はじめに

去年の5月のこと。落語家・春風亭一之輔と4人の弟子たちは、師匠宅で1つのテーブルを囲んで、コーヒーを飲みながら歓談していました。一之輔一門では、これが週に一度の恒例行事なのです。
当時は、一番弟子の㐂いちが二ツ目に昇進し、独り立ちしたばかり。二番弟子の与いちは前座で、毎日寄席の楽屋で働く身。三番弟子のいっ休と四番弟子の貫いちは見習いで、交互に師匠の鞄持ちを務めていました。
さて、その日の歓談の途中、師匠が貫いちに
「お前、何も用事がない日は何してんだ?」
と尋ねました。
「いやぁ……特に何も」
「特に何も? そんなんじゃダメだな。よし、これから毎週お前たちに課題を出そう」
その課題とは、毎週師匠がテーマを決めて、それに沿った1000字以上の文章(エッセイでも創作でも何でも良い)を書くというものでした。
「どうせお前たち前座や見習いは、ヒマな時間ならたっぷりあるだろ。これくらいの課題はできるよな?」
「もちろんです!」
与いち・いっ休・貫いちの3人は声を揃えて答えます。師匠の言うことは絶対なのです。
そんな3人を横目に見て(あーあ、お気の毒に)という表情を浮かべる㐂いち。そんな㐂いちに向かって師匠が一言、「㐂いち、お前もだぞ」。㐂いちの「え゛ーーっ」と叫びが響きますが、拒否権はありません。師匠の言うことは絶対なのです。
そうして始まった週一の課題は、1年経った今も続いています。
このnoteでは、過去の課題で書いた中から選んだ作品を1人5本ずつ、計20本を、5週に分けて掲載していく予定です。
過度な期待はしないで読んでください。

2020.6.7 弟子一同

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