高山が作家として更に飛躍することを願い創作活動を支援したい!~エッセイ「ガーターベルトの女」の作品化を目指して【371】

妄想家・夢想家無名居士の夢物語の記録です
無名作家高山のエッセイ「ガーターベルトの女」の
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随筆〜死んだ友達とレイバンのサングラス

2018/05/29
今年で五十才になる。

彼も生きていたらそうなっただろう。

五月は、僕にとって昔はとても好きな季節だったが、鬱を患ってから新緑が眩し過ぎて、調子の良い季節では無くなっている。

彼が死んだのも、この季節だからかもしれないと無理にこじつけるが、梅雨の前に死んだと言うのだけ覚えてて、今では色々な事を忘れつつある。

忘れたいからかも知れない。

正確には、彼を忘れたいので無くて細部を忘れたいのだと思う。

今日は、仕事で彼と良く通った道を、部下でもある社員の女性と車で走っていた。

見覚えのある納屋のような古い建物を見つけて、彼女に車を停めてくれと頼んだ。

近くに自販機があったので缶コーヒーを適当に買って、納屋のような建物の前に立った。

彼が好きだった缶コーヒーの銘柄も忘れてたから、適当に甘すぎないのを買う。

納屋のような建物は、随分古くなって崩れかけていた。

小さな倉庫のような建物だ。

ここの前に車を停めて僕達は、相手を待ったのを今でも思い出す。

当時、確か僕達は三十代半ばで、この道を僕の車で走っていた。

久しぶりに、僕は地元に戻って居て、彼も忙しい中で会おうと言ってきた。

彼は、職業はヤクザで良い車に乗っていったが、僕が乗っていたミッションのライトバンを気に入ってそれで、この道を走って何かを買いに行っていた。

何を買いに行ってたのかは、忘れてしまった。

彼は、古いライトバンに乗りたかったと言うよりミッションの車を楽しみたかったようで、運転は彼がしていた。

その時、暴走族に少しずつ囲まれたのだ。

この辺りは、暴走族が時々出るので有名だったが、昼間に出るのは珍しかった。

囲んだ連中はどんどん増えて、十数台のバイクに囲まれた。

彼は、面白くなったと笑ったが、僕は面倒だなと思っていた。

彼とは、十六才からの付き合いで数々の修羅場を潜ったが、既にお互い三十代半ばで僕は面倒だった。

しかし、彼はそういう僕を笑って、最近は面白くも何ともないからこういうのがないと駄目だよと言った。

彼は、ライトバンに何かしら武器のようなのを積んでないかと言うが、何も積んでなかった。

僕に向かって、昔のように警棒とか木刀とか積んでないのかのと言ったが、警棒だけは確かあったはずだと思い出して後ろの席を探ると、ずっと使ってない警棒が見つかった。

彼は、お前は剣道が出来るからそれが有れば良いなと笑った。

まるで、高校の時に学校に遊びに来て、何階からなら飛び降りれるかとやった時のように無邪気な笑いだった。

彼は、高校に行ってないが、時々制服を借りて高校に遊びに来ていたのだ。

そこで、何故か気が合ったのだ。

三十代半ばにしては、昔のような無邪気さや本当の笑顔がほとんど見られなかったが、暴走族に囲まれた事によってそれが蘇っていた。

それでも、昔とは違うような気がした。

彼は良い高級時計をして金回りも良さそうだったが、僕から見ると何かしら陰鬱とする物を溜め込んでるように感じていた。

昔とは、やはり変わっていた。

それでも、一番の親友で有るのは変わって無かったから、付き合う事に僕は決めた。

親友や友達と言ってもなかなか、本当の意味での対等な関係は難しいと思う。

どちらかが、どちらかの上に立とうとするのが良くあったが彼と僕とは、珍しく対等だったと思う。

十代、二十代の頃は良く遊んだが、僕も仕事で居なかったり彼も二十代の後半辺りから仕事が忙しくなっていて、こうして遊ぶのは久しぶりだった。

彼は、納屋のような小屋の前に車を急停車させると、降りて納屋の中に入った。

急いで出てくると、こん棒のような物を僕に渡した。

多分、スコップの先の部分が取れた物だろうと思われた。

暴走族の連中が囲むように迫っていたが、彼はギアをバックに入れるとそのまま相手に突っ込んだ。

僕のライトバンはあちこちへこみがあったが、修理してるいる最中だった。

まあ、こうなったら諦めるしか無いなと開き直るしか無かった。

暴走族の連中は驚いたように逃げたが、突っ込みながらスピンさせて前向きに、今度は連中に突っ込んだ。

一台のバイクが軽く車に当たって大きく倒れ、運転していた若者が道路に投げ出された。

彼は、こん棒を持つと車を出てその一人を、こん棒で殴り付けてバイクを奪った。

僕も警棒を持って車を降りて、突っ込んできた一人を殴り付けた。

ぶっ飛ぶように、そいつは道路に叩きつけられた。

こうなったらとことんやってやろうと思った。

しかし、相手はこん棒をもってバイクで走り出した彼にビビったようで、一斉に逃げ出した。

まさか、反撃されると思ってなかったのだろう。

彼は、バイクで戻ると二人倒れてるのを良く見てヘルメットを取ると、思い切り頬を張った。

そして、おっさんなめんなよというと、歩いて帰れと言った。

動きを見てると、完全な暴力のプロの動きだった。

昔も激しかったが、こういう風にプロのような動きでは無かった。

僕の所まで来るとあいつら逃げたな。これからだったのにと笑った。

それからバイクをこん棒で壊すと二人で納屋の前に置いた。

彼は、それが終わると近くの自販機で缶コーヒーを二人分買うと、煙草を吸いながら少しだけそこに居て車に乗り込むと急いでその場を離れた。

警察が来ると面倒だからと、どんどん他の車を強引に抜いていった。

そして、相変わらずお前もやるねと笑った。

その後、何処に遊びに言ったのか覚えていない。

しかし、一時の興奮が収まると彼は、面白いことなんてそうそう無いなと虚しそうに言ったのを覚えている。

その後僕は、再び違う土地に仕事に行ったが、彼が刑務所に入ったらしい事を聞いた。

そんなに長くは無かったが、次に会った時は、前より更に良い車に乗って高そうな物を身につけていた。

しかし、それが邪魔なようだったし、何よりかつての生き生きした目付きを失いつつあるように感じた。

その時が、確か三十代後半だったが、見た目より醸し出す雰囲気は老人のような所があった。

短い間しか会えなかったが、僕に生きてても面白くないなと何度か言ったのを良く覚えている。

こんな物を身につける為に頑張ったんじゃないとも虚しそうに笑ったし、生きてて何になると何度か言ったのも覚えている。

彼は彼であったが、十代の彼の欠片を見つけるのは、親友の僕には僅かに分かったが、他の人間には分からないのではと思った。

彼は、忙しくて何処かに行かないといけない、と言って謝った。

そして、当時の僕は大抵薄いサングラスを掛けてて、それを取り上げるとこっちと替えてくれと言うと、自分自身の胸に掛けていたサングラスを渡して来た。


それは、レイバンのサングラスで周りが金色で、色が濃かった。

掛けると悪くないが、いかにもヤバそうな人に見えるだろうなと思えた。

彼は、僕のそれほど高くない薄いサングラスを気に入ったようで、また連絡するとそれを掛けると高級車に乗って去っていった。

その後、何度か連絡があったが、楽しい話しは昔話しばかりで電話口から彼が苦しんでるのが分かるような気がしたが、僕にはどうする事も出来なかった。

彼は、その後また刑務所に行って戻った。

最後に会った時は、僕も彼も遠くに居たが、どうしても会いたいと珍しく言ってきて会った。

それが、最後になった。

彼は自殺したのだ。

それが、何年前かもうハッキリ覚えてないない。

何故自殺したのかは、やむ得ない事情があったか、それとも本人の意志なのかも本当は分からない。

周りは、どうせヤクザだしとかアイツは調子に乗ってたし等と言ったが、僕はそういう事を言った連中にはなるべく電話して、適当な事を言ってるんじゃ無いよと怒った。

彼から貰ったレイバンの派手なサングラスは、ケースに入れて取っておいたが、出して見るとまだまだ使えたし、意外に派手さがかっこ良かった。

その日も、それを掛けていると女性社員が、怖いですよと言いながらも似合いますねと笑ってきた。

僕は、納屋のような建物の前でラッキーストライクをジッポライターでつけると、缶コーヒーの蓋だけ開けた。

彼が何を吸ってたか、ラッキーストライクだったかマルボロだったかさえ思い出せなかったが、十代の頃には一本のセブンスターを大事そうに二人で吸ったのだから良いだろうと思った。

僕は、吸いかけを缶コーヒーの上にそっと置いた。

そして、レイバンのサングラスを掛けると、確かに生きてても良いことなんてないなあと彼に話しかけるように独り言を呟くと、女性社員が待ってる車に乗り込んだ。

色々な事を忘れつつ有るが、彼が生きていて大事な時期を二人で過ごした事だけは、忘れない。

細かい事など覚えて居ないが、それで良いのだと思う。

車に乗ると、彼も僕も好きなローリング・ストーンズを大音量でかけた。

女性社員が少しだけ驚いた顔をしたが、直ぐに運転に集中し始めた。

五月の美しい緑は、今の僕には辛いのでレイバンのサングラスがそれを少しでも和らげてくれているのが、助かった。


おわり

次回作品 随筆 〜濡れる穴の中1~序章

「ガーターベルトの女」~映画化のために​

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