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違う、そうじゃない

「横顔と虹彩」こばなし。竜起となっちゃん。

「ねーなっちゃん今年の誕生日どうする? せっかく三連休だし俺はどっか遠出したいなー。泊まりでスノボとかどう? スキーでもスケートでもいいんだけど。ほら、俺の時は海行ったりしたから、冬っぽいことしようよ」
「俺、それ全部未経験やねんけど」
「全然教えるよ、任せといて!」
「まじで初心者やで? いきなりえぐいコース連れてかれんのとかいややで?」
「そんなことするわけないじゃん」
「ほんまかな……まず、スノボ履く時って座り込まなあかんやん? そっから立ち上がる自信がないレベルやねんけど」
「あ、それはね、フン!って立って、そのまま流れでサーッと滑り出すだけだから」
「フン、で、サー……?」
「そう」
「……ほな、スキーは?」
「グッとしてシャー、かな」
「…………スケートは?」
「ジャッとしてスー」
「むりむりむりむり! 全部却下! 言語が難解すぎる!」
「何で? やってみたらわかるって」
「そういうことを素で言える時点で初心者指導には向いてへんねん。最近忙しかったし、こたつでのんびりとかがええな。こたつないけど」
「えー、五十年早いよ」
「自分は五十年後もスノボやってそうやけどな……あ、ごめん、LINE入った。恵からや」
「誕プレに俺がブロックしとくよ」
「何でやねん……え?」
「どしたの」
「『今、俺の名前呼びませんでした?』って……は?」
「あー、ひょっとして『こたつ』の『こた』部分に反応したとか?」
「こっわ!!!!」
「おもしれ~。こじらせすぎて超能力目覚めてるじゃん」
「笑いごとちゃうわ! え、まじで怖いまじで怖い。決めた、連休は大掃除する。盗聴器か何か仕掛けられてへんか調べる」
「やだよつまんないよー! 大丈夫、コタが太平洋を越えて受信してるだけだって」
「やからそれが恐怖やねんて!!」
どうかどうか、家のどこかから、怪しい電源タップとか見つかりますように。神さま、誕プレはそれでひとつ。

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