高山が作家として更に飛躍することを願い創作活動を支援したい!~エッセイ「ガーターベルトの女」の作品化を目指して【373】

妄想家・夢想家無名居士の夢物語の記録です
無名作家高山のエッセイ「ガーターベルトの女」の映画化芝居化〜その他いろいろ作品化できればなんでも・・・なんて途方もない夢を観ています

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【 随筆 】小池百合子に騙されるな

高山の作品から

随筆〜濡れる穴の中2 片眼の男

2018/06/10
新しい現場が始まってます。

新しい作業員をどんどん入れてますね。

全部合わせて八現場で、炊事婦さんや事務員入れると百人近い人間が働いてます。

新しい現場は、二番目に大きい現場でナトム工法で発破を使います。

何れ、コンクリート班も入って来ます。

今回は、若い腕の良いのが集まってますね。

色々トラブルも有るけど、社員も増えて本社に負けない体制作りをしてます。

「濡れる女子事務員」シリーズのえり子ちゃんが、実質的に右腕になりつつ有りますね。

現場でも、今回は二十トンダンプが入ったから練習してますよ。

それ以上に、事務面を細かくチェックしてくれてます。

相当な無駄遣いが分かりましたね。

どうしても、事務上がりからの所長は使わないし、僕も元坑夫ですから緻密にやってるつもりでもどんぶり勘定になってしまってる。

それをえり子ちゃんが、徹底的に見直してくれてますね。

彼女、最初は文系かと思ってたら理系ですね。

僕自身の弱い所をフォローしてくれてますし、働いてる作業員からも好かれてますよ。

作業員から好かれて、何処の現場でも一目置かれるようになりましたね。

それは、僕が右腕って事を強調したのも有るけど、やはり二十代の女の子が努力したからですよ。

もう一人、四十代半ばで一番大きい現場で掘削班の班長してたのも社員になりました。

青柳と仮名をつけますね。

彼は、まだまだ社員に慣れて無いけど、何れ彼の出番が来るでしょう。

元々は、若いアルバイト事務員のえり子ちゃんを社員にするつもり無くて、坑夫経験の豊富な冷静な青柳を社員に何度も誘ってたんですがね。

今回、えり子ちゃんの活躍を観たり色々彼も考えて、社員になりましたね。

個人的に言わせて貰えば早く入れば良かったのにですが、こういうのはタイミングですね。

新しい現場は、既に班が別れた時の為に班長決めてます。

三十九歳と三十七歳が班長やります。

他の会社だと早いと言われるでしょうが、僕は三十代をなるべく前に行かせます。

三十代が体力的にも仕事の面でも、一番乗ってるからね。

掘削班は、五人ですがバランスを考えますよ。

ベテランも当然入れます。

若い班長を支えるって形ですね。

その辺りきちんと言い含めますよ。

でしゃばり過ぎずにだけど、いざって時は助けてあげてねですね。

今は、まだ全員は揃ってないです。

昼勤だけなので、そんなに人数要りませんからね。

そういう中でも、こないだ呼んだベテランの話しです。

年齢は四十七歳ですが、高校卒業してずっとこの世界に居るからベテランですね。

彼を片岡と仮名にしますね。

彼とは、十数年前に僕が作業員の時に知り合ってます。

身長は一メートル七十程で、太ってもないし痩せても無いです。

福岡の田舎の出身ですね。

炭鉱のあった辺りです。

この辺りの人間の気の荒さは有名ですが、片岡は全然違いましたね。

見た目ですがね。

初めて会ったのが多分沖縄で、僕が三十代半ばでした。

片岡は、他の人間が辞めてしまい補充として人に紹介されて来ました。

その頃僕は、同い年の坑夫のHとして前にも何度も名前が出てる橋本と組んで、掘削班の班長でした。

橋本も仮名ですよ。僕が、三十代である種の全盛期を迎えられたのは橋本と組んだからでしょうね。

橋本は根っからの職人で、僕は人を使うのが上手かったって有りますね。

しかし、当時は僕も橋本も動きましたよ。

動いて動いて人を使ってましたね。

片岡は、そういう所に来ました。

来た時の格好がジーンズにポロシャツで、眼鏡を掛けてました。

特に、派手な物を身に付けてるとか無いですね。

坑夫は、多いですからね。

派手な刺繍入りのジーンズとか、アクセサリー着けてたりとかね。

ブランド物をこれ見よがしに着けてるとか沢山居ましたし、今でも多いです。

片岡は、地味でしたが目付きを見た時に、非常にキツイ目付きをしてましたね。

それに、福岡の荒い所の出身ですから注意してましたが、僕と橋本の班に来ても黙々と仕事をこなすタイプでした。

酒が余り飲めないけど、付き合いはしましたね。

橋本と、ありゃ良い坑夫だなと言ってました。

実際沖縄は、彼は途中からでしたから短くて終わりました。

そのあと、確か短いトンネルで広島に行きましたね。

百数十メートルのトンネルでした。

ここでも橋本と組んで頑張りましたね。

片岡も居ました。

ある時、そこは発破ダイナマイトを使うんですが、何かを測ってて片岡が眼鏡を外して僕に確認してくれと言ってきました。

坑夫は、元請けが出してくれてる元の線から色々な物を測ります。

水糸を張って高さを測ったりって、日常的に有ります。

一日何度も、簡単な測量しますからね。

その時初めて、片岡がそう言えば何かを測るってなると居ないか、自分自身がやったら一応確認を求めるなと気付きました。

勿論、全てそうでは無いんですよ。

片岡一人でも測ったりは出来てましたよ。

それでも、確認を求めるのが多いなと気付きました。

それと、その時の何かを測るのは非常に簡単で、お前見えてないのかって位のレベルでしたから、僕の中で何かが引っ掛かりましたね。

その日だと思います。片岡を隅に連れてって、お前視力に問題無いかとそっと尋ねました。

片岡とは親しくなってましたし、彼は班長である僕を慕ってて兄さん兄さんと呼んでましたから、俺に隠し事するなよとも付け加えたと思います。

片岡は、右目が実はほとんど見えてないと答えました。

左の視力も決して高く無くて、計測とかになるとある程度勘でやってると言いましたね。

それと、見える日と見えにくい日があるとの事です。

健康診断で当然目の検査しますが、それも右目の時は左目を薄く開けてると言いました。

子供の頃からで、それで作業への問題は無いですと答えました。

確かに作業での問題は、ほとんど無いです。

計測だけでしょうね。それもある程度は出来ますからね。

本人も言ってたけど、本当に分からないなって時は、人に確認して貰うとの事ですしね。

発破を使う時にも機械にも乗れるし、かなり上手いです。

オールマイティーな男です。

それに、何より人が見てても見てなくてもコツコツ動いて仕事をします。

こういう坑夫は珍しいなと言う位、仕事に真面目ですからね。

それを聞いて僕は、これは、口の硬い橋本だけに言うよと言いました。

橋本に言うと、あー!それでかと答えて来ました。

橋本も眼鏡を掛けてますが、時々片岡を見てると眼鏡の度数合ってないじゃないかと思ってたらしいです。

それと、宿舎に戻ると寝る前に、必ず濡れたタオルを目に当ててましたね。

それも目の養生の為だったのかと思いました。

僕のように若い頃目が良かった人間には、その辺り分かりませんでしたね。

しかし、橋本もあいつを手放すのは勿体ないよと言って、これは秘密にしようとなりましたね。

橋本も真面目でコツコツやるタイプですが、それ以上に片岡もそういうタイプでしたからね。

その後もなるべく一緒にと、二つ程現場を回りました。

橋本が他の現場に行ってしまい居ない時は、片岡が僕の右腕になりましたね。

橋本も相当器用ですが、片岡も組んで見ると負けずに器用でしたね。

それに、上手く僕を立てながら自分自身は目立たずに、蔭で支えるのが上手かったです。

特に橋本が居ないとなると本領発揮したのか、実に良く動くし器用な坑夫だな思わせました。

その後、僕が今の会社に入ってからも、大きな現場にはなるべく呼びようにしてました。

それでも、腕も立つしあちこちから呼ばれてて、すれ違いって事もありましたが、今回二年ぶりに僕の所に来てくれました。

まあ、変わってないです。

結婚してて子供が二人居たけど、一人が大学生になったと言ってたから大変だなと言うといやいや、後は下の女の子が大学か短大かに行ってくれたら親の役目もある程度終わりますから、と言ってましたね。

昔は、小さい下の女の子の写真を財布に入れてて見せてくれたから、その辺りだけお互い歳を取ったなです。

目の方は、相変わらずのようです。

若い班長を支えるには、持ってこいの人材ですけどね。

目の方は、何とか健康診断も通ってるから誰にも要らない事を言うなよ、と二人の時に言いました。

何処で誰が聞いてて噂を流すかは、分からない世界ですからね。

それと、片岡って男は忠誠心が非常に強くて兄さん兄さんと言って来ますし、僕が命じたら何でもやるって感じです。

一度その忠誠心は、何処に行っても上の人間に有るのかと聞くと僕と橋本さんだけですよと答えて来ましたね。

自分自身の目の事を隠してくれたのと当時は、三十代の二人が現場を仕切ってるなんて無かったから、凄いなと思ったらしいです。

確かに三十代が班長って少ないし、当時の僕はとにかくイケイケでしたよ。

まあ、本当は、運が僕は良かったんですけどね。

彼いわく、橋本さんが居ない時に僕が彼を二番手に上げてくれて、片岡お前が最後は仕上げておけよとか言われるのは、嬉しかったらしいですね。

まだ、若い彼に信頼を置いてる証拠ですが、それが彼にはとても嬉しかったようです。

その気持ちは分かりますよ。

今回も現場に初めて来た時に、僕に深々と礼をしてお世話になりますと言ってました。
 
そこの所長も片岡を知ってて、所長にもえり子ちゃんにもきちんと挨拶してましたよ。

所長は、相変わらず真面目だなあとアイツもベテランの域なんだなあと、感慨深げに言ってましたね。

えり子ちゃんは少し驚いたようで、何であんなに礼儀正しいんですか?と言ってたから、色々居るよと答えました。

礼儀正しいけど怖いよ~と笑いながら言うと、高山さんそれは、もう勘弁して下さいと言います。

もう十数年も昔の話しです。

一度だけ怒ったのを見たことが有りますね。

多分広島だったと思います。

広島の大きな飲み屋街を片岡と二人で歩いてて、人が多くてスーツ姿のサラリーマンと肩が軽く当たったんですよ。

そしたら、相手は数人居て酔っ払ってて、コラ!!舐めんなよ、みたいになりましたね。

当時の僕は、プライベートでは薄いサングラスを夜でも掛けてましたから、生意気に見えたでしょうね。

相手にせずに通りすぎようとしてたら、一人が追って来て肩を掴もうとしたので払いのけて、一人じゃ喧嘩も出来ないのに酔っ払って何人も居たら強気だなあ、と言い返しました。

相手は三人か四人でしたから、当時の僕ならやるならやってやるって気持ちでした。

片岡は喧嘩をしなくても、一人でも揉めたらやってやるって感じです。

三十代ですからね。

今はなるべく避けるのを、当時は面白がってましたよ。

片岡にわざと、こいつ締めて来い!と言いました。

すると片岡は、分かりましたと言うとそのサラリーマンを何かのお店の路地まで引っ張って行くと、いきなり殴り倒しました。

そして何度も蹴ると、仲間のサラリーマンが集まって来るのを待ってたように、何人でも来いや!!と叫びましたね。

片岡も僕もほとんど素面ですよ。

僕は、あ!こいつ本当は喧嘩に慣れてやがるなあ、と思わず笑いましたね。

サラリーマンは、まさかそこまで反撃されると思ってなかったようで、皆ビビってました。

僕は、片岡を引っ張って行くと逃げるぞと言うと、路地から路地を走りましたね。

こういった所で喧嘩になると、警察が来るのが早いですからね。

ある程度逃げたら片岡に、お前喧嘩慣れしてるじゃんかと言うと、いや!あれは高山さんが言うからやったんですよ、と冷静に答えて来ましたね。

僕は、思わず笑いましたよ。

えり子ちゃんと車に乗ってて、何かしらあの人とも有るんですかと聞くので、絶対言うなよと念を押して目の事とその喧嘩の話しはしました。

えり子ちゃんは、目が悪くても火薬の免許も甲を持ってるし、高山さんと同じ位の資格持ってるのは目は関係ないんですかねと聞くので、それとこれは関係ないけど、目の事が有るからなるべく資格や免許を取ってると前に言ってたと教えました。

火薬の免許の甲はまあ分かるんですが、二級土木の免許まで持ってますからね。

ある意味、目の事がバレてもそれだけの資格や免許で何とか乗りきろうってのが分かりますね。

片岡には、今回はどちらの班に付いても若い班長をいかに盛り立ててやるかを考えて働いてくれと言うと、分かりましたとだけ答えました。

彼には多くを言わなくても、分かりましたと言えば期待以上の事をする人間です。

えり子ちゃんにもそれを言うと、何となく分かりますねと言ってましたね。

片岡が目に問題が無ければどうなってたかを考えますが、目に問題が有るからこそ良い坑夫になったのではと最近は思いますね。

目に問題が有るから、素晴らしい坑夫になれたのだろうです。

面白いと言うか、何かしら有るから必死になれるって有ると思います。

僕も身体の問題や、色々な問題を抱えてるから必死になれるって人間なのでね。

僕に出来る事が有るとすれば、目の事を元請けに隠すのとバレても彼を使う事だけでしょうが、今まで元請けにバレた事は無いようなので大丈夫でしょう。

彼は、今後現場で間違いなく期待以上の働きをするだろうと信じてますね。

それに、僕にそっと言って来ましたね。

今でも昔のように感謝の気持ちが有るから、高山さんか橋本さんが言うなら何でもしますよ、とね。

その目付きは本気でしたね。

僕は、笑いながらこっちが感謝してると答えましたが、嬉しかったですね。

今思えば、最初に会った時の目付きのキツイ印象は目が悪いのと、内に秘めるヤンチャさだったのかも知れないなと思います。

後から気付く事って多いですね。


おわり

次回作品 随筆 〜RCサクセション『FEEL SO BAD』の感想と雑感

「ガーターベルうトの女」~映画化のために​

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