高山が作家として更に飛躍することを願い創作活動を支援したい!~エッセイ「ガーターベルトの女」の作品化を目指して【435】
妄想家・夢想家無名居士の夢物語の記録です
無名作家高山のエッセイ「ガーターベルトの女」の映画化芝居化・・・
その他いろいろ作品化できれば
なんて途方もない夢を観ています
📖 高山のエッセイ〜「様々な人達 エスさんとワイさん」
ある作業員の話しです。もう亡くなってるらしいです。
三十代の頃に父の会社が倒産して、新しい会社の作業員になって二つ目の現場が鳥取県の田舎です。
家を出る時にもう家が取られることも知ってましたが、ギリギリまで当時付き合ってた女の子と一緒に居て感傷は後から来ましたよ。
ちなみにその女の子には何度も遠距離恋愛になるからと言って別れようと言ったけど、大丈夫だからでした。
ところがゴールデンウィークで帰る前に、新しい男が出来たで別れました。
それほどショックではなかったけど、当時はケータイが入りにくくて車で少し走って疲れてても、なるべく電話してたのにです。
ある時ライトバンのサンバイザーを下ろすと女の子が勝手に写真を貼ってて、思わずビリビリに破って捨てましたよ。
まあこの鳥取県の現場が非常に印象深くてね。
父の会社が倒産して二つトンネル作業に関わったけど、本格的な大きなトンネルはここが初めてでしたし、帰る家がないと言う状況は初めてだったからでしょうね。
父とおじさんと僕がその会社に入って、おじさんがそこの所長でした。
おじさんは今の僕くらいの当時年齢でした。
四十代後半から五十代の初めですね。
おじさんとその後あちこち行くけど、仕事してて甥っ子として扱われた事は一度もないですね。
周りが見てて何故あんなに高山さんに厳しいの、でした。
僕には言いやすかったのと、ここで今のうちに鍛えてやろうだったのだと思います。
滅多に事務所にも行かなかったけど、鳥取県か静岡県で風俗で性病を貰った時は相談しました。
明日は休んで病院に行け、でした。
全く交流がないことも無くて、時々は僕だから言えるの事をそっと言ってましたけどね。
まあ、鳥取県のトンネルでのある作業員の話しに戻ります。
年齢は四十代後半です。
これは小説サイトでは軽く書きましたがここではリアルに書きますね。
その時の状況は、僕は掘る方を辞めててと言うか、掘るのは一つの班だけになったからもう一つの班は解散したんです。
それで辞めた人も居れば他の現場に回ったり、雑工してた人も居ましたね。
僕はコンクリート打設の班の班長をやれと、食堂で夕御飯食べてたら多少酔った工事長に言われました。
おじさんの下にこの工事長が付いてて、これがダメな奴でしたね。
やれと言われても作業員ならするけどです。
何故なら周りが歳上ばかりだったからです。
年下の僕がやるのはやりにくいからですよ。
それでも僕がコンクリート打設の主任者の免許のようなの持ってたのと、機械に乗れたからやれでした。
もうヘルメットも用意してて、そこの会社は何らかの長になると二本の線をヘルメットに入れるんですよ。
普通は二本の線はトップにしかやらないんですが、珍しい所でした。
そこに名前まで書いてたし、お金も良かったから仕方ないです。
多い時で十人以上は居ましたね。
コンクリート打設とその前のシートを張るのとです。
まあ、この辺りはこのブログにも確か書いてます。
コンクリート班は、四十代から五十代の一番歳上が六十代も居ましたね。
若いのも入れたけど他の部署に回されるんですよね。
体力仕事だから若い人が良いけど、主に東北から人出しで来てました。
うちの会社の直でなくて人夫出しで来てました。
直でないから給料も安いんですね。
派遣社員みたいなもんです。
直で居たのは僕と宮崎のエスさんだけでした。
給料が違って、他の会社から来てるとなるとやはり気を使うんですよね。
僕が二万円以上貰ってるのに、その人達は一万円とか聞くと命令もしにくいです。
僕は自分自身の給料は言わなかったですよ。これは僕らの仕事は、自分自身の給料言うなと言われてます。
他の会社から来てない場合でも、給料に差をつけることも有るんですよね。
出来る人間には一日二千円多いとか有りますからね。
それがバレたら、嫉妬やなんかでややこしいですからね。
エスさんは僕の居た会社からの直属でしたから、僕より少ないけどかなり貰ってました。
だから何か有るとエスさんに相談するけど、まあこの人がボケてるというか緩いんですよ。
機械に乗れたから乗せてたら、実は免許なかったとかね。
免許出せと言われてものらりくらり逃げてると、思ったら最終的になかったとかです。
僕が狭い中でずっと溶接か何かを一人でしてたら、いつの間にか皆帰ってて車だけ残ってたとかね。
車で急いで戻ったらもう皆風呂に入ってるんですよ。
班長は僕ですから僕が帰って良いなら分かるんですけど、僕は何も言ってませんからね。
普通は残ってるだろう、です。
風呂場で聞くとエスさんが帰って良いと言ったです。
僕は、風呂に入って飯も食って部屋で晩酌してたエスさんに言いに行きました。
それとエスさんに、他の連中は給料違うんだから僕とエスさんがしっかりコントロールしないと駄目だろう、です。
それを掘ってる方の作業員が見てて、高山ちゃんと呼びました。
エスさん使いにくいだろうと、エスさんにいくら言っても無駄だぞ、です。
この仕事に向かないよです。
そう言われてもどうしようもないでしょでしたが、確かに向かないタイプでした。
朝飯の時間に食堂に降りたら、どんぶり二杯をゆっくり食べてるんですよ。
ギリギリにマイクロバスに乗り込んで来てました。
どんぶり二杯を食べるなでは無くて、ゆっくり食べるなら他の事を早くしろです。
僕は大抵仕事に行く為のマイクロバスには一番に行って、コーヒー飲みながら乗ってましたよ。
せっかちなと言うか、急ぐ部分や役割によって動く部分を知らなすぎましたね。
エスさんはね。
そうしてたら有る時に、コンクリート打ってたら中の型枠がずれたんですね。
どうしても狭い窓から入らないといけないになりまして、コンクリートポンプを動かしてた若い手伝いに来てた作業員に、一時止めてくれと言いに行きました。
広いし大きいから、俺が笛を吹いたらまた出してくれでした。
この若い雑工をしてたのは、初めてのトンネルを親父さんと来てて非常に良かったですし、僕が機械も色々教えたんです。
だから信用して、狭い窓から僕が入って型枠を直そうとしたらエスさんが入ると言い出したんですよ。
エスさんは僕より小柄でしたから、自分が入った方が良いと言うので入って貰ったんですね。
入って直ぐですね、ドスンと異様な音がしました。
狭いからヘルメット脱いでたんですよ。
上手く下に行かないと数メートル落下しますから気をつけてだったのに、落ちたんですよ。
下はコンクリート来てるし、狭い所から見たら下で横になってました。
声を掛けても動かないしです。
ヤバイなです。
仕方ないから、思いきって他の狭い窓から僕が下まで降りました。
ヘルメットが邪魔でしたが何とか降りて、コンクリートの中を必死にエスさんの所まで行きました。
長靴にコンクリート入るし油も付くしでどろどろですが、とにかくエスさんを助けないとです。
コンクリートの中に倒れてるエスさんをそっと起こすと、軍手に赤い血が沢山付きました。
頭からだなと思ったけど。冷静でしたね。
エスさんに話しかけたら、朦朧と返事が返ってきました。
とにかく皆を呼んでここから出そうと思い、声をあげました。
皆他の事をしてたのと、声がなかなか聞こえないんですよね。
するとコンクリートが流れて来はじめました。
え!?ですよ。
すでに膝くらいまではコンクリートに、はまってしまいました。
笛を吹いてないのに何故コンクリートが来るのかです。
どんどんコンクリートは増えるけど、僕の声は聞こえずです。
仕方ないから笛を吹こうとしたら、コンクリートにまみれてまともに音が出ません。
参ったなです。しばらく、とにかく声を打し続けたら、一人が気付いて驚いて来ましたよ。
コンクリートも止まって皆で少しずつ上げました。
僕はエスさんがコンクリートに浸からないように腕で抱えてましたから、何とか型枠を直して上がった時にはへとへとで、コンクリートでどろどろです。
エスさんは車に乗せて病院です。
僕は、何故コンクリートポンプが勝手に動いたのかで見に行ったら、工場長が呑気にそこに居ました。
若い雑工を呼んで、お前きちんと言ったの、です。
言いましたと言うから、工場長にてめえふざけるな、です。
その場でヘルメットを投げつけました。
そして、一度着替えに戻ると言って戻りました。
エスさんは、確か縫わなくて良くてしばらく休んで出てきました。
エスさんに大変だったんですよと言うと、覚えてないらしくハア、です。
全て、この間の抜けたハアが多くて参りました。
この班はハードで、どんどん辞めて行く人も多かったけど、エスさんは居ましたね。
しかし次の現場に呼ばれる事がないのを知ると、宮崎に戻りました。
その後、宮崎の知り合いから山で木を伐ってて、木の下敷きになってエスさんが亡くなったと聞きました。
エスさんを知る人達は、そりゃあり得るなでしたね。
僕もやってしまったかでした。
焼酎好きでいつもボーッとしてるのも思い出すけど、朝から小柄な体でどんぶり二杯を大きく口を開けて食べる姿を思い出します。
変わった人と言うか、僕らの世界では通用しない人でしたね。
二十年近く経ってもっとハードな事故なんか見てるけど、この人は何故か印象的ですね。
この程度の事故は事故のうちに入らないんですが、何故かこのエスさんは思い出しますよ。
或いは余りにハードな事故は、自分自身の記憶から消したいのかも知れないですね。
この程度の事故は、言い方はおかしいけど消したいのに、話すのには面白いです。
エスさんのその後を考えたら不謹慎ですが、その辺りはご容赦下さい。
様々な人間がトンネル工事にはいるけど、異色だったからかも知れないですね。
書いててエスさんが美味しそうにどんぶり飯を食べるのと、コンクリートと油の匂いを思い出しました。
もう一人、対照的なワイさんを思い出したので書きますね。
鳥取県の後に数ヶ月、短い期間静岡県の小さいトンネルに行きました。
一時的な応援的な感じです。
そこでワイさんと言う五十代前半の人が、エム君と言う二十の男を連れて来ました。
このワイさんも印象的ですね。
トンネル内で作業しててエム君が電線を移動しようとしてたんですが、電線が破れてて危ないから一度ブレーカーを落とせと言ったんです。
しかし、トンネル内は小さいとは言えダンプも通るしで聞こえないんですね。
後ろから行って肩を殴って止めたんですよ。
しかし、相手は北海道の田舎の出身で、何か大きな声で反論するけど興奮してたら更に分からないんですよ。
仕方ないから自分自身で走ってブレーカーを落として、退けという仕草を見せて僕が電線を移動させようとしたんです。
そしたらエム君は若いからかかっと来たようで、僕に殴りかかって来そうになったから頬を思い切り張って外に出ておけ、でした。
電線を移動して破れてる部分を修理して外に出たら、エム君を連れて来てたワイさんが偉そうになんだ、です。
この人も北海道の田舎でした。二人は同郷で、ワイさんがエム君の面倒見てる感じです。
そういうパターンは多いんですよ。田舎から出るけどベテランが若いのを連れて来て面倒見てるってね。
ワイさんはベテランでしたから、言葉も訛りはあったけど分かりました。
僕は違うんだと説明しようとしたら、凄い早いパンチが二発か三発来ましたね。
見えなかったです。
僕の前からの知り合いの九州の連中が気付いて、直ぐに止めに入りました。
しかし、今度は腹の虫が収まらないのは僕ですよ。
ダイナマイトを込める棒が有るんですが、隙をついてそれを持ち出してワイさんを殴りました。
後ろから行ったら一発で倒れなくて前を向かれました。
後から聞くんです、ワイさんは昔ボクシングの日本人ランカーだったらしいです。
どおりで凄い早いパンチなんだですが、その時はこの人何かしてるなです。
こっちも剣道してたから、間合いを上手く取って殴りつけました。
また周りに止められましたけどね。
九州の班長が僕から事情聞いてエム君とワイさんに話して、その日のうちに和解しました。
その日のうちに宿舎で飲み会です。
しかし、飲んだらワイさんは分かるけどエム君は非常に分かりにくいです。
北海道は場所によって非常に分かりやすい所とえ!?ってくらい分かりにくい所がありますね。
ワイさんは仕事も上手くて職歴も長く、実は人格者でした。
しかし、来てしばらくして肺に問題があると分かって、トンネル内の仕事は無理になりました。
いわゆるじん肺ってやつで、長くトンネル仕事してると肺に問題が出るんですよ。
何とか再検査したけど、やはりダメでした。
中に入らず外の雑工をとなったけど・プライドが許さなかったんでしょうね。
残念だけどエムを頼むから、俺は辞めるでした。
二ヶ月も居なかったけど、何度か仕事は見てたから上手いなでした。
僕が駐車場で車を洗ってたか何かをしてたら、大きめのバック一つで出てきてお世話になりましたです。
高山ちゃんは勢い良いなあと笑ってました。
駅まで送りますと言うと、バスが丁度来るから良いよでしたね。
そしてエムはまだ全然ダメだから頼むよ、でした。
バックを持って去っていく姿が、何とも寂しかったですね。
トンネルに向いてる人でしたからね。
ワイさんのようにトンネルに向いてても、どうしようもないことも有りますね。
トンネルに向いてるからこそダメになったのかもですけどね。
エスさんの事を書いて、ふとワイさんを思い出しました。
二人は対照的ですね。
色々な人が居て、一時的でも仲良くなったり上手く行かなかったりってのが僕の業界ですね。
ワイさんの早いパンチと、最後に見たごついけど寂しげな後ろ姿も思い出しましたね。
おわり
📖無名居士のたわ言・・・音楽でひと遊び〜エ・マントランそして今は 越路吹雪
2013/11/11
繰り返し・・・
英語でrɪfréɪn・・・リフレイン(リフレーン)
フランス語でrefrain・・・ルフラン
『愛と哀しみのルフラン』というエッセイを読んだことがある
1982年に発行された岩谷時子さんの本
越路吹雪さんとの交流・・・エピソードには
感動的な話が多い
『愛と哀しみのルフラン』は
「この不世出の歌姫に、親友として、マネージャーとして寄り添った著者が捧げるレクイエム」amazonの説明から
2013年10月25日(満97歳没)
越路吹雪の歌を聴きたいと思った
それも・・・あまり聴いたことのない歌
ジルベール・ベコーが書いた好きな歌があった
彼女の歌で聴くのは・・・もしかしたら初めてかもしれない
エ・マントランそして今は 越路吹雪「LP盤音源」
*上記のYoutube動画はリンク切れ
なので今回は他の動画を探した
他の曲も一緒だが…だからむしら貴重か
[曲リスト]
01-アプレ トワ
02-アンナ
03-エ・マントランそして今は
04-じらさないで
05-そして今は
06-チャンスがほしいの
07-トライ・トゥー・リメンバー TRY TO REMENBER
08-バイア
09-ラ・ノヴィア(神に誓って)
10-挽歌
11-悲しき雨音
12-洒落にしましょう
2013/11/11(月) 午前 3:00
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コメント
mit*4*31*5
No title
こんはんは
越路吹雪さんの歌 今はアイフォンに入れて聴いています
ちょっと低めの歌声が好きです
2013/11/14 URL 編集
ichirof65
No title
越路吹雪さんには
熱心なファンが多かったようで
コンサートがあると聞けば
姉妹でどこまででも出かていました
コンサートが唯一羽を伸ばせる場所だったのでしょうね
2013/11/14 URL 編集
📖 高山の作品から〜「濡れる女子事務員13」
濡れる女子事務員シリーズです。
このあとも、もう少し続きます。
Aちゃんは、頑張ってます。
時には、失敗もするけど、とにかく一生懸命なのとある種の才能が有りますね。
数ヶ月でこうも変わるとはと思ってるし、トンネル関係の資格を既に三つ取らせました。
営業に現場に一日の半分以上は一緒に居ますが、僕から怒られながらも明るくやってますよ。
それでも、色々女性だからと言うので嫌な事にも合ってますよ。
それは、細かくは書きませんが、本人も落ち込む事も有りますが、本格的に僕の右腕になってまだ一ヶ月も経ちません。
この世界に本格的に入って数ヶ月です。
それと、若い女性ですから色々有りますよ。
今回は、Aちゃんと坑夫のHについてです。
Hは、Aちゃんが元々居て、今でも一番良く行く現場の掘削班の片方の班長です。
彼については、サイトのエッセイやブログでも何度か取り上げてます。
彼とは同い年で、本当に長い付き合いで職人ですね。
班長にやるのも今回が初めてです。
三十代初めから、僕が父の会社が潰れてから彼と確か出会ってます。
性格は、僕とは反対で落ち着いてるし、その代わり前に出ないです。
仕事の腕は昔から上手かったですが、離婚して子供居ますが、女性関係等は下手です。
人との付き合いは、下手では無いけど、何処かに不器用さが有りますね。
炊事婦に好かれる僕と、炊事婦にイマイチ受け入れられない彼って感じが、三十代の頃は強かったです。
愛嬌が足らないんですよ。
それと初めて会った頃は、何処かの市役所の職員かって感じでダサい眼鏡を掛けて、角刈りのような頭をしてましたね。
私服も酷かったけど、作業着は更に酷かったです。
例えば、辛子色のニッカボッカにピンクの土方の着るタートルネックのシャツとかね。
何度も笑いながら、お前どういうセンスでその色合わせてるのって有りますね。
僕が坑夫時代は、ブルーのニッカボッカにブルーとかワインレッドのシャツとかでした。
ニッカボッカ履かない時でも、大体ブルーとか濃い色で派手な色はほとんど使わなかったです。
つなぎとかは、白を着てましたけどね。
人間性や技術は、素晴らしいのにそれじゃ女にモテないと、一緒に服を買いに行ったこと有りますね。
早くに結婚して、奥さんに任せきりだったせいも有るんでしょうね。
離婚してますけどね。
離婚については、奥さんの一種の裏切りでHは非常に傷付きましたが、今は子供の事とかは相談してるようです。
今でもダサいけど、炊事婦には多少は受け入れられるようになりましたね。
しかし、彼とは掘削班で何度もコンビを組んでます。
唯一、僕が坑夫で友達だと言える人間かも知れないです。
何度組んでやったかとか、何度同じ現場になったかは覚えて無いけど、パターンとして班長をやりたがらない彼に代わって、僕が班長やって二番手に付いてましたね。
三十代半ば位からあちこち一緒に行って、コンビで反対の班を負かして来ましたね。
僕の坑夫時代のある種の良い噂には、彼が居たからです。
彼とのコンビなら、負けないって有りましたからね。
極端に言えば、技術のHに人を動かす僕って感じでした。
イケイケで無い彼の為にも色々な人との交渉をしたり、或いは時には喧嘩したりしてやって来ました。
高山さんの坑夫時代は、反対の班に負けなかったんでしょうと今でも聞かれるけど、彼が居たから負けなかったんですよ。
Hも僕と組むとやり易かったと言いますね。
三十代の僕は、本当に強気でしたが、カッとなると何処でも乗り込みましたよ。
一番覚えてるのが、反対の班の一人が酷い仕事をした上に、僕に対して喧嘩を売るような伝言を所長に残して帰った時です。
内容は、今では、はっきり覚えて無いけど僕はカッとなって、宿舎に戻ると鉄筋棒の短いの持ってその人の部屋に乗り込もうとしてました。
Hが言うには色々そういうのがあったけど、僕が今までで一番怒ってたらしいです。
それをHが追いかけて来て、とにかく一服しようとなだめました。
そうして、何とか抑えられたらしいです。
Hに言われたら、何とか我慢するって習性が有りましたね。
もう一つは、狭いトンネルで重い支保工を持って行かないと行けなかった現場で、僕が肋骨を怪我してて何とか運ぼうとするんですが、上手く運べないんですね。
支保工とはトンネルを支える枠です。
そこは小さいトンネルなのに重い鉄のを使ってて、肋骨を怪我してるせいで持ち上げても痛くてなかなか運べないって状況でした。
そこに、Hが来て怪我してる間は俺がやるからと何度も運んでくれました。
これは、最近話しててハッキリ思い出したんですよね。
かなり忘れてますからね。
Hと僕は、お互いが助け合ったって感じです。
離婚して直ぐは相当参ってるのを必死で慰めたりしましたし、Hの足らない所は僕が、僕の足らない所はHがって感じでした。
まあ、どちらかと言うと僕のブレーキ役で、Hの方が大人でしたよ。
それに格闘技はしないし、Aちゃんと時には、じゃれててもAちゃんが空手の蹴りを出すふりをすると、辞めてくれと言います。
しかし、仕事での度胸は有るし、怪我人が出ても素早いですよ。
機械にも強いですしね。
最近ちょっとした事から、ダイナマイトを仕掛ける為の掘削マシーンに二人で久しぶりに乗ったけど、お互い口に出さなくても息が合ってましたよ。
思わず終わって、お互い手を出して手のひらをぱちんと当て合いました。
四十代に入って僕が会社の社員になってからは、僕の所に来たり来なかったりでした。
今回は、たまたま空いてて来ましたね。
初めての班長で最初は、戸惑いを見せてましたが、今では随分違いますね。
僕は、何度も班長をといってたのに断って来ましたが、今回はやって良かったようです。
更に上に行こうと言うのが、見えてますね。
かつての彼には、それが無かったです。
一作業員で一生終えても良いって事を、言ってましたからね。
それは、それで良いんですよ。
そういう生き方を否定しませんよ。
今回、班長やって更に上をと思ったのが、Aちゃんの影響強いようです。
Aちゃんを僕が本格的に売り出して、それにAちゃんが見事に応えて指示以上の結果を出してるのを見てて、俺も今からでも遅くないかもと思ったようです。
それは、Hだけで無くて他の人間も思ってるようですね。
こういう良い効果は素晴らしいですね。
しかし、AちゃんとHは、最初はHの女の子苦手って所からなかなか距離が詰まりませんでしたよ。
離婚して子供を育ててますが、昔離婚した奥さんと何度か話したんですが、Hの女性経験は奥さんだけのようです。
それだから、女の子にどう対処して良いのか分からないって出てましたよ。
ところが最近、Aちゃんも主要なメンバーや常務とは電話番号交換したようで、現場でも皆と色々話してます。
Hとも随分打ち解けました。
Aちゃんが、上手くHを引っ張って話しを最初は引き出してる感じでしたが、今では普通に仕事の事を話したり、冗談を言ったりしてますね。
時に、前に書いたようにじゃれててるのを見ると、ホウ、Hも女の子にやっと慣れたなと思いますね。
僕は、HとAちゃんが仲良くなるのは、営業に彼女に運転して貰って行きながら主要なメンバーとは連絡先を交換しろと言ってたから、良いことだと思ってます。
Aちゃんは、社員ですから主要な坑夫とどんどん仲良くすべきだと思ってますね。
ところが、こないだHが夜勤の時にAちゃんと二人で動いてて、彼女がちょっと電話なので良いかと言うのでコンビニで車を停めて、僕は車の中で待ってました。
私用の電話だろうと思ったので、特に突っ込まずにAちゃんが急いで戻ってきたので車を出しました。
Aちゃんが、今の電話はHさんですよと言ったから、あーそうなんだ。何かしらあったのかと聞きました。
Aちゃんは、しばらく考えてましたが、実は迷惑を受けてるとかで無くて、Hさんにたまに相談されてますと言い出しました。
僕は、何の相談だと聞いたけど、迷惑を受けて無いならプライベートですから無理して言わなくても良いよと付け加えました。
たまに昼間に掛かる位なら問題ないですからね。
するとAちゃんが、高山さんの友達でもあるHさんの事なのに気にならないんですか?と言うので、いちいちお互い大人なんだから気にならないと答えました。
しかし、Aちゃんの仕事に影響出るとかHの仕事に影響出るとかなら聞くよ、と答えましたね。
僕の立ち位置は、仕事に影響しなければ良いなんですが、Aちゃんに言わせたら薄情だと言います。
そんなに言うなら俺は、言わないからHとどんな話しをしてるんだと聞きました。
Aちゃんは、そういう風に言われると言いにくいですがと前置きして、言わないで下さいねと念を押して教えてくれました。
Hが、何を相談してたかを聞いて思わず笑いましたが、なるほどと思いました。
Hが何を相談してるかは、女性関係です。
他の現場に、四十代前半の離婚した女性が炊事婦として来てます。
この人は、今回が初めてですが、その叔母さんが同じ現場に居て誘われて来てます。
何度も会ってるけど、清楚な感じのきちんとした人で離婚してるけど、子供居ないらしくて若々しいです。
四十二とか三ですが、三十代に見えますよ。
最初は、僕に対して怖いってあったようですが、今では会うと愛想がとても良いし、僕が宿舎に行くとなんだかんだ出してくれます。
その他の現場の炊事婦さんが、時々こっちの宿舎に食材を持ってきたり、或いはこっちの宿舎にAちゃんのお父さんが差し入れしてくれた魚を取りに来たりします。
わりと近くに住んでるのと、車を乗るからそういう事は有りますね。
特にこのところAちゃんのお父さんが色々差し入れくれるから、なるべく他の現場にもお裾分けしてるようで繁々と来てるようです。
そこで、夜勤だったHが会ったらしくて、相手がたまたま話しかけて来てそこそこ盛り上がったようです。
お互い離婚してるし、年齢も良い感じですからね。
最初は、その女性の叔母さんは、僕とは何度も仕事してるから僕にその女性を軽く勧めてましたが、僕が全く興味を示さないから諦めましたね。
それに、Aちゃんに聞いてみるとその女性は、僕のようなの男としては苦手らしいです。
ずかずか入って来て炊事婦さんとか坑夫と笑い話しするのが、遠慮のない人に見えるらしいですね。
それを聞いて笑いましたけどね。
だって立場的に、そういう立場ですからね。
Hにとっては、その女性が僕のようなのが苦手ってのはチャンスですよ。
Hとは、仕事ではとても合うし、宿舎生活してても気が合います。
お互い年齢が一緒なのと、干渉しあわない所は、きちんとしませんからね。
しかし、女性の趣味とかは、まるで違いますし女性に対するのもまるで違いますからね。
Aちゃんが言うには、Hは一度会ってその女性に少し惚れたようです。
そして、何度か偶然会ううちに惚れたようです。
そこで、Aちゃんにどうやって口説こうかの相談です。
昔なら僕にしたでしょうが、僕が忙しいのと馬鹿にされると思ってるようですね。
確かに僕に言ったら多少馬鹿にするかもですが、Hが本気なら何とかしてやろうと思うんですけどね。
Hは、離婚後直ぐはあちこち口説こうと頑張ったけど、駄目でこの十年以上は女性関係の話って全く無かったですから、Hが惚れるとはって驚きも有りましたよ。
Aちゃんに相談してるのは、言いやすいだけで無くてやはり同じ女性だからでしょう。
Aちゃんが言うには、いずれ高山さんにも相談したいと本人は言ってるのと、私に相談するのは、もしかしたら高山さんに漏れても良いと思ってるからかもとの事です。
Aちゃんでワンクッション置いて僕に伝わる方が良いと考えてるのでは、とAちゃんは思ってるようです。
なるほどなと思いましたね。
Aちゃんは、信用出来るけど大抵の事は僕に話すって分かってますし、ワンクッション置いた方が話しやすいってのは分かりますね。
Hの場合は、若い頃から惚れたら遊びではないですから、その辺り慎重なのかもですね。
Aちゃんにそう言うと、確かにHさんは高山さんと比べて女性に対して真面目ですよと言うから俺も今は、真面目だよと笑いました。
しかし、Hが惚れててもまだケータイの番号交換さえしてないようです。
Hの事だからそうだろうなと思いましたね。
奥手ですからね。
Aちゃんに、アイツが恋愛してセックスしても入れ方忘れてないかそれが、一番心配だなと笑うと下品ですねと怒られたけど、Hは、そういうレベルなんですよ。
Aちゃんは、相談には乗ってるけど、私ではなかなか良い知恵が浮かばないし、Hさんなら真面目だし二人はお似合いだから何とかなりませんか、と僕に言い出しました。
僕は、そりゃ何とかしてやらないとなと言って、電話番号なら作業員名簿に載ってるけどそれは、使えないしどうするかなと思って、あー!その女性の叔母さんに俺が相談してくっけるように動いてよと言うよ、と答えました。
その女性の叔母さんは五十代の後半で、長い付き合いですから話しやすいです。
Hの事も良く知ってますし、これで行こうと言うと早速叔母さんのケータイに電話してAちゃんが、関わってるのだけふせて事の顛末を正直に話しました。
女性の叔母さんは笑いながらも、H君なら真面目だから何とかしてやりたいねと言いましたね。
そこで、思ったのが四月になったらうちの連中で焼き肉大会をするけど、そこに皆をなるべく呼ぶけど、その女性が仕事でも何とか出席させられないかなと言いました。
全部の現場を呼ぶのは無理なのですが、何とかその女性がその場に来てくれたら、Aちゃんと俺でくっけるように頑張るからと伝えました。
叔母さんは、それは良いね。
高山君だけだとくっつく物も壊しそうだけど、Aちゃんが協力してくれるなら何とかなるかもねとの事でした。
その女性は今は、誰も男は居ないし性格は良いから焼き肉大会に行くように言うよとの事でしたね。
Aちゃんは、僕の素早い対応に流石権力者でかつての女たらしと笑ってましたが、それが良いですねと言いました。
それと、焦らなくてゆっくり少しずつやって行きましょうとも言いました。
Hさんは、女性に対して真面目だし、せっかくですからねとの事です。
僕は、Aちゃんにいちいち俺と比べたような言い方するけど、俺も今は真面目だよと言い返しました。
Aちゃんは、Hさんは私に相談しながらもそういう事ではいつか高山さんに動いて欲しかったと思いますよ、と言うと笑いました。
結局二人は、未だにコンビなんですよとそこには、なかなか他人が入れないものが有るんですよとも言いましたね。
確かに今は、立場は違うけど、非常に苦しい現場でもHとならやれるって有りましたからね。
今の僕が有るのも、Hとの出会いは大きかったです。
今の反対の班長のCや、耳の悪いYやキックボクシングのEなどは、皆かつては、僕とHの下に付いてましたし、所長になってる人達の多くは、かつて僕とHと反対の班で戦った人ですからね。
僕一人では、とてもそこまで行けなかったけど、技術のあるHが居たから誰が来ても負けないって有りましたからね。
お互いが、お互いの欠点を補って長所を伸ばし合うようなコンビって、なかなか生まれないです。
当時、僕はHに二人なら全国でも負けないと言ってたらしいですが、息があって三十代であれだけやれたコンビは無かったと思いますよ。
全国でも負けないは、思い上がりですけどね。
Aちゃんが、これからは私とコンビですから、Hさんと高山さんのコンビ以上の何かを残しましょうねと言ったので、そうだなあと答えました。
軽く答えながらも違う形で二人のコンビは素晴らしいと言われるようにならないといけないと思ってますね。
Hに、現場で二人でタバコを吸いながら四月の焼き肉大会にその女性を呼ぶことを伝えると、相当狼狽えたような素振りを見せたから、Aちゃんにも相談しろよと言って去ろうとしました。
そしたらHが、仕事もプライベートも積極的になれたのは、あの子のお陰かもと言いました。
そして、お前があの子を社員に選んだのが今は良く分かるし、あの子は何かしら持ってるなとしみじみ言いましたね。
僕が、考えてる以上にHの行動にAちゃんの影響あるようです。
今回の女性の件も、Aちゃんの影響で四十代後半で何とか積極的になったのではと思いますね。
焼き肉大会でどうなるかは分からないけど、Aちゃんと僕とで協力すれば悪い方に行かないのではと思ってます。
Hとも勿論今でも友情は有りますが、Aちゃんとは、新しいコンビですからね。
奥手で恋愛下手なHが惚れたなら、何とかならないものかと思ってますよ。
おわり
📖「ガーターベルトの女」の映画化のためにエッセイをお読み下さい・・・「新・ガーターベルトの女7 殴られる
これも、最近Mと話してて、そういえばそういう事があったなあと思い出した話しです。
Mと再会して色々話すと、Mの方にも勘違いが有るし僕の方にも勘違いが有りますね。
もう二十年程会ってなかったですし、当時は恋人でしたから忘れてしまうとか、勘違いしてしまうとか有るんですね。
これもその一つで、九十年代半ばの話しです。
Mとヤクザになった、今は亡き親友のAと街まで一時間半程掛けて遊びに行って、買い物をしたと思います。
Mの買い物に、僕ら二人が付き合ったって感じでしたね。
当時は、Mと二人で会うのも勿論多かったですが、三人で会うと化学反応が起きるのか、また違う楽しさが有りましたね。
Mが、服か何かを買って僕らはそれを見てて、そのあとでラーメンを食べて帰りましたね。
当時は、Aがラーメン好きで何処に行っても、ラーメンを食べたがったように思います。
今では、歳を取って外でラーメンをとか思わないですが、当時は胃も元気ですからね。
酒を飲んだ後に、ラーメンとかは定番でしたね。
今は、僕は酒もほとんど辞めてますね。
酔うと激しく酔いたいんですが、それをやると様々な昔を思い出して苦しくなるから、業者とかと仕方なく飲む時も極力ほとんど飲みませんね。
金銭的な面も有りますが、飲むことが楽しく無くなったんですね。
元々、酒に強いタイプでは無かったですし、酒を飲むきっかけは、スナック等で女の子を口説くのがきっかけでしたからね。
その時もラーメンを食べて、Aの外車で帰りましたね。
車の中では、色々な話しになって楽しかったですよ。
当時、海外に行った事があったのは僕だけでした。
仕事で行ってただけで、観光では無いんですけどね。
それで、MもAも今度は三人でハワイとかに行こうよ、とかで盛り上がりましたね。
僕は、三人かよと、それならMと行くよと笑ってましたね。
Aは、この三人の関係を非常に大事にしてたと思いますね。
自分自身に彼女は居ましたが、それはコロコロ変わりましたね。
何人か会いましたが、綺麗な女の子ばかりでしたね。
Mも綺麗でしたが、それに負けないような綺麗な女の子も居ましたが、感じは良く無かったです。
僕は、普段着はジーンズにTシャツでしたが、Aは仕事柄プライベート以外はスーツが多くて、その辺りもAの女の子から見たら違う人種と見てたようです。
Aは、女の子をたまたま紹介する場合、俺の十代からの親友と紹介しましたから、女の子が僕に少しでも嫌な態度を取ると頭を思い切り平手で叩いて、挨拶しねえか!と怒りましたよ。
俺の親友と言うのは今思えば恥ずかしいですが、実際に唯一の親友だったと思いますよ。
Mに対しては、非常に優しかったですが、自分自身の女に対しては、厳しかったですね。
平気で、後ろから思い切り蹴ってるのとか見たことがあって、少しは優しくしろよと言うと、馬鹿に優しくすると調子に乗るからとか言ってましたね。
女の子を何処かに叩きつけて、鼻を折ったことも有りましたからね。
そういうAも、三人の時に僕らに怒ったりってのは、全く無かったです。
それほど、三人での関係を大事にしてて、それが心地良かったのだと思います。
しかし、その日の帰りに、一車線の道でベンツとすれ違いました。
すると、そのベンツは、Aの当時確かBMWに向かって大きな音でホーンを鳴らして来ました。
そして、止まれと窓を開けて言ってました。
Aは、うんざりした顔になって車を路肩に停めると僕とMに対して何があっても怒るなよと真剣に言って来ました。
うちの兄貴分だから、車からも出てくるなと付け加えました。
Aは、車を出ると相手が車を停めてる所まで行きました。
見てると、ベンツから二人出て来ました。
二人とも中肉中背ですが、双子のように夏だと言うのにネックの付いた白い長袖を着て腹が出てました。
歳は、二人とも四十代のようでしたね。
いきなり、一人がAを思い切り殴り怒声をあげてました。
僕もMも驚きながらも、組関係の事だから出ていく訳には行かなかったです。
Aに釘を刺されてましたし、静観するしか無かったですね。
更に見てると腹を蹴られたりしてましたが、Aはひたすら頭を下げてましたよ。
殴る蹴るが、かなりの時間続きました。
Mが、最初は見ないようにしてたのに段々と見入るようになって、ヤバイよと言うと外に出ました。
僕は、止めましたがMは聞かずに出るとAの方に向かって、余り酷いことしてると警察を呼ぶよと叫びました。
Aが、置いて行った携帯を持って言いました。
当時は、Mは携帯を持ってなくて僕もポケットベルで、Aだけが持ってましたからね。
Aは、それを見ると戻れと目で言いましたが、Mは止まらないです。
携帯を持って、電話をするふりをしました。
僕も仕方なく出ると、Mを無理矢理車の中に入れました。
Mは抵抗しましたが、僕の腕力で何とか押し込みました。
しかし、相手には聞こえてて、Aの兄貴分二人が車まで走って来ました。
Aも慌てて、それに付いて来ました。
僕は、Mが女の子ですから車の鍵を閉めて、相手の出方を見るしかないなあと思いましたね。
Aの兄貴分二人は、最初は車を叩いて出てこいと叫んでましたが、車を蹴り始めました。
Aは、二人は関係ないから勘弁して欲しいとひたすら謝ってました。
そういうAを見るのは始めてで、参ったなと思いましたね。
しかし、相手は許そうとせずに、車に向かって石を投げつて来ました。
僕は、フロントガラスに向かって石を投げつけようとしていたので、慌てて出ました。
Mには、絶対に出てくるなよと念を押しました。
僕が出て来るとAの兄貴分は、おー!お友達だな、と嬉しそうな顔をしました。
そして、僕の腹を蹴りました。
僕は、一瞬お腹に力を入れてた物のぶっ飛びました。
喧嘩に関しては、彼らはプロですからね。
一人が、中に女が居ただろうと僕に言うので、居るけど女は関係ないでしょうと言い返しました。
すると、また腹を蹴り上げられました。
しかし、二人の内で近くで見ると年長のような男が、お前○○建設の息子じゃないかと聞いて来ました。
父の会社ですね。
僕は、そうだけどと答えると年長の方が、もう一人に何か耳打ちすると、それならこのくらいで勘弁してやるよと言われました。
会社に感謝しろと言うと、車に戻り去って行きました。
僕もAも唖然としながら、それを見てました。
父は、ヤクザとの関係は無かったですが、警察との関係は多少有りましたが、それよりおじさんがヤクザとの軽い関係が有りましたね。
その時は、分からなかったですが、車に乗って三人で帰ってると、おじさんとの関係が有るから辞めたのか思いました。
Aは血まみれながらも、元気でいつかあいつらを抜いてやる、と言いました。
血まみれで言う顔は、凄みと決心のような物が見えました。
Mが、私が要らない事をしたからと反省した事を言ってくると、Aは笑いながら気にしない気にしないと笑いました。
そして、僕にお前の所の会社は、かたぎなのに何か有るのかと聞いて来たので、うーんおじさんが多少関係が有るのかもと答えました。
その後はコンビニで、一時停まって傷の手入れとかしましたが、Aは落ち込んでるMに対して明るく、気にしない気にしないと繰り返してました。
Mは、多少は元気が出ましたが、やはり沈んでましたね。
Mを家の近くで降ろすと、Mが今日はごめんねと言うと、飲みに来てくれたらサービスするからと言って去って行きました。
Aは、行くから気持ちを変えようと言って送ると、Mは一度振り返って頭を下げました。
何時ものMでは無かったですね。
相当反省したんでしょうね。
僕は、お前も大変だなと言うと、そりゃ大変だしMちゃんが居たから特に気を使ったよと笑いました。
僕は、帰るとおじさんの携帯に電話をしました。
今日あった事を話すとおじさんは、一瞬声が荒くなって無事なら良いとだけ言いました。
僕は、おじさんの反応からおじさんが、多少の繋がりが有るんだなと思いましたね。
その後十年程経って、Aと少しだけ会う事がありました。
Aの居た組はほとんど解散のようになって、同じ系列の組に皆が移ったとは聞いてましたが、その辺りは良く分からなかったです。
その辺りの事をAは、ほとんど話しませんでしたからね。
Aと喫茶店でコーヒーを飲みながら、一時間程雑談をしましたね。
Aは、三十代半ばで出世したようで、仕事の途中でしたからスーツでした。
Mの事も懐かしそうに話してました。
お前とMちゃんは、結婚するかと思ってたけどなあ等と言いましたね。
僕は、Mは結婚向きかなと笑いましたが、何とも言えない気持ちになりましたね。
外に出ると車が直ぐに来て、Aはそれに乗り込みました。
良く見ると運転してるのが、あの時僕らを襲った男の兄貴分の方でした。
男は、Aに対しても丁寧でしたが、僕にも車越しに頭を下げて来ましたね。
Aは、あの時に言ったように彼らを抜いたんでしょうね。
その辺りの細かい事は分かりませんが、あの時の男が立場が逆転してたのは間違いないですね。
Aは、車の窓を開けると怪我だけは気をつけろよ、と言うと去って行きましたね。
その後のAには色々有り、今やこの世に居ませんが、あの頃の三人のバランスと言うのは独特で心地好い物でしたね。
あの時から二十年以上経って、Mと再会して話すとMもそれを言いますね。
若かったからだけでは無い何かしらの空気が、三人になるとあったなと今では思いますね。
Mは、あの時の話しを楽しそうに話しながらも、何処かしら苦しそうで寂しそうなのは、お互い歳を取ってもAだけが居なくなったからでしょう。
おわり
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