一番大切な人は自分
自分を愛すること、自分を大切に扱うことは、私にとって、とても難しいことだった。
家庭でも義務教育でも、そんなこと教えてもらえなかった。周りに迷惑をかけるなとか他人に優しくしろとか社会の役に立てとかは繰り返し言われたけど、「自分を愛しなさい」とは教えてもらえなかった。
性自認と性的指向の揺らぎ、周囲との価値観や感性の違いから、思春期〜青春期の私は自己受容が困難だった。自己否定と自己嫌悪と肥大した自尊心とを抱えた、自意識おばけになっていた。
精神科に通いながら社会生活を営み、数年に一度は症状が悪化し、「どうも自分を大切に出来ないと同じことの繰り返しになるようだぞ」と、私が明確に気づけたのは20代の終わりだった。
時を経て、以前よりはだいぶ自分を大切にできるようになった、が、「相手の役に立つことで満たされようとする」嗜癖を持つ自分が、自分をないがしろにしないようにすることはなかなか難しく、今も試行錯誤の途中だ。途中だから、「一番大切な人は自分」と言っておきたいし、自分に言い聞かせたい。