美容室の話と、推しが卒業しても箱推しするかの話。


 んあー、辛い。とても辛い。

 社会人になってから十年以上ずっと通っている美容室がありまして。本日、お店に予約をしようと電話をかけました。これあまり良くないのですが店内環境によっては「あ、なら今から向かいますね今日髪切ります」が可能なのも大きな魅力。

「Yさん、今日いらっしゃいますか?」

 電話が繋がり挨拶をしてから尋ねた名、Yさんという男性が長らく僕の担当でした。こちらから最初に彼を選ぶでもなく、お店の何らかの判断があったでもなく、確か初回来訪時に「単にYさんが空いてた」程度の理由だったと記憶しています。きっかけこそ些細なものとはいえ、通いはじめてから僕も転職をしたり恋人ができたり別れたりと、雑談の延長でそこそこ踏み込んだ話も喋ったり、時に僕も聞いたりしていました。あからさまに陽の者であるYさんは、それでもグイグイくることも距離感がバグっていることもなく、適切な空気でとても接しやすかったと思っています。

『Yは三月いっぱいで退社しておりまして』

 うわー、マジか。

 マジか。

 思考がフリーズして、果たして行くか否かという部分だけで体感数分悩んでしまったので電話をとってくれたスタッフさんにはご迷惑おかけしました。
 結局、行くか行かないか、行くのならどのタイミングで行くか、それら全てを保留にして一言だけ謝り電話を切ります。

 なんだろう、失恋にも似た喪失感というか。確か、何度かSNSのお話になったりもしたのですが当時は「スタッフと客の立場が良いな」と距離を変えず維持してたんですよね。連絡とったりしなくても、お店に来れば会えるじゃろという慢心もありました。

 名刺もどこかいっちゃったなぁ、転職して別なお店で働いていたりするのかな、などと少し考えつつ調べたり接触を図るというのもストーカーみたいでキショい気がして却下。諸行無常や一期一会という言葉を、しみじみと考えました。

 通い続けた美容室にまた行くか、良い機会として別なお店を開拓するか、答えはまだ出ません。

 そんな中ふと、贔屓の店舗と推し活は似ているかもしれないと思いました。

 あまり考えたくはありませんし寂しいですが、例えばマリン船長がホロライブを卒業したりVTuberの活動をやめる場合。その時も僕はカバー株式会社ホロライブを箱推しとして応援し続けているのか、少し不安です。考えれば考えるほど、僕は箱推しというより単推し気質なのかもしれない。

 美容室と推し活、似てるかもしれません。

 僕の中では、彼と過ごした時間もマリン船長を応援している時間も間違いなく「人生の中で良い時期だったな」と思える。
 関わることがなくなったとしても、Yさんがどこかで元気に生きているのなら幸せだなと感じますし、多分マリン船長が卒業したとしても似た気持ちになると思います。
 そして、何も推していない時という状態が生まれても大丈夫。必ずしも、常に何かを推したり髪をどこで切るか慌てて決める必要もない。

 初夏の別れを通して、人生や推し活についても再考するなどしました。
 Yさん、十余年お世話になりました!
 

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