高山が作家として更に飛躍することを願い創作活動を支援したい!~エッセイ「ガーターベルトの女」の作品化を目指して【413】

妄想家・夢想家無名居士の夢物語の記録です
無名作家高山のエッセイ「ガーターベルトの女」の映画化芝居化・・・
その他いろいろ作品化できれば
なんて途方もない夢を観ています

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📖 無名居士のたわごと〜2022年1日・・・狸穴の契約取った!

か高山からの電話があった
良い話だった
高山に次ぐ2番手…右腕のAちゃんと掘削技術トップ社員のH氏のタッグが
俗に狸穴と呼ばれている農業用水路の下請け工事契約を取ったとの話だった
工事契約はこれまで高山の仕事だったが
他の社員も元請けとの交渉が出来る様になるのが課題だった
工事規模は小さいとは言えとにかく実績を上げた訳だから喜ばしい
Aちゃんはまだ30になっていない
高山が契約に携わったのは40代になってからだと言う
それに比べたらかなり早く実績を上げたことになる
何より今後の自信につながるだろう
相手地元元請けも女性であるAちゃんに理解ある態度を示してくれたそうだ
Aちゃんの計算能力の高さを評価していたし
それに技術のベテランとのタッグだから信用もあった
いざとなれば高山がフォローする事も元請けは知っていたしそれが信用にもつながった
実際に高山は腕の良い坑夫を送ると元請けに確約
狸穴の仕事は手掘りになる
それはトンネル工事の基本だと言う
だから大きな現場の掘削の班長をやってい坑夫も
基本に戻るために時々体験する事が必要だと言う
だから日当が下がっても声を掛ければやる坑夫は居る
高山はAちゃんに自分の仕事だと思って現場に入れと言ったようだ
当然彼女もその覚悟で「分かっています」とこたえ答えたらしい
今度の契約の経験もそうだがトンネル工事の基本となる現場に関わる事で必ず成長するだろう
高山にしたら彼女の今後が楽しみになる
それにしてもコロナオミクロン株の感染拡大をこれまで回避した経験を生かし無事に乗り切ることを祈るばかりだ
感染者を一人でも出すと工事がストップするやもしれぬ
それは大きな損失になり経営的にも痛手となる
これまでに坑夫たちはかなり不自由な状態での作業が続いて
精神的なプレッシャーも掛かっているはずだ
気晴らしも必要だろうがとにかくこの冬場を乗り切る事
高山も気を許せない日がまだまだ続く
しかし彼は良くやっている
私と京都で会ったときはまだ二十になったばかりの頃
色白のひ弱に見えた高山がいまや10近くの工事現場を仕切る全責任者
元請けや地廻りのヤクザや右翼もどきの連中と堂々と渡り合っている姿を知ると
私には出来ない事をやり遂げる人間になったんだと恐れ入ってる
私は只々彼と仲間たちの無事と活躍を祈るだけ
そしてこのマガジンが誰かの目に留まり
高山のトンネル関係のエッセイ集に注目が集まればと願う
高山にとってそれが最高のプレゼントになるだろう

📖 マガジン発行の初心を忘れない為に 〜マガジン第35号から・・・2019.5.26~工事元請下請けのことなどやある所長のことなど

さて高山の話だが今日はエッセイのことを少し語っていただけで
現場の様子は変化ないようだ
大きな現場・・・大きな元請けの仕事がほぼ同時に二か所で始まるということもあり
現場は大変だと思う
両方とも元請けの所長が理解ある人なので問題がもし起こったとしても
話し合いで十分対処できると思うしいい関係が築けているので大丈夫だろう
しかし現場では何が起こるかだれも予想がつかない
去年だったかその前の年だったか
掘削現場の温度が下がらずに苦労したことがあった
原因も分からず事前の調査では問題にもなっていなかったらしい
かなり困難な状況が続いたようだが掘削の進展で問題の個所を過ぎてやっと
温度が下がってきたという
山・・・トンネル現場では事前の調査ではわからないことも起きるという例
それらに対処して工事を事故無く予定通りに進めてく
順調に行くとは決まっていない
その時々に起こる問題を処理していくのは現場経験の積み重ねにより知識が意味を持つ

大きな現場大きな元請けと書いたが
そも元請けの所長もエッセイに登場している
高山~ある所長
https://blogs.yahoo.co.jp/mumeikon2013/14242349.html
高山~ある所長2
https://blogs.yahoo.co.jp/mumeikon2013/14245269.html

このある所長の話を聞いて私も感心していた
しかししばらく分け合って自宅で病気療養されていた
元請けの会社内での力を持っている存在で
本社での出世コースをけって現場に残ったというほど現場の仕事好き
それが証拠に下請けの外回りの仕事を積極的に手伝っていたという
その所長が現場復帰できて本当に良かったと思う
現場が好きで現場に残った人だから何よりだと思った
それも高山とまた仕事が出来るという
ここに書けないこともあるがともかくも復帰を喜びたい
元請けと下請けの関係は上下関係的な面があるが
高山は下請けが居なければ元請けが受注した工事はできないと
元請け下請けは何ら上下関係になく台頭だと主張する
しかし権限は元請けにあるから従わざるを得ない選択もするが
主張すべきは主張して引かない覚悟でl交渉する
高山の強みはいい抗夫が集まっていい仕事をしている実績があるし
現場は10か所近くあるので面倒なことをいう元請けの仕事はこちらからける
その位の勢いがある
無理して仕事を請けなくてもやっていける自信があるからだ
大手の元請けの所長絵御始めとする管理職はそれなしに教養も知識もあるが
地元の元請け会やの管理職は古い体質がまだ残っていて
女性を使うことにも文句をつけてくるという
そういうところの仕事は受けないでいいという姿勢が
これまた反発を受ける
高山はある意味トンネル業界の古い体質の改革者だから
彼の仕事をねたむ人も多くいるというわけ
高山の仕事をねたむ業者もいるわけ
高山が失敗することを待っている人も多いというわけ
そんな中で高山は頑張ってきた
私が知っている高山はいない
見違えるほど現場で鍛えられた男かいる
今は一人で現場を管理せず集団指導体制になっている
いまはまだ集団指導体制も試行錯誤中だろうが
その実はきっと結ぶだろうと思う
順調な時にこそ注意をしなければならない
少し眠くなって手が止まっている
書いたものが間違って消えてなくならないように
一旦投稿しておこう

📖 高山の作品から〜「Yとの嬉しい再会 6」

Yとの話しが続きますが、何と言うか僕らトンネル屋は特殊な仕事ですし、給料も良いけど一般的には底辺の仕事と思われてます。

これが九州だと、トンネル屋と聞くと一種の畏敬の念を抱かれますが、全国的には土木の作業員の地位は低いです。

しかし、ハードで特殊な技能がないと出来ません。

そういう中で、耳のハンディ持ちながらやってるYは凄いって事です。

普通の人が、トンネルの中の作業中に来たら相当ビビりますよ。

実際、人の紹介でタトゥーの入ったのが来たんです。

僕が、たまたま車に乗せてその男を連れて行ってたらまあ、言うことは威勢が良かったんですが、トンネルの掘削現場を見てその日のうちに無理だと言ってきたのが有りますかからね。


ダンプはガンガン走るし音は凄いし、皆が殺気立ってるように見えるからかもでしょう。

Yと話してて、ある人を思い出しました。

Yと初めて一緒の現場の頃です。

その人が来た頃は、僕はコンクリート班の班長やってて、Yは雑工しながら時々コンクリートの方を手伝ってました。

僕は、なるべくYをコンクリート班に呼んでました。

お金も良いし、何よりYが戦力になったからです。

Yの代わりに、違う雑工の人が来たりしました。

年齢は、四十代を少し越えてたと思います。

外の仕事の経験はわりと豊富でしたが、トンネルに関しては、一二度しかしてなかったです。

僕の知り合いが、トンネルは金になるとか言って呼んだようですが、僕はその知り合いは好きではなかったです。

Yと同い年なのに、要領よくしか動かない人間で嫌いでしたね。

その四十代くらいの人は、口ひげを蓄えていかにも土方って感じでした。

わざとのようにがに股で歩くタイプです。

本人は周りを威嚇してるつもりでしょうが、僕らの世界ではそんなのいちいち反応しませんからね。

仮りに口ひげさんと呼びますね。

口ひげさんは、お金になると言われて来たのに何時までも掘削班に入れてもらえないし、不満ばかり溢してました。

しかし、そりゃ当たり前でした。

免許持ってないし、経験も無かったからです。

何かの仕事をたまたま一緒にしてたら不満ばかりと、僕に対する何らかの敵意を感じました。

後から若い連中が教えてくれたけど、口ひげさんは高山さんは若いのにどんどん良い所を取って偉そうだと言ってたらしいです。

僕にしてみたらお笑いです。

素人が何を言うかです。

掘削班が、一つ残っててそこの班長とかも完全に口ひげさんを馬鹿にしてましたね。

あいつは肝心な時に居ないなとか、僕にあいつを一度ビビらせるかとか笑って言ってました。

コンクリート班は技術はそれほど要らないけど、体力です。

三十代前半の僕でも、毎日宿舎に戻ったらへとへとでしたし、大量の水分をとってました。

それでも脱水症状からか、夜になると脚がつったりしました。

年齢が僕より上の人ばかりで皆良く動いたけど、中には流石に付いていけないからといって僕の所にきちんと挨拶して辞めた人も居ました。

六十代の人が居るくらいでしたし、僕より一番歳が近い人で四十代半ばでしたから、ハードだったと思うけど皆良くやってました。

時には終わるのが夜の十時を過ぎたりするから、無理も無いんですよ。

そういう時に、たまたま口ひげさんとYが手伝いに来ました。

凄い身体をしていたYでもたまに手伝うと、●●ちゃんけっこうしんどいよねと言ってました。

口ひげさんは、上手く楽な所楽な所を探してやってる感じでしたから、本当は要らないなでしたね。

どうしても時間がその時遅くなって、皆へとへとながらもやってましたよ。

十人程居たかなと思います。

コンクリートをどんどん入れるけど、時間が経過すると当然硬くなるからなかなかコンクリートが入って来ないんです。

それでも元請けの職員は、コンクリートポンプを押してと言うから、もう無理だよと言いました。

コンクリートポンプが壊れるし、その大きな型枠を前に無理させて壊してますからね。

それなら仕方ないと言うので、隙間からコンクリートを手で入れてくれないかとなりました。


僕は、そんなのやるのは初めて聞くし、皆疲れてるから勘弁してくれと言い返しましたが、元請けの若い職員も悪いけど高山さん、ここは検査に入られる所だから頼むと言われました。

あー!、それでこんなに無理をするのかやっと分かりました。

役所の検査がこの区間に入るらしいんです。

それならやるかで、生コン車からネコに入れてそれを階段に上げてスコップで、隙間からコンクリートを入れました。

生コン車からネコに入れて持ち上げて、階段をかなり行くんですよ。

ネコで持ち上げながら階段を上がるのもしんどいし、それをスコップで高い所に入れるのもしんどいです。

そう言えば、ネコってのは一輪車ですよ。

ネコで運ぶのを、Yとたまたま口ひげさんがやってました。

Yは力は有るからそういうのは得意でしたが、口ひげさんはへとへとです。

まあ、そうだろうなあです。

口ひげさんは楽な所を行ってたら、たまたまこのハードなのに当たってしまった感じでした。

それで仕方ないから、Yと僕がネコを代わりに持ち上げてやることにしました。

班長でしたし、若かったから率先して辛い所に行かないとです。

何度も上げるうちに、流石にYも僕もこりゃ大変だになりましたよ。

二人で汗だくになりながらやってました。

Yも思わず座り込みそうになったけど、●●ちゃんに良いところ見せようとか笑って言って、必死でした。

Yの方が口ひげさんともやってたから時間的に長いし、重い方をYが率先して持ってたから大変だったと思います。

それでも疲れからか、途中の階段を一度踏み外してしまいコンクリートを下に落としてしまいました。

Yは、しまった!って感じでしたが、こういう事は起こるだろうで下には誰も居させませんでしたし、僕は階段の所に座り込んで少し休憩しようと言いました。

二人ともつなぎを着てたのですが汗で色が変わってるし、顔から沢山汗が出て目に入るから見えなくて大変でした。

他のメンバーも代わりましょうかと言ってくれたり、こんなのはいくら何でもハード過ぎると言ってましたね。

少し休憩と行ってつなぎから小銭出して、元請けの職員にジュース買ってきてと頼みました。

作業員は、口ひげさん以外はへとへとなので使えないから、元請けの職員に頼むねと言いました。

元請けの職員も、ハードな事をやらせてるの分かってたから急いで行きました。

その間、Yと座って煙草を吸おうとしたら汗でぐちゃぐちゃでしたね。

プラスチックのケースに入れてるのですが、蓋を大抵開けてるんですね。

そこから汗が入ったようでした。

Yもそうなってました。

ぐちゃぐちゃな中から、何とか吸えそうなの探して二人で吸ってました。

Yも僕も皆も、ヘルメット脱いで汗を脱ぐってました。

そしたら口ひげさんが、耳の悪いのとビッコとで良いコンビだと笑ったんですよ。

僕は、事故の影響から脚を多少引きずりますからね。

しかし、この場面でそんなの言うかです。

そしたら、東北から来てた五十代後半の身体の大きい良く働く作業員が、あんた何を言ってるんだと訛りながら怒りました。

普段は、非常に温厚で良く動くから、実質的にはコンクリート班のナンバー2でした。

僕は、速攻で疲れてるのも忘れて階段を上がると口ひげさんを襟首掴んで、てめえ帰れ!!と言いました。

そしたら口の中でモゴモゴ言い訳するから殴ってやろうと思って拳を振り上げました。

すると文句を言った東北の人が、先に僕の前に入って思い切り顔面を殴りましたよ。

口ひげさんぶっ飛びましたね。

凄いパワーでしたよ。

僕はえ!?この人こういうキャラなの?ですが、大柄な人の一撃は強烈でしたね。

皆が口ひげさんに向かって、あんたが悪いから今日は帰れと言いました。

中には、コンクリート班に来ても楽ばかりするから二度と来ないで来れ、と言う人も居ました。

皆、見てないようで見てるんですよね。

仕事を一生懸命やってるかをね。

Yは、言われたの聞こえてたけど何も動いて無くて、僕に自分自身のぐちゃぐちゃでない煙草を渡して来ました。

そして、あのパンチ凄かったねと笑いましたよ。

特に怒ってるとか無かったけど、僕があいつはトンネルで通用しないぞと言うと、頷いてましたね。

反応はそれだけでした。

普段から、言われ慣れてるからでしょうね。

いちいち怒ってても仕方ない、って感じが有りましたね。

時にはそれでも怒るけど、大体は流す術を知ってるんでしょうね。

元請けの職員がジュースを大量に買ってきたら、皆二本ずつくらい飲んで仕事を再開させました。

元請けの職員は、口ひげさん今出ていってたけど何かあったの?と聞いて来たけど、皆疲れたようだから帰らせたと僕が言うと、それに合わせました。

何とか仕事を終わって帰りの車の中でパンチを出した人が、いやあ、悪かったかなと反省してたから、いや、あれは凄かったと僕達は笑いましたよ。

Yに対しても皆があんなの気にするなと言うと、Yは笑ってあんなパンチ見られたから良かったと笑って返してました。

口ひげさんはコンクリート班には近づかなくなりましたが、掘削班の連中から何度か怒鳴られてましたね。

掘削班の班長が、皆の居る休憩所で一度口ひげさんに、あんたやる気あるのか?やる気無いなら、あんたのようなの代わりは居るぞと言ってました。

班長は余り露骨にそういうの言わない人でしたが、僕に後で流石に俺も堪忍袋の緒が切れたと笑ってました。

そうしてまた、コンクリートの忙しい日々が続いてて、ある時の朝礼でうちのおじさんの所長が、口ひげさん居ないけど何時から辞めた?と聞いてきました。

僕らコンクリート班は、口ひげさんが辞めたのとか気付いて無かったです。

掘削班も、最近見ないなあくらいだったようです。

口ひげさんを呼んだ奴に後で聞くと、一週間程前にこんな所やってられないと辞めたらしいです。

うちのおじさんの所長が、どうもお前から殴られたから辞めたらしいじゃないかと、僕に笑いながら言いました。

すると東北から来てた五十代後半の人が、それは高山さんで無くて俺の事だと言ったから、東北訛りと混じってて何だかおかしくて皆で笑いましたよ。

何時辞めたかも皆が気づかない程度の男が、口ひげさんでしたね。

Yと当時同部屋でしが、口ひげさんやっぱり駄目だったなと言うと、Yは頷いてそのあと、それにしてもあのパンチ凄かったねと笑いましたよ。

一生懸命やってるYは、何かにつけてコンクリート班の連中は呼びたがりましたね。

口ひげさんの事などは、その後ほとんど誰も口にしなくなりましたが、東北の人のパンチの凄さと、僕が行こうとしたのに見事に先にやられた話しは、笑い話しになりましたね。

東北の人とは、その後続けてもう一つ一緒に仕事して別れました。

大柄で何時もニコニコしてるけど、良く働く人でした。

この話しもYから最近聞いて、完全に思い出したんですよね。

あの時のパンチは凄かったと、●●ちゃん殴ろうとしてたのに先に殴られて面白い顔をしてたよ、と笑われました。

多少覚えてたんですが、あー!そう言えばそういうのあったなあです。

Yに、あの時はムカついたと言うと、Yは特に耳の事を言われたのは問題無かったようです。

慣れですね。それより、あの人働かない人だったからと言いましたね。

それと僕に、●●ちゃんはそういうのを悔しがるから偉くなったのかもと言ったから、うーんなるほどそういう見方も有るのかと思いました。

本来、どちらが偉いは無いんですけどね。

まあ、こういう風に書くと暴力の渦巻く世界のようですが、そんなことは無いんですけどね。

しかし、やはり暴力は今でも一般の仕事と比べたら多いでしょうね。

それは、良いことでは無いけど、今となれば思い出ですね。

おわり

📖「ガーターベルトの女」の映画化のためにエッセイをお読み下さい〜「ガーターベルトの女 外伝⑴」(フィクション編)〜それは夏の事だった。

その日は特に暑かった。

Mこと、美樹との再会は偶然だった。

美樹と最後に会ったのが、彼女が確か二十八歳で僕が三十歳だったから、約二十年振りの再会だった。


僕の街のコンビニでコーヒーと煙草を買って出ようとしていると、女性に声を掛けられた。


僕は、その瞬間に美樹だと思った。

声で分かったからだ。

あの特徴のある、美しく可愛い声でだ。


振り返ると美樹が立っていた。

OL風の紺のスーツにスカートだった。

僕は四十九才、美樹は四十七才になってるはずだと思ったが。見た目は確かに若い頃と少し変わっていたが、円熟した中に昔の彼女が居るように見えた。

三十代半ばと言っても充分通用する美貌とスタイルを保っているのに驚きを覚え、見直した位だった。

美樹は笑いながら近付くと軽く蹴ってきて、変わらないね相変わらず前から見ると変な顔だねと、クスクス笑いながら今度は、パンチを思い切り僕のお腹に入れてくる。

あー!やっぱり少し緩んでるなあと笑った。

僕は、今何処に居るのかと聞くと生命保険会社と短く答えた。

気になっていた、結婚して子供が出来たと聞いたけどおめでとうねと言うと、彼女は笑った。

結婚はしたけど、子供は居ないし三年で別れたよと言いながら、またパンチを思い切り入れて来たので、避けながらわざと近づいて持ち上げた。

そして僕は、昔はありがとうと言った。

その瞬間、頭がぐるぐる回るような感じになった。

気がつくとかつての美樹の店だった。

美樹はOLスーツのまま歳を重ねていたが、昔より美しく見えた。


カウンターの中に入ってたが、軽く飛んでカウンターから出てきた。


ガーターベルトをしてたが、チラっとしか見えなかった。

前より上手くなったでしょうと笑うと、冷蔵庫からビールを三本出して栓を開けた。


僕にそれを渡すと、僕の横の席にそれを置いて言った。


生きてるよ。あの人は私達の中でね、と言うとクスクス笑った。


僕はおかしいかと聞くと、そうじゃなくて貴方や私が笑ってないとねとだけ言って、乾杯と言うとビールをラッパ飲みした。


そして半分ほど飲むとへへへと笑って、かなり飲めるようになったよといたずらっぽい顔で言う。

僕は煙草に火をつけ、もう一本出すとそっちにもつけてビールの前の灰皿に置きながら、ラッキーストライクだけど悪いなと言った。

美樹は僕から煙草を取ると吸ったが、やっぱり不味いねと笑った。 

しばらく沈黙が続いたと思ったら、美樹が僕の腕を触っていた。


四十九にしては相変わらず凄いね、と言うと抱きついて来た。 


そして、上に乗るとキスをして腰を動かし始めた。

昔に比べて更に技巧的で上手かった。
 
愛情も感じたが、奴が見てると言うと見てるからするんでしょう、と言われた。

あの人は喜ぶよ、歳を取っても相変わらずだと思うよ。

僕はあっという間に射精した。


その瞬間、コンビニの前に戻っていた。


美樹が僕を蹴ると、今の夢だと思うと笑った。

綺麗な歯が見えた。


美樹は僕のライトバンに勝手に乗ると、私の車はここに置いておくと言って早く出せ!!と笑った。


夕暮れが近づいていて道は混んでいたが、ラジオを付けると懐かしの九十年代ポップスと言うのをやっていた。

美樹は懐かしとかやだねと言うと、窓を開けてラジオをボリュームを最大にした。

高速ではないが三車線の広い長い道を走った。

昔に戻ったと言うより、今の美樹も昔の美樹も同じだなと思わず笑いが漏れそうになる。

そう思ってると、強引な形で黒のセダンが僕のライトバンを抜いた。


見ると若いカップルのようだったが、男はあばたが目立ち女は金髪で太っていた。

美樹は僕に向かって、抜き返しなさいよと怒ったように言った。
 

僕の中で何かに火がついた。


カチッと音が聞こえたような気がした。


僕はミッションのライトバンを加速させて黒のセダンを抜いた。

相手は驚いた顔をしたようだが、再び強引な形で抜こうとしてきた。


(そんなものか!!)


頭の中で、死んだあいつの声がはっきり聞こえた。

僕は、抜きかえそうとする車に軽くライトバンを当てた。


美樹はクスクス笑いながら、もっとやれ!!と叫ぶ。

相変わらずクレージーだな、と笑いが出た。

相手の黒のセダンはまさか当てられるとは思ってなかったようで、後ろに下がってピタリと付けてきた。

美樹は、今あの人の声が聞こえたよね。それなら徹底的にだね、と楽しそうに言う。

美樹にもあいつの声が聞こえたようだった。


僕たちは三人だと思うと嬉しくなってきた。

僕は大きな駐車場のあるコンビニに、相手の黒のセダンを誘導するように入った。

美樹が先に降りて、若い男が降りようとしてる所を思い切り蹴った。

若い男はまさか女から蹴られると思ってなかったようで、車の中に座り込むように戻った。


僕は煙草に火をつけながら、にやけながら近づいた。

金髪の太った女は完全に驚いたようで、車から出ようともしない。


若い男は女が見てるせいか再び車から出ると美樹に向かって行こうとしたが、僕がその腕を捕まえて車に押し付けた。


そのまま腕をアームロックの形で極めた。


最初は抵抗したが、ギリギリと片腕を締めながら何発か腹に膝を入れると大人しくなった。


腕を折るのは難しいが関節を外すことは出来たから、このまま腕を壊すぞと脅すと若い男は泣きながら謝ってきた。

美樹がおじさんと、おばさん舐めるなよとおどけて言って、更に舐めるならその不細工な彼女のでも舐めてなさいと付け加えた。


僕は思わず笑いながらコンビニに行こうと言うと、自然に軽く手を繋いで二人でコンビニに入った。


かつてはこういう風に、自然に手を繋ぐって事はなかった気がする。


美樹はコンビニでオレンジジュースを買った。


僕は缶コーヒー二つとマルボロを買うと、二人で手を繋ないで車まで歩いた。

車に乗ると、マルボロの封を開けて火をつけて、ゆっくり吸った。

ラッキーストライクに比べたら雑味がある独特な感じを、久しぶりに味わう。

僕は、死んだあいつに心の中で久しぶりに吸うと苦味が有るなと話しかけたが、もう声は聞こえなかった。


車をゆっくり出すと美樹がホテルに向かってと言うので、戸惑いながらもラブホテルに向かった。

美樹はラブホテルに入ると、昔のような身体じゃないよと言いながらも堂々と僕の前で脱いだ。


確かに昔のような身体では無かったがそこには、成熟した物と努力のあとがあるように思えた。


ガーターベルトをつけたまま僕の服を脱がせると、うーん中年になってるとクスクス笑った。

美樹は僕のものを咥えた。


僕はシャワーも浴びてないからと、美樹から逃れようとしたが離さない。

笑いながら気にしないのと言う。


しばらくすると美樹の口の中で出してしまった。


僕の方も火がついて、美樹をベッドに倒すと舐めた。

懐かしい匂いのように感じた。


結局二度セックスをした。


美樹は、あの時してなかった分を取り戻した?と聞いてきた。


別れた後に、美樹の部屋に泊めて貰って誘われながらもしなかった時の事だった。

僕は、取り戻したってよりこれからじゃない、と答えると美樹は笑った。


広くない街だけど見つけられるかな。携帯の番号とか教えないからねと美樹は笑うと軽く腹を殴ってきた。

僕は見つけられるよ。


俺にはあいつも付いてるからと言い返した。 
 

美樹はにやりと笑う。

目尻にかつてはなかった皺があったがそれも魅力になっていた。


僕は美樹と会ったコンビニ周辺をなるべく通るようにしたがなかなか会えなかった。

夏が過ぎて秋になっても美樹を常に何処かで探していたが会えなかった。

ある時レンタルビデオ店に寄ると心の中で声がした。


(アルバチーノの映画)


それだけだったが僕はアルバチーノの映画の『カリートの道』のある場所に行った。


しばらくしてると行きなり肩に思い切りパンチが入った。


美樹が笑いながら立っていた。


ジーンズに上着を羽織っていたが、相変わらずお洒落だった。


『カリートの道』好きなの覚えてたと言うと軽くキスをして来る。 


僕は勿論と言うと美樹を抱き締めた。

美樹の髪の匂いに混じって、あいつの煙草の匂いがしたように思えた。


美樹はこれを三人で観ようと言った。

美樹もあいつを感じたようだった。


僕は、三人でなと笑うと美樹も笑った。

だけど、電話番号はまだ教えないからね。また彼が導いてくれるよといたずらっぽく笑う。


そして僕のお腹に何発もパンチを入れた。

その目に涙が光っていた。

その顔はとても美しく見えた。

おわり

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