高山が作家として更に飛躍することを願い創作活動を支援したい!~エッセイ「ガーターベルトの女」の作品化を目指して【356】
妄想家・夢想家無名居士の夢物語の記録です
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随筆「濡れる女子事務員 12」
2018/03/23
Aちゃんも頑張ってますが、Aちゃんが、元々居た現場の連中が素晴らしい成果をあげてます。
皆、良くやってます。僕は仕事面と言うか、坑夫に恵まれたなと感謝してますね。
七つの現場とも遅れは無くて全て良いですが、最も大きなこの現場が、ある意味奇跡的成果をあげてますね。
それは、Aちゃんが普通のアルバイト事務員から、少しずつ変わって行った数ヶ月前から起こってます。
色々な要素は有るけど、ある意味Aちゃんは幸運の女神的存在なのかもと言われてます。
それは、七つの現場とも坑夫の腕はそれほど差がないのにこの現場だけが、突出して成果をあげてるからですね。
簡単に、トンネルの坑夫の請け負い方を説明します。
単純に言えば掘ったら掘っただけの金額になるって事ですか、例えば一メートル掘ってもそれが、請け負いになるのに満たさないなら常用単価しか貰えません。
常用単価で班長以外は、二万二千円で班長は、二千四千円です。
それでも、良いじゃないと思うかも知れないけど、請け負いなら請けに持って行ってそれ以上お金を取りたいのが当たり前です。
坑夫なら当然ですね。
しかし、どうやっても請けにならない山も有ります。
そうすると、この程度やって終わらせるかって感じになりますね。
それは、山次第と会社が出してくれる金額次第ですね。
僕が坑夫時代は、ほとんど請け負いにして二万二千円を少しでも超えるようにしてましたが、どうしても難しくて駄目って事もありましたよ。
それは、多分一度くらいですね。
Aちゃんが主に居る現場は、Aちゃんが活躍するまでもそこそこの金額を取ってました。
一人平均三万二千円位です。
これが土曜日の夜勤はやらないから三万二千円×二十四日です。
七十六万程です。他の現場で本格的山岳トンネルの所が今でもそのくらいです。
これから色々引かれて約五十万円の後半が手取りになりますね。
これは、今の時代のトンネルの世界では、かなり良いですよ。
毎月誤差は有るけど、大体そのくらいでした。
今は、全体の単価が下がってるからこのくらい取れれば良いです。
全体の単価とは、工事の金額が下がってるって事ですね。
僕が入った頃の二十代からは、約三十年で三割程度下がってると思います。
それだけに、坑夫も昔ほどお金を取れない時代になりました。
僕が現役の頃は、班長やってたら月に手取りで何とか六十万円を大体の目安にしてましたね。
その時その時で条件が違うけど、大きな現場ならそれを目指してましたよ。
僕が、山が良くて班長やってて三十代の頃に、一つの現場だけ順調に手取りで百万円を超えた事が有ります。
ここでは、山が良かったのとメンバーが良かったからかなりの期間百万円を超えましたが、相当ハードでしたし僕個人は、父の大きな借金を返してて大して儲けてないですね。
他では時々百万円超えたのは有るけど、山が良くてメンバーが最高でないと難しいです。
二十代の頃には、父の会社で社員をしてて手取りで百万円を超えるを何度か見ました。
今は、百万円を超えるのは余程山が良くないと取れないです。
因みに坑夫は、泊まり込むから食費は引かれます。
光熱費は引かれないけど、食費は引かれます。
生活に必要な物は、ほとんど宿舎に揃ってます。
うちでは、煙草以外は給料引きにしますから、お金を持ってなくてもとりあえず生活は出来ます。
昔は、作業着だけを小さいバックに入れて坑夫は来てた位です。
こうして坑夫の実態を説明しても、例外も沢山有るしなかなか難しいけど、とにかく請け負いで仕事をしてるが、今は昔ほどお金を取れないって事です。
それでも一般の土建屋から比べたら坑夫は取れる方ですが、それだけ腕が必要なのと危険が伴うって事ですね。
うーん、坑夫の説明難しいね。
昔は、百万円を超える金額を取れてましたが、今は非常に難しいって事です。
ところが、Aちゃんがトイレの掃除や休憩所の掃除を始めて徐々に掘削班が、お金を取れるようになりました。
そして、この三ヶ月程で百万円を超えて来てます。
今の時代に百万円を超えるのは、非常に難しいのに坑夫達は色々工夫して、軽く百万円を超えてます。
非常に驚きですね。
これは、耳の不自由なYが流れを呼び込んで、Aちゃんがある意味開花させたと僕は思います。
そういう事って有るんですね。
運を持ってる人間が掘削班に来る事で、一気にお金が取れるようになったとかね。
僕も現役時代は、運を持ってると言われました。
だから腕はそこそこでも班長に押し上げられたのでは、と今では思いますね。
そうしてたら、腕はそうでも無くても段々といかに人間を使って上手く動かすかを覚えました。
僕の現役時代を評してある人が、運の人と、人を動かすのが上手い坑夫と言いましたが、そうだと思います。
腕は、僕より上でも僕の下に付いたのは沢山居ますからね。
Aちゃんには、そういう資質が有ると思います。
だから社員にして、僕の右腕にしたんでしょう。
そういうAちゃんも今ではすっかりトンネルに入って、僕と掘削班やコンクリート班の手伝いをします。
色々やらせてますが、ビビる事も有るけどガッツが有りますね。
それが、坑夫にも浸透してうちの連中は彼女を批判しませんし、逆に庇うし可愛がりますね。
それと、他の現場の連中もAちゃんが居る所が頑張ってるなら、俺達も更にやろうという機運になってるのも良いですね。
Aちゃんは、こないだコンクリート班のコンクリート打設を手伝いました。
コンクリート打設の為にはコンクリートにバイブレーターをかけるんですが、力が無いから遠くまでは飛ばせないけど、段々と工夫して上手くやりましたね。
コンクリートにバイブレーターかけるのも上手い下手が出ますが、僕もなかなかセンスが有るなと見てたらコンクリート班の班長も、高山君あの子上手いよと言いましたね。
この人は、元々は掘削班でしたが、年齢を重ねてコンクリート班を今では専門にしてます。
人柄も良いけど、きちんと言う人です。
トンネルの世界の細かい説明は徐々にするとしまして、この時の面白い話しを書きますね。
コンクリートを打つには、セントルと言う大きな鉄の型枠を使います。
コンクリートがはいると窓があって、下から徐々に上がって来ます。
窓からバイブレターかけます。
最後は、一番上ですが、ここまで来ると止めるのに板で止めてて、型枠の中に入ってバイブレーターをかけます。
コンクリートが、どうしても硬くなるから中に入るんですよ。
多分書いてる僕は、分かってても読んでる人はイマイチ分からないかもなあと思いながら書いてますよ。
まあ、狭い所を這いずるようにして入ってて、バイブレーターをかけるんですよね。
それとセントルはメタルですし、外す時にコンクリートが付かないように油を撒いてます。
狭い所に入ってしんどい作業する上に、非常に汚れるんですよね。
これは、ベテランになると嫌がりますね。
油の臭いが取れなくなるのと、しんどいからです。
この油を常時浴びてると、本当に臭いが取れにくいです。
しかし、ここがラストの正念場です。
こないだ、二人で手伝ってた時もそうなりました。
何時も最後に行く小柄で細身の二十代の作業員が、ヤッケを着て用意を始めてました。
小柄で細身だと動きやすいし、まだまだ若いから彼が主にその役目をやってます。
今回は、中を見てもそれほど難しくは感じませんでした。
僕もコンクリート班の班長を、かつてはやってたから良く分かります。
自分自身で言うのもなんですが、掘削班の班長になるとか実力で若いうちから所長になる人は、オールマイティーです。
私生活は、グダグダでも僕は特にオールマイティーだと思いますね。
最後のコンクリートの所で、中にも何度も入ってます。
これは、しんどいのと油で汚れるのと油で滑るから難しいんですよ。
しかし、その日は比較的簡単そうでしたから、何時も行く若い作業員に行かなくて良いと言いました。
そして、Aちゃんに新しいヤッケ着させて、お前が入ってみろと言いましたね。
Aちゃんは、入るのは良いけど私で大丈夫ですかと言うから、こうしてバイブレーターをかけろと大体の指示をしました。
それに彼女は、女性としては背が高いけど、細くて小柄ですから動きやすいんですよね。
それと、失敗しそうなら俺が出るように言うから直ぐに出ろ、と言いました。
失敗しそうなら、久しぶりに自分自身が入ろうと思ってました。
ある意味、完全なコンビですから彼女の失敗は、僕の失敗ですからね。
多少不安そうでしたが、時間が無いから早く決めろと言ったのと、失敗しても俺が後から行くからと言いました。
そしたら、分かりましたとスッと中に上手く入りました。
少し高い所に入らないと行けないんですが、Aちゃんは台を使ってスッと入りましたね。
男ならどうしても狭さにそんな風に入れないですが、やはり細いのは、こういう場合は得ですし彼女は、運動神経良いのを感じましたね。
それは、前から感じてたけど班長は見ながら思わず、ホーと声をあげてましたよ。
最後の所は、元請けも居るし皆集まってます。
これが、終わらないとどうしようも無いからですし、元請けは何処までコンクリートを入れるかの最終決断をするために居ますね。
元請けの、何時もコンクリート班に付いてる三十代の男も、まさか彼女を僕が行かせると思わなかったようで、僕に大丈夫かと聞いて来たけど失敗しそうなら直ぐに出して俺が入るからと伝えました。
元請けの若い人は不満そうでしたが、僕の強気な言葉に頷くしかないようでしたね。
彼女は、最後の部分は細目のバイブレーターを使うのですが、それを持って這いながら行きました。
細いAちゃんでも滑るし狭いですから、這いずり回るって感じですよ。
途中、ヘルメットが引っ掛ると言うから、脱いでこっちに投げろと言うと脱いで投げました。
僕もヘルメットを脱いでタオルを頭に巻きました。
油で髪が汚れるから、タオルをほとんど使わないトンネルもコンクリートではポケットに畳んで入れてますね。
Aちゃんにタオルを巻かせなかったのは、失敗したなと思いましたが、仕方ないです。
汚れるのも仕事の一つですからね。
彼女見てると上手くやりましたよ。
コンクリートがどんどん来るから下がりながら、上手くバイブレーターかけましたね。
コンクリート班の班長は上手いなと嬉しそうに笑いながら見てましたね。
僕は、それでも何処かに責任と不安があったからAちゃんに、もういいから出ろと言いました。
最後に、コンクリートの中に突っ込むつもりで大きめのバイブレーターを持ってAちゃんが、出ると入りました。
Aちゃんと違って、ドッコイショって感じで中に入りましたよ。
見るとほとんど完璧に近かったですが、最後の最後は俺が仕上げて、最悪失敗しても自分自身のせいになれば良いと思いました。
失敗する気は、ないし上手くやる自信は有りましたけどね。
僕の右腕は、上手いと言われたいから完璧に仕上げてやろうと思いましたね。
久しぶりにコンクリートの中にズブズブになるまで入ってバイブレーターかけましたね。
そして、外に出ました。
Aちゃんは油で相当髪も汚れてましたが、入れて上手かったと皆に言われたのが嬉しそうでしたね。
僕も出てきて、お前が上手くやったから楽だったと言いましたよ。
確かに上手かったけど、まだまだ最後の最後は出来るかなと本音は思ってましたがね。
力が要るから、どうかなですね。
それでも、良くいきなりやったなと思いましたね。
そして、外から木の蓋を閉めてセントルに付いてる自動のバイブレーター全開でかけて終わりました。
皆、Aちゃんを誉めてましたね。
僕も自分自身の事のようで嬉しかったです。
しかし、煙草を吸おうとしてふと気付くと、自分自身ヤッケを着ずに入ったから油でどろどろになってました。
煙草まで駄目になってて、あー!しまったですよ。
コンクリート班の班長が、流石の高山君もAちゃんが入るのに慌ててたか、と耳元で笑いながら言いました。
確かにAちゃんが入るとなって、何処かで自分自身が焦ってたようですね。
Aちゃんの責任は、自分自身の責任と思ってるからでしょうね。
コンクリート班の班長は真面目な顔をして、あの子は上手いよと最後は言いましたよ。
面白いと言うか当たり前なんですが、先ず僕がAちゃんを認めて次は班長達が認めて、徐々に皆に拡がりました。
やはり、実力で長になってる連中は見る目が有るのと、僕より彼女を大事にしてますね。
二人で戻りながら、余り誉めない班長が誉めてたぞと言うと喜んでましたね。
それと、髪を帰ったら何度も洗わないと落ちないからなと言うと、それより高山さんの作業着凄い汚れましたねと笑われました。
車で着替えて出ると、汚れた作業着を家で洗ってあげますと取り上げられましたよ。
お父さんが汚れて帰って来ても、自分が洗うから得意ですからと言われました。
お父さんは、漁師ですから様々な汚れが付く時は多いだろうと想像しました。
次の日に、Aちゃんが早くも僕の作業着を持ってきてくれたのに驚きましたが、柔軟剤の良い匂いがするのにも驚きましたね。
お前、こんなのに柔軟剤使わなくてもと言うと、気持ち良いでしょうと笑われました。
今回のコンクリート班の手伝いのように、彼女は様々な事を積極的にやってます。
坑夫やコンクリート班の連中が、彼女を認めて彼女をある種の幸運の女神のように言うのは、普段のこうした努力でしょうね。
ああいう場面で言われても、今日は無理ですと言えば無理にさせないですが、彼女は、なるべく行きますからね。
それは、僕がサポートに回ってるからと言うより、彼女の資質が良いんだと思いますね。
だから、皆も彼女を認めるですね。
なかなか女性が本当の意味で認められるのは、難しい世界で認められつつ有るのは素晴らしいです。
どちらかと言えば、と言うより一般の仕事より、いくら若くてそこそこ可愛くても女性を作業には嫌われますからね。
今回は、トンネルのシステムをもう少し分かりやすく書きたかったですが、上手く行かずにすいません。
だけど、一人の女性がある種の革命を起こしつつ有るのを側で見られてサポート出来てるのは、おっさんの僕にしたら嬉しいですし、まさかこんな展開になるとはと驚いてますね。
これは、小さい革命かも知れないけど、トンネル業界にとっては大きな変化ですよ。
Aちゃんは、更に驚いたり苦しんだりは続きますよ。
それとこの話しは、場所を特定されたく無いから多少ぼかしてますが、ノンフィクションですよ。
Aちゃんの今後の活躍と、坑夫達の活躍をもう少し書きたいですね。
こういう経験は長いトンネル業界生活でも始めてですし、興味深いです。
おわり
次回は随筆「パンティとチャンポンと笑顔」
「ガーターベルトの女」~映画化のために
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