブ・ラブ』で戻って来た感じです。


何故低迷したかは、一つのパターンにはまってしまい、それを無理に打破しようとしたからかもです。

余りに、『ゴッドファーザー』等のイメージが付きすぎて本人も転換をしようとしたんでしょうが、それが上手く行かなかったですね。

しかし、『シー・オブ・ラブ』で刑事役をやって吹っ切れたのか開き直ったか知らないけど、九十年代から二千年代にかけて見事に復活して来ます。

『シー・オブ・ラブ」は、アルパチーノの映画では佳作ですが僕は好きですね。


この辺りにほとんど外れがないですね。

特に若手と組んだ作品は良いです。キアヌ・リーブス、ラッセル・クロウ、ジョニー・デップですね。


ジョニー・デップと組んだ『フェイク』では、かつて『ゴッドファーザー』で凛々しいマイケル・コルレオーネを演じたとは思えない老ギャングを演じます。

これを若い人に勧める事もあります。

他にもアメリカンフットボールのコーチ役の、『エニイ・キブン・サンデー』とかも良いですよ。


小柄なアルパチーノが、大柄な選手の連中に激を飛ばすのも痛快ですね。


とても好きですね。

『インソムニア』も、亡くなったロビン・ウィリアムスと、演技派女優のヒラリー・スワンクが出ていて好きですね。

『摩天楼を夢みて』や、『リクルート』も良いです。

九十年代から二千年代の初め位まで、ほとんど外れがないですね。

今回は、アル・パチーノが初めてアカデミー賞主演男優賞を獲得した、『セント・オブ・ウーマン/夢の香り』を紹介します。

何度もノミネートされながら、やっと取れた主演男優賞です。

アカデミー賞側としても、その後の活躍は予想出来ないし、この辺りでアル・パチーノに主演男優賞をやらないとってあったかも知れないですけどね。


しかし、若い人が観てもアル・パチーノの魅力が溢れてるし、全体が旧くなってないですからね。


ストーリーは、かつては軍人でかなりの地位まで行った初老の盲目の男が、若い学生と旅に出るって話しです。


アル・パチーノ演じるフランク・スレードとクリス・オドネル演じるチャーリーです。

フランク・スレードは軍での事故で盲目になっていて、退役軍人で姪の一家に世話になってるけど、毒舌家で厄介者です。

姪の一家が旅行に出ると言うのに自分自身は行かないとなって、チャーリーが盲目の初老の男フランクを面倒見るためにアルバイトで来ます。


チャーリーはチャーリーで、悩みを抱えています。

名門高校の生徒です。

学校での悩みですが、段々と深刻になってきます。


この映画には最近亡くなった、フィリップ・シーモア・ホフマンがチャーリーの友達として出てます。


注意深く見ると、彼の若い頃が観られますよ。


フランクスレードは、姪一家が出掛けると旅の準備をしていてニューヨークに出掛けます。

チャーリーも巻き込まれる形で付いていきます。

そこから若いチャーリーと初老のフランクの関係が、少しずつ変わっていきます。


フランク・スレードは人生に絶望していて、この旅行で好きな事をして最後は死のうとしてますが、チャーリーはチャーリーで友達との間にトラブルを抱えています。

二人は困難を抱えてるって点で共通しますが、育ちも違うし考えも違うから若い学生のチャーリーは、最初は振り回されます。


しかし段々分かり合いますね。

二人の本格的交流がこうして始まります。


アル・パチーノ扮するフランク・スレードの盲目の役は上手いですし、やはり迫力が有りますね。

盲目だけど女好きで、女性を買いに行ったりします。

この映画で名シーンと言われる、若い女性とのタンゴを踊る所はとても良いですよ。


なんと言うか、目でも足を動かして踊れば何とかなるんだよ、的なメッセージも伝わるようです。


躍りは上手いですけどね。


この絶望した盲目の退役軍人は、チャーリーとの交流で少しずつ変わっていきます。

チャーリーも、この変わり者だけど信念を持った男によって更に強くなろうとします。


アル・パチーノ扮するフランクは、このチャーリーによって救われて行きます。

お互いが、べたべたした感じでなくて救い合って行くような感じですね。

後は見てくれと言いたいけど、ラストにアル・パチーノがチャーリーの為に学校で演説をするんですけど、これがまさにアル・パチーノの独壇場です。


僕は勝手に、「演説のアル・パチーノ」と呼んでますが、演説とか人を説得する時のアル・パチーノの演技は、鬼気迫るし胸を打たれますよ。

このシーンは圧巻です。

これを、かつては大袈裟と言われたのでしょうが、今回は上手くはまってますよ。


とても見終わって、心に残る映画です。

見所としては最後の演説とタンゴシーンと、もう一つはジャックダニエルを飲むシーンです。

後に色々な映画で真似されてますね。


アル・パチーノの盲目の演技も見事ですね。


そしてカッコいいですよ。


アルパチーノと言えば、『ゴッドファーザー』や、『スカーフェイス』のギャングって人に見て欲しいですね。

それとアル・パチーノは基本的にタフガイ、或いはかつてのタフガイをやらせたら上手いです。

タフガイと言っても、シルベスタ・スタローンとかとは違いますよ。


精神的タフガイ、でしょうかね。

その中にも、何処か繊細さや疲労感を中年以降は出してますね。

九十年代初頭の映画ですが映像も旧くないし、初心者にはうってつけだと思います。


僕の中のアル・パチーノベストは、『ゴッドファーザー』と『スカーフェイス』ですが、先ずは『セント・オブ・ウーマン 夢の香り』、これでアル・パチーノが合わないなら、貴方はアルパチーノと縁がないって位に思います。


僕は彼が非常に好きなので偏向的になってしまいますが、素晴らしい役者です。

追記
何時ものようにいちいち調べて書いてないので、間違いが有ればすいません。

おわり

📖無名居士のたわ言・・・音楽でひと遊び〜めぐり逢い紡いで

めぐり逢えた幸せ・・・

この言葉で思い出した歌
♪めぐり逢い紡いで
布施明の歌で知った
その頃この歌を・・・ある音楽評に
布施明はピアニシモを歌える歌手・・・と書かれていた

いつも歌は何も考えず聴いていたけど・・・このあとしばらくは
歌の表現・・・歌唱を意識して聴くようになった
布施明とは同じ年同じ月の生まれということもあって
彼はいやがうえにも意識する存在だった
彼の歌もよく聴いていた方だと思う

彼の自作の曲が好き・・・35歳のころだったか
大阪のサンケイホールでのコンサートでの歌
♪夢を捨てないで・・・涙が出て仕方なかった
その頃の私の心をグサリと刺す歌だった
65歳の今聴くと・・・涙も出ない

今回確認のための検索で
この曲が大塚博堂のオリジナルと知った・・・1978年2月5日発売
布施明の発売は少し遅れて・・・1978年9月5日発売
久しぶりなので大塚博堂の歌で聴いてみた
それから・・・やはり布施明を
[ 無名居士 ]
2013/11/23(土) 午後 3:07

めぐり逢い紡いで 大塚博堂

布施明 Akira Fuse 「めぐり逢い紡いで」(1978)

[ 無名居士 ]
2013/11/23(土) 午後 3:08

📖 高山の作品から〜新シリーズ 「濡れる穴の中2 片眼の男」

新しい現場が始まってます。

新しい作業員をどんどん入れてますね。

全部合わせて八現場で、炊事婦さんや事務員入れると百人近い人間が働いてます。

新しい現場は、二番目に大きい現場でナトム工法で発破を使います。

何れ、コンクリート班も入って来ます。

今回は、若い腕の良いのが集まってますね。

色々トラブルも有るけど、社員も増えて本社に負けない体制作りをしてます。

「濡れる女子事務員」シリーズのえり子ちゃんが、実質的に右腕になりつつ有りますね。

現場でも、今回は二十トンダンプが入ったから練習してますよ。

それ以上に、事務面を細かくチェックしてくれてます。

相当な無駄遣いが分かりましたね。

どうしても、事務上がりからの所長は使わないし、僕も元坑夫ですから緻密にやってるつもりでもどんぶり勘定になってしまってる。

それをえり子ちゃんが、徹底的に見直してくれてますね。

彼女、最初は文系かと思ってたら理系ですね。

僕自身の弱い所をフォローしてくれてますし、働いてる作業員からも好かれてますよ。

作業員から好かれて、何処の現場でも一目置かれるようになりましたね。

それは、僕が右腕って事を強調したのも有るけど、やはり二十代の女の子が努力したからですよ。

もう一人、四十代半ばで一番大きい現場で掘削班の班長してたのも社員になりました。

青柳と仮名をつけますね。

彼は、まだまだ社員に慣れて無いけど、何れ彼の出番が来るでしょう。

元々は、若いアルバイト事務員のえり子ちゃんを社員にするつもり無くて、坑夫経験の豊富な冷静な青柳を社員に何度も誘ってたんですがね。

今回、えり子ちゃんの活躍を観たり色々彼も考えて、社員になりましたね。

個人的に言わせて貰えば早く入れば良かったのにですが、こういうのはタイミングですね。

新しい現場は、既に班が別れた時の為に班長決めてます。

三十九歳と三十七歳が班長やります。

他の会社だと早いと言われるでしょうが、僕は三十代をなるべく前に行かせます。

三十代が体力的にも仕事の面でも、一番乗ってるからね。

掘削班は、五人ですがバランスを考えますよ。

ベテランも当然入れます。

若い班長を支えるって形ですね。

その辺りきちんと言い含めますよ。

でしゃばり過ぎずにだけど、いざって時は助けてあげてねですね。

今は、まだ全員は揃ってないです。

昼勤だけなので、そんなに人数要りませんからね。

そういう中でも、こないだ呼んだベテランの話しです。

年齢は四十七歳ですが、高校卒業してずっとこの世界に居るからベテランですね。

彼を片岡と仮名にしますね。

彼とは、十数年前に僕が作業員の時に知り合ってます。

身長は一メートル七十程で、太ってもないし痩せても無いです。

福岡の田舎の出身ですね。

炭鉱のあった辺りです。

この辺りの人間の気の荒さは有名ですが、片岡は全然違いましたね。

見た目ですがね。

初めて会ったのが多分沖縄で、僕が三十代半ばでした。

片岡は、他の人間が辞めてしまい補充として人に紹介されて来ました。

その頃僕は、同い年の坑夫のHとして前にも何度も名前が出てる橋本と組んで、掘削班の班長でした。

橋本も仮名ですよ。僕が、三十代である種の全盛期を迎えられたのは橋本と組んだからでしょうね。

橋本は根っからの職人で、僕は人を使うのが上手かったって有りますね。

しかし、当時は僕も橋本も動きましたよ。

動いて動いて人を使ってましたね。

片岡は、そういう所に来ました。

来た時の格好がジーンズにポロシャツで、眼鏡を掛けてました。

特に、派手な物を身に付けてるとか無いですね。

坑夫は、多いですからね。

派手な刺繍入りのジーンズとか、アクセサリー着けてたりとかね。

ブランド物をこれ見よがしに着けてるとか沢山居ましたし、今でも多いです。

片岡は、地味でしたが目付きを見た時に、非常にキツイ目付きをしてましたね。

それに、福岡の荒い所の出身ですから注意してましたが、僕と橋本の班に来ても黙々と仕事をこなすタイプでした。

酒が余り飲めないけど、付き合いはしましたね。

橋本と、ありゃ良い坑夫だなと言ってました。

実際沖縄は、彼は途中からでしたから短くて終わりました。

そのあと、確か短いトンネルで広島に行きましたね。

百数十メートルのトンネルでした。

ここでも橋本と組んで頑張りましたね。

片岡も居ました。

ある時、そこは発破ダイナマイトを使うんですが、何かを測ってて片岡が眼鏡を外して僕に確認してくれと言ってきました。

坑夫は、元請けが出してくれてる元の線から色々な物を測ります。

水糸を張って高さを測ったりって、日常的に有ります。

一日何度も、簡単な測量しますからね。

その時初めて、片岡がそう言えば何かを測るってなると居ないか、自分自身がやったら一応確認を求めるなと気付きました。

勿論、全てそうでは無いんですよ。

片岡一人でも測ったりは出来てましたよ。

それでも、確認を求めるのが多いなと気付きました。

それと、その時の何かを測るのは非常に簡単で、お前見えてないのかって位のレベルでしたから、僕の中で何かが引っ掛かりましたね。

その日だと思います。片岡を隅に連れてって、お前視力に問題無いかとそっと尋ねました。

片岡とは親しくなってましたし、彼は班長である僕を慕ってて兄さん兄さんと呼んでましたから、俺に隠し事するなよとも付け加えたと思います。

片岡は、右目が実はほとんど見えてないと答えました。

左の視力も決して高く無くて、計測とかになるとある程度勘でやってると言いましたね。

それと、見える日と見えにくい日があるとの事です。

健康診断で当然目の検査しますが、それも右目の時は左目を薄く開けてると言いました。

子供の頃からで、それで作業への問題は無いですと答えました。

確かに作業での問題は、ほとんど無いです。

計測だけでしょうね。それもある程度は出来ますからね。

本人も言ってたけど、本当に分からないなって時は、人に確認して貰うとの事ですしね。

発破を使う時にも機械にも乗れるし、かなり上手いです。

オールマイティーな男です。

それに、何より人が見てても見てなくてもコツコツ動いて仕事をします。

こういう坑夫は珍しいなと言う位、仕事に真面目ですからね。

それを聞いて僕は、これは、口の硬い橋本だけに言うよと言いました。

橋本に言うと、あー!それでかと答えて来ました。

橋本も眼鏡を掛けてますが、時々片岡を見てると眼鏡の度数合ってないじゃないかと思ってたらしいです。

それと、宿舎に戻ると寝る前に、必ず濡れたタオルを目に当ててましたね。

それも目の養生の為だったのかと思いました。

僕のように若い頃目が良かった人間には、その辺り分かりませんでしたね。

しかし、橋本もあいつを手放すのは勿体ないよと言って、これは秘密にしようとなりましたね。

橋本も真面目でコツコツやるタイプですが、それ以上に片岡もそういうタイプでしたからね。

その後もなるべく一緒にと、二つ程現場を回りました。

橋本が他の現場に行ってしまい居ない時は、片岡が僕の右腕になりましたね。

橋本も相当器用ですが、片岡も組んで見ると負けずに器用でしたね。

それに、上手く僕を立てながら自分自身は目立たずに、蔭で支えるのが上手かったです。

特に橋本が居ないとなると本領発揮したのか、実に良く動くし器用な坑夫だな思わせました。

その後、僕が今の会社に入ってからも、大きな現場にはなるべく呼びようにしてました。

それでも、腕も立つしあちこちから呼ばれてて、すれ違いって事もありましたが、今回二年ぶりに僕の所に来てくれました。

まあ、変わってないです。

結婚してて子供が二人居たけど、一人が大学生になったと言ってたから大変だなと言うといやいや、後は下の女の子が大学か短大かに行ってくれたら親の役目もある程度終わりますから、と言ってましたね。

昔は、小さい下の女の子の写真を財布に入れてて見せてくれたから、その辺りだけお互い歳を取ったなです。

目の方は、相変わらずのようです。

若い班長を支えるには、持ってこいの人材ですけどね。

目の方は、何とか健康診断も通ってるから誰にも要らない事を言うなよ、と二人の時に言いました。

何処で誰が聞いてて噂を流すかは、分からない世界ですからね。

それと、片岡って男は忠誠心が非常に強くて兄さん兄さんと言って来ますし、僕が命じたら何でもやるって感じです。

一度その忠誠心は、何処に行っても上の人間に有るのかと聞くと僕と橋本さんだけですよと答えて来ましたね。

自分自身の目の事を隠してくれたのと当時は、三十代の二人が現場を仕切ってるなんて無かったから、凄いなと思ったらしいです。

確かに三十代が班長って少ないし、当時の僕はとにかくイケイケでしたよ。

まあ、本当は、運が僕は良かったんですけどね。

彼いわく、橋本さんが居ない時に僕が彼を二番手に上げてくれて、片岡お前が最後は仕上げておけよとか言われるのは、嬉しかったらしいですね。

まだ、若い彼に信頼を置いてる証拠ですが、それが彼にはとても嬉しかったようです。

その気持ちは分かりますよ。

今回も現場に初めて来た時に、僕に深々と礼をしてお世話になりますと言ってました。
 
そこの所長も片岡を知ってて、所長にもえり子ちゃんにもきちんと挨拶してましたよ。

所長は、相変わらず真面目だなあとアイツもベテランの域なんだなあと、感慨深げに言ってましたね。

えり子ちゃんは少し驚いたようで、何であんなに礼儀正しいんですか?と言ってたから、色々居るよと答えました。

礼儀正しいけど怖いよ~と笑いながら言うと、高山さんそれは、もう勘弁して下さいと言います。

もう十数年も昔の話しです。

一度だけ怒ったのを見たことが有りますね。

多分広島だったと思います。

広島の大きな飲み屋街を片岡と二人で歩いてて、人が多くてスーツ姿のサラリーマンと肩が軽く当たったんですよ。

そしたら、相手は数人居て酔っ払ってて、コラ!!舐めんなよ、みたいになりましたね。

当時の僕は、プライベートでは薄いサングラスを夜でも掛けてましたから、生意気に見えたでしょうね。

相手にせずに通りすぎようとしてたら、一人が追って来て肩を掴もうとしたので払いのけて、一人じゃ喧嘩も出来ないのに酔っ払って何人も居たら強気だなあ、と言い返しました。

相手は三人か四人でしたから、当時の僕ならやるならやってやるって気持ちでした。

片岡は喧嘩をしなくても、一人でも揉めたらやってやるって感じです。

三十代ですからね。

今はなるべく避けるのを、当時は面白がってましたよ。

片岡にわざと、こいつ締めて来い!と言いました。

すると片岡は、分かりましたと言うとそのサラリーマンを何かのお店の路地まで引っ張って行くと、いきなり殴り倒しました。

そして何度も蹴ると、仲間のサラリーマンが集まって来るのを待ってたように、何人でも来いや!!と叫びましたね。

片岡も僕もほとんど素面ですよ。

僕は、あ!こいつ本当は喧嘩に慣れてやがるなあ、と思わず笑いましたね。

サラリーマンは、まさかそこまで反撃されると思ってなかったようで、皆ビビってました。

僕は、片岡を引っ張って行くと逃げるぞと言うと、路地から路地を走りましたね。

こういった所で喧嘩になると、警察が来るのが早いですからね。

ある程度逃げたら片岡に、お前喧嘩慣れしてるじゃんかと言うと、いや!あれは高山さんが言うからやったんですよ、と冷静に答えて来ましたね。

僕は、思わず笑いましたよ。

えり子ちゃんと車に乗ってて、何かしらあの人とも有るんですかと聞くので、絶対言うなよと念を押して目の事とその喧嘩の話しはしました。

えり子ちゃんは、目が悪くても火薬の免許も甲を持ってるし、高山さんと同じ位の資格持ってるのは目は関係ないんですかねと聞くので、それとこれは関係ないけど、目の事が有るからなるべく資格や免許を取ってると前に言ってたと教えました。

火薬の免許の甲はまあ分かるんですが、二級土木の免許まで持ってますからね。

ある意味、目の事がバレてもそれだけの資格や免許で何とか乗りきろうってのが分かりますね。

片岡には、今回はどちらの班に付いても若い班長をいかに盛り立ててやるかを考えて働いてくれと言うと、分かりましたとだけ答えました。

彼には多くを言わなくても、分かりましたと言えば期待以上の事をする人間です。

えり子ちゃんにもそれを言うと、何となく分かりますねと言ってましたね。

片岡が目に問題が無ければどうなってたかを考えますが、目に問題が有るからこそ良い坑夫になったのではと最近は思いますね。

目に問題が有るから、素晴らしい坑夫になれたのだろうです。

面白いと言うか、何かしら有るから必死になれるって有ると思います。

僕も身体の問題や、色々な問題を抱えてるから必死になれるって人間なのでね。

僕に出来る事が有るとすれば、目の事を元請けに隠すのとバレても彼を使う事だけでしょうが、今まで元請けにバレた事は無いようなので大丈夫でしょう。

彼は、今後現場で間違いなく期待以上の働きをするだろうと信じてますね。

それに、僕にそっと言って来ましたね。

今でも昔のように感謝の気持ちが有るから、高山さんか橋本さんが言うなら何でもしますよ、とね。

その目付きは本気でしたね。

僕は、笑いながらこっちが感謝してると答えましたが、嬉しかったですね。

今思えば、最初に会った時の目付きのキツイ印象は目が悪いのと、内に秘めるヤンチャさだったのかも知れないなと思います。

後から気付く事って多いですね。


おわり

📖「ガーターベルトの女」の映画化のためにエッセイをお読み下さい・・・

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「ガーターベルトの女 外伝」(フィクション編) 1

それは夏の事だった。

その日は特に暑かった。

Mこと、美樹との再会は偶然だった。

美樹と最後に会ったのが、彼女が確か二十八歳で僕が三十歳だったから、約二十年振りの再会だった。


僕の街のコンビニでコーヒーと煙草を買って出ようとしていると、女性に声を掛けられた。


僕は、その瞬間に美樹だと思った。

声で分かったからだ。

あの特徴のある、美しく可愛い声でだ。


振り返ると美樹が立っていた。

OL風の紺のスーツにスカートだった。

僕は四十九才、美樹は四十七才になってるはずだと思ったが。見た目は確かに若い頃と少し変わっていたが、円熟した中に昔の彼女が居るように見えた。

三十代半ばと言っても充分通用する美貌とスタイルを保っているのに驚きを覚え、見直した位だった。

美樹は笑いながら近付くと軽く蹴ってきて、変わらないね相変わらず前から見ると変な顔だねと、クスクス笑いながら今度は、パンチを思い切り僕のお腹に入れてくる。

あー!やっぱり少し緩んでるなあと笑った。

僕は、今何処に居るのかと聞くと生命保険会社と短く答えた。

気になっていた、結婚して子供が出来たと聞いたけどおめでとうねと言うと、彼女は笑った。

結婚はしたけど、子供は居ないし三年で別れたよと言いながら、またパンチを思い切り入れて来たので、避けながらわざと近づいて持ち上げた。

そして僕は、昔はありがとうと言った。

その瞬間、頭がぐるぐる回るような感じになった。

気がつくとかつての美樹の店だった。

美樹はOLスーツのまま歳を重ねていたが、昔より美しく見えた。


カウンターの中に入ってたが、軽く飛んでカウンターから出てきた。


ガーターベルトをしてたが、チラっとしか見えなかった。

前より上手くなったでしょうと笑うと、冷蔵庫からビールを三本出して栓を開けた。


僕にそれを渡すと、僕の横の席にそれを置いて言った。


生きてるよ。あの人は私達の中でね、と言うとクスクス笑った。


僕はおかしいかと聞くと、そうじゃなくて貴方や私が笑ってないとねとだけ言って、乾杯と言うとビールをラッパ飲みした。


そして半分ほど飲むとへへへと笑って、かなり飲めるようになったよといたずらっぽい顔で言う。

僕は煙草に火をつけ、もう一本出すとそっちにもつけてビールの前の灰皿に置きながら、ラッキーストライクだけど悪いなと言った。

美樹は僕から煙草を取ると吸ったが、やっぱり不味いねと笑った。 

しばらく沈黙が続いたと思ったら、美樹が僕の腕を触っていた。


四十九にしては相変わらず凄いね、と言うと抱きついて来た。 


そして、上に乗るとキスをして腰を動かし始めた。

昔に比べて更に技巧的で上手かった。
 
愛情も感じたが、奴が見てると言うと見てるからするんでしょう、と言われた。

あの人は喜ぶよ、歳を取っても相変わらずだと思うよ。

僕はあっという間に射精した。


その瞬間、コンビニの前に戻っていた。


美樹が僕を蹴ると、今の夢だと思うと笑った。

綺麗な歯が見えた。


美樹は僕のライトバンに勝手に乗ると、私の車はここに置いておくと言って早く出せ!!と笑った。


夕暮れが近づいていて道は混んでいたが、ラジオを付けると懐かしの九十年代ポップスと言うのをやっていた。

美樹は懐かしとかやだねと言うと、窓を開けてラジオをボリュームを最大にした。

高速ではないが三車線の広い長い道を走った。

昔に戻ったと言うより、今の美樹も昔の美樹も同じだなと思わず笑いが漏れそうになる。

そう思ってると、強引な形で黒のセダンが僕のライトバンを抜いた。


見ると若いカップルのようだったが、男はあばたが目立ち女は金髪で太っていた。

美樹は僕に向かって、抜き返しなさいよと怒ったように言った。
 

僕の中で何かに火がついた。


カチッと音が聞こえたような気がした。


僕はミッションのライトバンを加速させて黒のセダンを抜いた。

相手は驚いた顔をしたようだが、再び強引な形で抜こうとしてきた。


(そんなものか!!)


頭の中で、死んだあいつの声がはっきり聞こえた。

僕は、抜きかえそうとする車に軽くライトバンを当てた。


美樹はクスクス笑いながら、もっとやれ!!と叫ぶ。

相変わらずクレージーだな、と笑いが出た。

相手の黒のセダンはまさか当てられるとは思ってなかったようで、後ろに下がってピタリと付けてきた。

美樹は、今あの人の声が聞こえたよね。それなら徹底的にだね、と楽しそうに言う。

美樹にもあいつの声が聞こえたようだった。


僕たちは三人だと思うと嬉しくなってきた。

僕は大きな駐車場のあるコンビニに、相手の黒のセダンを誘導するように入った。

美樹が先に降りて、若い男が降りようとしてる所を思い切り蹴った。

若い男はまさか女から蹴られると思ってなかったようで、車の中に座り込むように戻った。


僕は煙草に火をつけながら、にやけながら近づいた。

金髪の太った女は完全に驚いたようで、車から出ようともしない。


若い男は女が見てるせいか再び車から出ると美樹に向かって行こうとしたが、僕がその腕を捕まえて車に押し付けた。


そのまま腕をアームロックの形で極めた。


最初は抵抗したが、ギリギリと片腕を締めながら何発か腹に膝を入れると大人しくなった。


腕を折るのは難しいが関節を外すことは出来たから、このまま腕を壊すぞと脅すと若い男は泣きながら謝ってきた。

美樹がおじさんと、おばさん舐めるなよとおどけて言って、更に舐めるならその不細工な彼女のでも舐めてなさいと付け加えた。


僕は思わず笑いながらコンビニに行こうと言うと、自然に軽く手を繋いで二人でコンビニに入った。


かつてはこういう風に、自然に手を繋ぐって事はなかった気がする。


美樹はコンビニでオレンジジュースを買った。


僕は缶コーヒー二つとマルボロを買うと、二人で手を繋ないで車まで歩いた。

車に乗ると、マルボロの封を開けて火をつけて、ゆっくり吸った。

ラッキーストライクに比べたら雑味がある独特な感じを、久しぶりに味わう。

僕は、死んだあいつに心の中で久しぶりに吸うと苦味が有るなと話しかけたが、もう声は聞こえなかった。


車をゆっくり出すと美樹がホテルに向かってと言うので、戸惑いながらもラブホテルに向かった。

美樹はラブホテルに入ると、昔のような身体じゃないよと言いながらも堂々と僕の前で脱いだ。


確かに昔のような身体では無かったがそこには、成熟した物と努力のあとがあるように思えた。


ガーターベルトをつけたまま僕の服を脱がせると、うーん中年になってるとクスクス笑った。

美樹は僕のものを咥えた。


僕はシャワーも浴びてないからと、美樹から逃れようとしたが離さない。

笑いながら気にしないのと言う。


しばらくすると美樹の口の中で出してしまった。


僕の方も火がついて、美樹をベッドに倒すと舐めた。

懐かしい匂いのように感じた。


結局二度セックスをした。


美樹は、あの時してなかった分を取り戻した?と聞いてきた。


別れた後に、美樹の部屋に泊めて貰って誘われながらもしなかった時の事だった。

僕は、取り戻したってよりこれからじゃない、と答えると美樹は笑った。


広くない街だけど見つけられるかな。携帯の番号とか教えないからねと美樹は笑うと軽く腹を殴ってきた。

僕は見つけられるよ。


俺にはあいつも付いてるからと言い返した。 
 

美樹はにやりと笑う。

目尻にかつてはなかった皺があったがそれも魅力になっていた。


僕は美樹と会ったコンビニ周辺をなるべく通るようにしたがなかなか会えなかった。

夏が過ぎて秋になっても美樹を常に何処かで探していたが会えなかった。

ある時レンタルビデオ店に寄ると心の中で声がした。


(アルバチーノの映画)


それだけだったが僕はアルバチーノの映画の『カリートの道』のある場所に行った。


しばらくしてると行きなり肩に思い切りパンチが入った。


美樹が笑いながら立っていた。


ジーンズに上着を羽織っていたが、相変わらずお洒落だった。


『カリートの道』好きなの覚えてたと言うと軽くキスをして来る。 


僕は勿論と言うと美樹を抱き締めた。

美樹の髪の匂いに混じって、あいつの煙草の匂いがしたように思えた。


美樹はこれを三人で観ようと言った。

美樹もあいつを感じたようだった。


僕は、三人でなと笑うと美樹も笑った。

だけど、電話番号はまだ教えないからね。また彼が導いてくれるよといたずらっぽく笑う。


そして僕のお腹に何発もパンチを入れた。

その目に涙が光っていた。

その顔はとても美しく見えた。

おわり

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